黒柴スポーツ新聞

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自分を窮屈にしない~巨人・沢村拓一の先発再転向は成功するのか

再転向。素晴らしい響きだ。チャレンジは何度だってすればいい。そんなことをサンスポ記事を見て考えた。見出しは「巨人・沢村、先発再転向!原監督が通告『彼の良さというか…自分を窮屈にしている』」。

だから今日もブルペンに向かう

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150キロ前後を連発できる沢村拓一。威力は抜群だが大味な印象は否めない。ルーキーイヤーに11勝を挙げ新人王に輝くも、以後4年間の先発時代は通算29勝33敗と負け越した。平均7勝だから悪すぎる訳でもないが、負け越しはいただけない。

また、コントロールに難がある印象も。球威を生かして抑えに配置転換されたが、大事な場面で四球を出し、結果的に抑えられたとしても苦しいマウンドさばきはぬぐえなかった。この辺りが、原辰徳監督が言う「窮屈さ」ではなかろうか。

スポーツ報知には原監督の言葉が詳しく紹介されている。
「1点を守るのは窮屈そうに見える。お前さんの良さは俺はよく知っている。自分を小さく、窮屈にしているように見える。先発として頑張ってくれ。1点、2点、3点くらいいいじゃないか。そういう野球をやってみろ。智之(菅野)に匹敵する投手にお前はなれる」



1点、2点、3点くらいいいじゃないか。典型的な、慕われる上司の言葉である。丸佳浩の加入でよっぽど得点力に自信があるのかとついナナメから見てしまうが、沢村には細かいことを気にせず、持ち味を存分に発揮せよと言いたいらしい。
原点―勝ち続ける組織作り

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スキルアップを目指す中で、短所を直すのと、長所を伸ばすのは、どちらがよいのだろうか。昔は短所を直して平均値を少しでも上げさせる指導者や上司が多かったように思う。だが近年はジェネラリストもスペシャリストもそれぞれ評価されているように思う。そんな中、一番まずいのはそのどちらでもない中途半端な人たちだ。

ピッチャーで言えば先発でも抑えでもない。じゃあ中継ぎかと言うと、今は違う。現代の中継ぎはセットアッパーといって、勝利の方程式の一角であり、仮に負けていたとしても劣勢を食い止めて反撃の布石にならねばならない。中途半端な人たちはそのどれもできない。あまりよくない言葉だが、いわゆる敗戦処理しかできない。

そうならないためにはどうするか。ここはもう、短所を付け焼き刃で直すよりは得意分野を目一杯伸ばす方が得策に思う。その人にしかできないことをとことんやる。そしてまずは何らかのスペシャリストになり、ゆくゆくはいろいろなことができるジェネラリストへとステップアップする。理想論かもしれないが、それに尽きると思う。

そのためには仕事ばかりでもいけない。オフの時間を充実させて、好きなことに没頭する。そうやって得意分野を肉付けしていく。その積み重ねがいずれ仕事にも反映されるはずだ。
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再転向なんて言うと、それまでのキャリアを疑問視する向きもあろう。しかし、本来の力が発揮できないのであれば現在地に居続ける意味はない。だから、若干のくすぶり感が否めない沢村拓一がこのタイミングで先発に戻るのはすごく意味がある。

抑えを経験したことで、同じ先発ではあっても以前とは違う景色が見えるはずだ。あとはいかに自分らしさを発揮するか。沢村のチャレンジに注目してみよう。


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