黒柴スポーツ新聞

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勝っても負けても自分らしく~剣道全日本2連覇の西村英久にも迷いや悩みがあった

意思の強い人に憧れる。もっと心が強ければ結果は違っていたんじゃないかと思うことは多々ある。昨夜もそうだ。つい、こたつでうたた寝……だが、昨夜はけがの功名。寝ぼけ眼で見たNHKの「アスリートの魂」がすごく心に響いた。主人公は西村英久(熊本県警)。剣道の全日本を2連覇中の剣士である。



これまで600本近くブログ記事を書いてきたが剣道ネタは初ではないか。素人ゆえに剣道の魅力は伝えきれないのだが、西村のまっすぐな気持ちには感服した。前年、下がりながらの小手という戦法も生かして全日本を制しつつも、正統派の剣道ではないととらえ、前に出る気持ちを強めていた。

世の中の流れとは逆行している。正に小手先の勝ちにこだわり、勝ち逃げも辞さない。そんな流れがある中で、西村は結果よりも勝ち方にこだわった。
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それでも剣道の全日本連覇は過去二人しか成し遂げていない偉業である。当然西村英久にもプレッシャーが掛かった。

全日本を控えながらも調子の上がらなかった西村は故郷・大分の恩師を訪ねた。そこで「勝っても負けてもいい。思い切ってやれ」とのアドバイスをもらった。敗れてしまった世界選手権では西村らしい剣道ができていなかった、との指摘もあった。

全日本連覇を狙う弟子に「勝っても負けてもいい」という師匠は本当に西村のことを考えているなと伝わってきた。でなければ「どうにか勝て」と言うのではないか。そうではなく、思い切ってやれ、しかも自分らしくやれというのだ。そう、自分らしさが出ないなら、何のために勝つのか分からない。それはきれいごとなのかもしれないが。

前に出る気持ちを強めていたけれども、いざ全日本になって、またもや下がる姿勢が出てしまった。恩師からそれを諫めるLINEが届いた。西村は強豪との試合で立て続けに一本を奪うなどして、全日本2連覇を達成した。まだまだ高みを目指している。

西村英久は、人間的にも成長したいと話していた。勝つために剣道をするのではなく、剣道をすることで一回り大きくなろうという考え方は素晴らしい。スポーツをやる意義の一つはそこだろう。ただ勝てばいいというのは、大切なものを置き去りにしている。

番組を見て、西村英久はファンを増やしたとみている。というのも、未完成な部分や成長過程の姿を披露したからだ。全日本2連覇の猛者だから完璧かと思うだろうが、迷いや悩みを持ちながら、あるいは弱気と戦いながら前に進んでいる。この辺りはすごく共感を呼んだと思うし、まさに等身大のヒーローという位置付けになったのではなかろうか。

というわけで、西村のように前に出る姿勢を、強い気持ちをもちたいところだが、今これを書いているのは暖かいこたつに入りながらであり、昨夜のようにまたうたた寝をするリスクを孕んでいる。とりあえず、前に出る前にこたつから出なければ……

西村英久のおかげで、剣道も素晴らしいものだな、と再認識できた。なかなかできるものではないと思うが、人間的に成長する過程の中で全日本3連覇をするチャンスがあればぜひ狙ってもらいたい。その時はもちろん、自分らしい剣道で。


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