黒柴スポーツ新聞

ニュース編集者が野球を中心に、心に残るシーンやプレーヤーから生きるヒントを探ります。

甲子園Heroes表紙が大阪桐蔭ではないことへの違和感

「甲子園 Heroes」(朝日新聞出版)が8月25日、復刊された。5年ぶりという。表紙は吉田輝星。秋田の金足農業を決勝まで導いた立役者である。が、ここは優勝チームである大阪桐蔭ナインが収まるべきではなかろうか。

金足農業のひたむきな野球が人々のハートをわしづかみにしたのは分かる。3回戦で強豪横浜を倒した逆転スリーラン。近江を土俵際でうっちゃったサヨナラツーランスクイズ。そして地方大会からマウンドを守ってきた吉田輝星が打ち込まれ決勝で敗れた悲劇。公立の、しかも農業高校の躍進に注目するなと言う方が無理だ。このブログだって金足農業のことを書いている時はめちゃくちゃ楽しい。しかし、高校野球ファンたちがわあわあ騒ぐのと、主催者である朝日新聞がルーツの朝日新聞出版がフォーカスするのとは訳が違う。
tf-zan96baian-m-stones14.hatenablog.com
何より出版物は、形として残る物。記念すべき100回大会の表紙が、高野連会長をして「高校野球のお手本」と言わしめた全員野球の金足農業というのは、勝利至上主義ではないという意味ではいいのかもしれない。しかし、単純に思う。優勝した大阪桐蔭ナインはどう思うかな、と。単に巡り合わせの問題かもしれない。決勝で打ち負かした相手が日大三だったり、愛媛は済美だったら、こんなにはなっていない。そう、大阪桐蔭は運が悪かったのだ。ちなみに表紙に優勝校以外が採用された例はないのか、J-CASTニュースが調べてくれている。このHeroesシリーズでは史上初、前身のアサヒグラフでは1981年の工藤公康(準決勝敗退の名古屋電気=現在の愛工大名電)、1982年の荒木大輔(準々決勝敗退の早稲田実業)がいたという。
荒木大輔のいた1980年の甲子園

荒木大輔のいた1980年の甲子園

旬の人間を取り上げるのはメディアの基本の「き」。そして編集者によって価値判断に差があるのも分かる。しかし、敗者に光を当てるならば勝者にも敬意を払うのが礼儀ではなかろうか。

雑誌の表紙の見出しは上に「金足農 秋田勢103年ぶり決勝進出」。雄叫びを上げる吉田輝星のカッコいい写真があり、彼のグローブの下に「大阪桐蔭 史上初2度目の春夏連覇」となっている。やっぱりこの表紙、偉業とちぐはぐな感が否めない。

応援するなら弱い方。その意味で今大会、大阪桐蔭を応援することはなかった。このブログで大阪桐蔭のことを書いたことはあるが、それは去年の「一塁事件」とその後についてだ。
tf-zan96baian-m-stones14.hatenablog.com
tf-zan96baian-m-stones14.hatenablog.com
強者だから、弱者だから、ではなくそこに何を見出だすかが腕の見せ所。速報では太刀打ちできない分、視点や感性、分析力や表現力を磨いていこうと思う。


福岡ソフトバンクホークスランキング