黒柴スポーツ新聞

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松坂世代続々引退を受けた松坂大輔の甲子園登板を新聞はどう報じたか

9月13日は松坂大輔の誕生日だった。甲子園を沸かせた若者もはや38歳。20年もの歳月が流れたが、なおプロ野球選手である。松坂大輔は38回目の誕生日に、生涯で最も輝きを放った場所、甲子園に戻り、白星を手にした。


松坂大輔にはその白星を見せたい人たちがいた。そう、松坂世代だ。この登板を前に村田修一が引退。後藤武敏杉内俊哉も引退を表明していた。もちろん引退という重大発表をする前に、彼らはやりとりをしたに違いない。その上で、松坂大輔にとっては甲子園での登板が戦友たちへのメッセージになったのだった。


5回1失点。先発投手としては最低限の仕事であり、長いイニングを悠々投げていた若き日の姿ではない。だが松坂大輔にとってはまだやれるとアピールすることに意味があった。おまえらはやめるがオレはまだやるぞ、と。実際松坂は「3人に対し、自分はもう少し頑張るよという決意表明の日にしたかった」(共同通信記事より)と述べた。9月13日の甲子園での登板は、ものすごく意味があった。
続ドキュメント 横浜vs.PL学園 松坂大輔と戦った男たち

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これを各新聞はどうとらえたか。黒柴スポーツ新聞はネットワークを駆使して9月14日付の新聞各紙を調べてみた。


まず、岩手日報
「松坂 聖地で白星 38歳誕生日飾る」
シンプルで力強い見出しだ。雨中で力投する松坂の写真と共に堂々スポーツ面のトップに鎮座している。そう、甲子園は松坂大輔にとって、まさに聖地である。多重露光による松坂大輔の投球フォーム写真を掲載しているのが衝撃的。新聞で多重露光といえば花火大会がポピュラーだがスポーツ面では初めて見た。力投ぶりをアピールしたかったのだろうか。
大谷翔平 挑戦

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続いて熊本日日新聞
「松坂 "聖地"で輝く」「5回1失点 誕生日飾る 『世代』背負って」
こちらもスポーツ面のトップ。この「背負って」がナイス。同級生への思いが伝わってくる。岩手日報同様、聖地という言葉を使っている。写真は阪神の打者越しに投げる松坂。カラー写真である。
そして山陽新聞
「松坂誕生日 聖地で輝く」「ライバル引退決断 38歳 世代の旗手好投」
こちらも聖地が入る見出し。そして誕生日も使っている。熊日同様カラー写真だが、岩手日報よりアップの写真を使っていて力強い。もちろんトップ仕立てだ。
ちなみに岩手日報熊日、山陽は同じ共同通信の記事を使っている。どうだろう。同じ素材なのに見出しが少しずつ違うことがよくお分かりいただけるだろう。限られたスペースでいかに思いを伝えるか。しかも間違いなく。ネタを取ってくる外勤記者も偉いが言葉に魂を込める内勤記者(業界的には整理記者と言います)がいることをここでアピールしておきたい。


彼らはレイアウトも担当する。ナイターが終わってから日付けが変わるまで2時間あるかどうか。13日はセ・リーグだけだったが、パ・リーグがある日は6試合。1ページ作るのはてんやわんやだが鼻血が出るくらい楽しい。


全国紙も見てみよう。
朝日新聞(東京)。
「38歳 松坂は戦い続ける」「12年ぶり甲子園 バースデー勝利」
戦い続ける、のパンチが効いている。カッコいい。松坂の思いを代弁している。カラー写真の松坂は雄叫びをあげている。その横の見出しは「杉内、村田、後藤…自分はもう少し頑張る」。さすが朝日。内村航平ばりのドヤ顔着地をピタリと決めている。お見事。
あの夏 (上) 甲子園の魔物と神様

あの夏 (上) 甲子園の魔物と神様



続いて同じく朝日新聞(大阪)。
「松坂38歳 まだまだ熱投甲子園」「12年ぶり聖地 バースデー勝利」「盟友の杉内、村田、後藤が引退 奮起」。この熱投甲子園というのがユニーク。さりげなく、いや、堂々とグループ会社の番宣をしている。写真は東京版と同じく雄叫びをあげている場面だが大阪版の方がアップ。気迫を出したい意図を感じる。
完全保存版 高校野球100年

完全保存版 高校野球100年



毎日新聞は版は不明だが2種類確認できた。カラーのものは「20年前 伝説作った聖地」「松坂 甲子園の申し子」「38歳誕生日 6勝目」。他社が使い分けた聖地と甲子園を両方投入。伝説と申し子という抽象的な単語も二つ。若干のかぶり感は否めないが興奮は伝わってくる。他社が推してきた盟友のくだりはなく、代わりに6勝目を入れてきた。写真は今回確認した紙面で唯一、ファンに左腕を上げて応える松坂。笑顔である。


もう一つのモノクロ版は「12年ぶりマウンド 直球に力」「松坂 聖地の申し子」「38歳バースデー白星」。直球に力、が復活を印象付けている。写真は岩手日報と同じもののようにみえる。



こんな盛り上がりの一方、首位の広島をトップにした新聞や、リーグ2位のヤクルトをトップにした新聞もある。どれを大きくするか、その価値判断は十人十色であることは百も承知。それでもなお、松坂松坂松坂でいってほしかった。
1999年の松坂大輔 歴史を刻んだ男たち

1999年の松坂大輔 歴史を刻んだ男たち



松坂は誰が見てもピークを過ぎている。日米170勝なのだから、きれいな終わり方をしてほしくもある。しかし松坂は踏ん張っている。いまプロ野球ファンは、松坂の若き日には想像できなかった、泥臭い松坂大輔を見ているのだ。そこへ来て相次ぐ松坂世代の引退。松坂がどう過ごしていくのか、興味が尽きない。

というわけで、久しぶりに松坂グッズを漁ってみた。レッドソックス時代にネットオークションで落とした物だ。値段的には下がったかもしれないが、自分の中では価値が上昇している。頑張れ、松坂!
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