黒柴スポーツ新聞

ニュース編集者が野球を中心に、心に残るシーンやプレーヤーから生きるヒントを探ります。

トレードは有効な人材活用~吉川、下水流、松井雅人、モヤらは新天地で輝けるか

プロ野球で、立て続けにトレードが実行された。前半戦が終了間近であり、各チームが現状を何とか手当てしたいという思惑だろう。だとしても当該選手にはチャンスだ。最も不幸なのは組織において、忘れられた存在になることなのだから。

プロ野球トレード光と陰 (新潮文庫)

プロ野球トレード光と陰 (新潮文庫)

 

 

 

よかったな、と思うのが早速移籍先で試合に出ている点。日本ハムでは宇佐美、吉川光夫(共に巨人から)、オリックスではモヤと松井雅人(共に中日から)、楽天では下水流(広島から)が確認できた。環境も変わるし、すぐさま結果が出るとは限らないが、いかに新チームが期待しているかが分かる。選手も意気に感じているだろう。

 

契約して年俸をもらっていればプロ野球選手には違いないが、やはり1軍で試合に出てこそ正真正銘のプロ野球選手。それはかなり狭き門だ。記事に取り上げられる選手に限ればほんの一握り。だからこそ一般人には手が届かないくらいの年俸がもらえるのだが。FA移籍があるからか、昨今のトレードは出場機会を与えつつチームの弱点を補強したい考えで選手がピックアップされている。

プロ野球カラー名鑑2019  【ポケット版/文庫サイズ】 (B.B.MOOK1431)

プロ野球カラー名鑑2019 【ポケット版/文庫サイズ】 (B.B.MOOK1431)

 

 

 

今回のトレードはなかなか興味深い。まず下水流。潜在能力の高さからずっと期待されてきたのだろうが、レギュラーの壁を崩せなかった印象。だとしたら楽天でチャンスをもらえたらさらに花開く可能性はある。もちろん楽天のレギュラー陣だって黙ってポジションを渡しはしない。新チームで試合に出られなかったら、それが下水流の球運ということだ。

 

吉川光夫はもともと日本ハムにいたから復帰だ。先発ピッチャーとしてパ・リーグMVPになったこともあるが、巨人では先発以外に中継ぎも務めた。だがいまいちパリッとしなかった。日本ハムに復帰してすぐ、吉川は先発に起用された。「やり方によっては吉川らしさが出る可能性がある。先発? 1イニングを投げるタイプではないように見えるよね。それが先発なのかどうかは別だけど」(スポーツ報知)と栗山監督。このまま巨人にいたら萎れてしまいかねない、と目をつけられたのか。日本ハムの投手陣は若い印象だから、吉川ぐらいの年齢(31歳)が入るのはちょうどいい。栗山監督は優しさも厳しさもあわせ持つタイプだから、どんなふうに吉川が再生するか見ものだ。

 

オリックス入りしたモヤについては、同じく中日で2軍暮らしだったブライアントを思い起こした野球ファンもいたのでは。特に長距離砲は試合は出してあげないと結果が出ない。中日はビシエドらが1軍に定着しているから外国人枠の関係でモヤにチャンスを与えられないらしい。だったら、ということでモヤを出すがオリックスから松葉を獲得する。これは非常に合理的な考え方だ。

MIZUNO(ミズノ) 野球 中日ドラゴンズ プリントフェイスタオル 44 モヤ 12JRXD01 F

MIZUNO(ミズノ) 野球 中日ドラゴンズ プリントフェイスタオル 44 モヤ 12JRXD01 F

 

 

 

オリックスは投手陣が育ってきている一方、アキレス腱を傷め長期離脱を余儀なくされたキャッチャー伏見の穴は痛い。そこで松葉を中日に出す代わりに松井雅人で埋めようと考えた。松井は早速試合に出してもらっている。パ・リーグは周東、西川、金子、荻野ら俊足がひしめくから盗塁対策は必要だが、キャッチャーはまずはリードをしっかりして投手陣を生かさないといけない。オリックスはピッチャーが若いだけに、キャッチャーがしっかりしたらもっと強くなるはずだ。 

 

キャッチャーは一人優秀な人がいるとどうしても第2、第3のキャッチャーは試合に出られない。だがけがもあるし、複数確保しておかないといけない。特殊なポジションであるだけに、すぐには育てられないから非常に貴重な人材だ。今回トレードが急がれた背景には人材の有効活用を念頭にした「現役選手ドラフト」を各球団が封じる思惑も影響しているのでは、との分析がzakzak記事【江尻良文の快説・怪説】前代未聞!「電撃トレード」が頻発する裏事情 選手会の要求に12球団側が“対抗策”か、に書かれていた。キャッチャーの有効活用という意味でも、枠の関係で「飼い殺し」(本当に使いたくない言葉だ)になるよりサッカーのレンタル移籍みたいにまずはチームの補完&出場機会の提供の両立が目指せないものか。組織の中で人材が埋没することほど不幸なことはないのだから。


福岡ソフトバンクホークスランキング