「おまえが打たなきゃ……」は乱暴なのか~中日応援歌「サウスポー」自粛される
自主規制ここに極まれり。中日ドラゴンズの応援で使われる歌「サウスポー」が自粛だという。「おまえが打たなきゃ誰が打つ」の「おまえ」が不適切という考え方があるといい、与田剛監督も疑問視していたとか。中日スポーツ記事【「お前が打たなきゃ誰が打つ」は好ましくない表現 中日の応援歌「サウスポー」使用自粛 与田監督も疑問視】で読んだ。
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私だって乱暴な言葉遣いは大嫌い。だけどこれこそ疑問視したくなる。確かにスタジアムには少年少女も来るしさわやかな応援風景でありたい。だが野球ファンが連呼する「おまえ」はただの呼び捨てではない。そこには愛情がにじみ出ている。上から目線でも何でもない。
おまえが打たなきゃ誰が打つ。頼んだぞ!そんな素直な気持ちの表れであり、私はドラゴンズファンではなくホークスファンだが別に嫌悪感はなかった。むしろ、狙い撃ちとかサウスポーはぶれずに昔からノリノリで使われる素晴らしい応援歌だとすら思っていたのだが。
「おまえ」が出てくる応援歌でまず思い出したのがクロマティ。「おまえが打たなきゃ、明日は雨、クロマティ」。詩的だ。決して巨人ファンが高圧的にクロマティを責めているふうには聞こえない。おまえが打たなきゃ始まらんぞ!そんな叱咤激励である。
愛情があれば体罰じゃないというのは無理があるから、愛情があっても「おまえ」なんて言うのは乱暴だ、と解釈されてしまうのか。言葉の一面だけ見て長年試合を盛り上げてきた応援歌「サウスポー」は葬り去られてしまうのか。
そもそも「サウスポー」は野球にちなんだ歌だ。
背番号1のすごい奴が相手
フラミンゴみたい ひょいと一本足で
そう、世界のホームラン王、王貞治をほうふつさせる人が登場する。
それに勝負を挑むのがピンクのサウスポーなのだが、これは希な左のサイドスローで名を馳せた永射保とも言われている。
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作詞は阿久悠。作曲は都倉俊一。歌うのはピンクレディー。リアルタイムでは知らないが、そりゃ流行ったことだろう。野球にちなむ歌詞だし、応援歌に使うのはなかなかよいアイデアだと思う。中日の応援団はこれをそのまま使うのではなく、アレンジしたメロディーの中で「おまえが打たなきゃ誰が打つ」と歌うのだ。
なお、「おまえ」がダメなら影響がありそうな人はいる。例えば坂本勇人。
誰よりも強く勇ましく オオオ… お前が立つその場所は熱気の渦が巻く 坂本 炎となれ
「おまえ」が出てくる。
また、ソフトバンクのチャンステーマにも「おまえ」は出てくる。
野球場の中から 頑張れって言っている 激しく熱く いまここで (がんばれ!)
燃える闘志今見せてやれ (選手名)一振りで決めてやれ 勝利決まれば お前の夜だ
いかがだろうか? 坂本勇人にしろソフトバンクのチャンステーマにしろ、さらにはドラゴンズの「サウスポー」にしろ、私には選手を鼓舞する「おまえ」にしか聞こえないのだが、もはやそういう時代なのだろうか。一つ気にかかるのは、非常にスマートな印象の与田監督がドラゴンズファンが発する「おまえ」に違和感を持っていることだ。現場だとかなりきつく聞こえるのだろうか。熱狂的なドラゴンズファン、ましてや盛り上がっている雰囲気、さらにはドームというこだまする環境。「おまえ」という言葉が普通より強めに聞こえるのかもしれない。
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最終的にはドラゴンズファンが決めたらいいのだけれど、長年チームを鼓舞してきた応援歌ではあるので、例えば「おまえ」の部分を選手名に変えるなどしてサウスポーは使い続けてもらえたらな、と部外者のホークスファンながら思う。もちろんホークスと対戦する時はチャンステーマが長々と流れないよう封じたいところだ。乱闘、パンチパーマが消えてどんどん草食化するプロ野球。サウスポー騒動をきっかけに「おまえ」が絶滅する時代が来るのだろうか。