黒柴スポーツ新聞

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野球×新聞×インターネットって面白い! 熊本日日新聞がnoteで「火の国球児」紹介

今回は熊本日日新聞(熊日)の「野球×新聞×インターネット」という楽しい取り組みを紹介する。新聞とインターネットは対立関係にあるかのごとき描かれ方もされるが、決してそんなことはない。むしろ組み合わせ方次第では物事を深く、立体的に伝えられる。それを再認識させられた。


熊本は「打撃の神様川上哲治(熊本工)を筆頭にプロ野球選手を輩出してきた。現在、プロ野球を楽しんでいる人ならば秋山幸二(八代)と伊東勤(熊本工)は十分ストライクゾーンだろう。この夏、熊日金足農業フィーバーの陰で独自の戦いを進めていた。過去の紙面と今をリンクさせたアーカイブ系の取り組みだ。
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秋山と伊東が藤崎台で激突! 1980年、夏の高校野球県大会決勝「八代ー熊本工」 二転三転の大接戦に観客は熱狂 「夏の甲子園100回記念 紙面を彩った火の国球児たち」。これがその第1弾。夏の甲子園100回目にちなみ、思い出の選手や歴代ベストナインを選ぶなどさまざまな企画が新聞ごとにあったが、熊日の取り組みのポイントは過去の紙面を上手に生かしていることだ。
 

いわゆるオールドメディアが新興メディアに勝る要素の一つは過去記事並びに写真、そして紙面だ。地方紙ならば100年単位の歴史を誇る。例えば九州の球団・ソフトバンクホークスは源流の南海ホークスまでさかのぼれば80年の歴史があるが、まるまる収まってしまう。

卒業

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要はこの蓄積した記事、写真、紙面をいかに活用するかなのだが、熊日夏の甲子園100回という節目に、熊本大会決勝で死闘を繰り広げた秋山幸二伊東勤にフォーカス。過去のコンテンツをネット上で再構成し、名勝負を今の世代に届けた。

詳しくは実物をご覧いただきたいが、とにかく、過去の紙面のパンチが効いている。見出しの力強さは紙面ならでは。過去記事をテキストスタイルでネットにアップするだけなら、この懐かしさ、タイムスリップ感は出ない。まさに紙面の成せるワザである。 
 
当時のモノクロ写真も味がある。伊東も秋山も面影はある(当たり前だが)。秋山は西武の主力打者のイメージが強いが、高校時代はピッチャーだったと恥ずかしながら知った。そして、よく考えてみたら熊本県大会で死闘を繰り広げた二人が西武の黄金時代を築いたのだ。人生はどう展開するか分からない。

こんなアーカイブス記事、テレビ局と連携して動画も付いていたらなお立体的で深みが出るに違いない。ラジオ局にも参加してもらって実況中継を聞けるようにしても面白い。とまあ楽しみ方はいろいろ。今年は西武がペナントレースを引っ張っているし、球団史を彩った伊東、秋山の高校時代をあらためて振り返ってはいかがだろう。ちなみにこの記事、1本200円。筆者はケータイのキャリア決済で支払った。気軽に買えるのも、いま風だ。
 
 
何より、過去のコンテンツを工夫して輝かせようという制作者の意思が素晴らしい。きちんと秋山に再度インタビューも行っており、過去と今をうまくつないでいる。読者が増えないと嘆いていてばかりいても始まらない。同じ新聞人として刺激を受けた。
 

もちろん、業界人ならずとも野球ファンなら十分楽しめるネタ。「川上哲治編」「野田浩司編」もあるので興味のある方はぜひ購読されたい。
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