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黒柴スポーツ新聞

ニュース編集者が野球を中心に、心に残るワンシーンやプレーヤーについて綴ります。

バトンだけで取った銀ではない~高野進のリレー解説記事に脱帽

今更ながらリオとの時差は12時間。オリンピックの結果を報じる新聞は夕刊が勝負と言われていた。しかし競技によっては朝刊制作時間帯に間に合う。ネットニュースのような速報は出来ないにしても、なるべく新しいものを入れようとするのは新聞人の本能。先輩、後輩もできるだけの編集はしているように見えた。


だが新聞はデータを印刷工場に送り、印刷して、新聞販売店まで運び、配達員さんが配ってくれて各家庭に届く。即座にアップできるネット記事とは違う。なので速報にも限界がある。こんなことは言うまでもないのだが、朝刊で決勝の結果を収容できない競技を報じた「銀以上」(確定の意味)などの見出しを見ると、速報の限界を思い知らされる。


かつて通信社で行われた編集記者研修に混ぜてもらったことがある。編集記者というのはいわゆる記者ではなく記者が書いた記事に見出しを付けたり写真を配置して紙面を組み上げる人たちのこと。研修ではアメリカ勤務経験者の講師の話が印象に残った。確かニューヨークタイムスでの出来事と聞いたが、例えばスペースシャトル帰還を報じる紙面でも「シャトル無事帰還」という見出し、記事は許さないぞとトップが言ったという。そんなことは市民はとっくに知っている。であれば「なぜ無事に帰還できたか」といった内幕や背景を紙面で展開しろと言うのだ。


新聞の紙面は歴史の記録だという人もいる。それは否定しない。だから紙面に誰それ金メダルという見出しがあるのは意味がある。だがそれがメインの見出しでなくともいいと思う。上の話になぞらえばいまだに「シャトル無事帰還」的な見出しが躍る。


ネットを意識してから新聞は「半日遅れのメディア」と思っている。といっても決して自嘲気味に言ったり卑下して言う意味ではない。この「時差」をうまく生かしたいという意味合いだ。きょうなぜこれをテーマに書いているかというと、黒柴スポーツ新聞編集局長が読んでいる新聞の朝刊が、半日遅れのメリットを生かしていると思えたからだ。競技日程のアヤだろうが、朝刊1面トップ記事は4×100メートルリレー銀メダル。これはすでにみんなが知っている。メンバーも各局のスポーツコーナーに出演してレースを振り返ったり今後の抱負をしゃべったりしていた。その後の新聞である。何が面白かったのか。


それは高野進氏の解説が載っていたことだ。このプロの視点というコーナーはとても勉強になる。やはり元競技者、元五輪選手ならではの視点は違う。あのプレーはこんな意味があり、こんな影響があったんだなとより深く振りかえることができる。これは速報記事にはない深みだ。

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高野氏の見立てで面白かったのは日本のリレーが「バトンが良かっただけではない」という点。テレビ各局はチームワーク、バトンワークが奏功したという構成に思えた。日本選手は個人では決勝に行けなかったがその戦力でもバトンパスが良かったからメダルが取れたという流れだ。だが高野氏は「個々の走りがよかった」という。


山県亮太はスタートがいい。実力が発揮できた。2走の飯塚翔太はブレーク(ジャマイカ)、ガトリン(アメリカ)が出てくるエース区間で快走。桐生祥秀はジャマイカにほぼ並んでアンカーへ。ケンブリッジ飛鳥はボルトに食らいついた。そして1、3走はコーナーの遠心力を利用してうまく走っていたのでバトンだけで銀メダルが取れたわけではないというのだ。


ちなみにこの記事の見出しは「いい心理状態が後押し」。ほうほうと興味を持って読んだ。日本は予選でアジア新を出して、準決勝の組を1位通過した。世界で経験を積んだメンバー。初めての決勝で冷静かつ燃えているいい心理状態を共有した。勢いがあるメンバーで、世界で戦えることを予選で確認できたからいけいけとい雰囲気だったと書いてあった。


準決勝は、リアルタイムではラジオ中継で聞いていたのだが、アナウンサーか解説者が「(まだ決勝があるので)あまり喜びすぎない方がいいですね」と言っていた。これに興味を持った。人間、2回勝負のうち最初の1回でうまくいったら次の1回はどうなるのか?


2パターンあると思う。もう、1回はうまくいったのだから次はうまくいかなくてもしょうがないかなと思う人。もう一つは、1回目うまくいったから2回目は楽な気持ちで臨める人。黒柴スポーツ新聞の読者の皆さんはどちらだろうか?


ちなみに編集局長は後者。失敗するのが怖いタイプ(徐々にそうではなくなっているが)ゆえにまずはうまくいった安心感で、次はちょっとチャレンジしちゃおうかと思うかなと。習字の授業で半紙は残り2枚。その1枚目でそこそこきれいな字が書けたら、ラスト1枚は大胆に書けるパターンである。


この点についてはテレビで北京五輪のリレー銅メダリストの朝原宣治が本人らに質問していた。準決勝でうまくいった後、決勝へどう気持ちを切り替えましたか?と。

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山県は「守りに入らないようにした」。桐生は「上がったテンションに乗った」。桐生は前者でも後者でもなかったが山県はもしかしたら前者かもしれず、そうならないよう気持ちを切り替えたのかもしれない。


飯塚も言っていたが強豪は決勝になると一気にギアを上げてくる。とてもじゃないが守りに入ったら失速していたことだろう。失礼ながら編集局長は健闘しつつもメダルには届かないと見ていたので生中継も見ていないし、新聞に「リレー銀」の見出しを見つけた時は二度見してしまった。


きょうは甲子園決勝の日。どこそこ高校優勝なんて見出しよりも、ワンプレー、勝敗のアヤをあぶりだす見出しが見たい。新聞編集者の熱い夏も最終盤を迎えている。


きょうの1枚は足が速い人ということで福本豊。最優秀選手1回、盗塁王13回。通算1065盗塁、シーズン106盗塁は歴代1位。一方で2543安打を放っている打の人でもあることをもっと認識してもらいたい。通算初回先頭打者本塁打は43本も打っている。この写真、福本の赤いストッキングが目立つ。黒(紺?)と赤いラインもカッコいい。ひじに7という番号が見えるがアンダーシャツの上にサポーターでも付けているのだろうか。最近心に残ったストッキングといえば秀岳館。あの黄色はハチのような危険な色に見える。そういう心理的効果も狙ってユニフォームを作っていたらなかなかの策である。だが何度も書いているようにユニフォームは成績が作る。福本の赤、秀岳館の黄色が危険な色に見えるのは彼らの実力がそうさせるのだ。

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