黒柴スポーツ新聞

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新井貴浩もいいけど後藤武敏の引退試合に引かれる理由~あの男は登板するのか

DeNA後藤武敏が2018年シーズンでの引退を表明した。彼もまた松坂世代である。

松坂世代どころか、横浜高校時代の同級生。松坂大輔小池正晃小山良男と共に1998年の夏の甲子園を制した。明徳義塾に逆転勝ちし、PL学園と死闘を繰り広げたあの夏のことだ。

横浜vs.PL学園 松坂大輔と戦った男たちは今 (朝日文庫)

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あれから20年。後藤武敏はまだプロ野球選手でいる。戦ったPL学園の平石に至っては楽天の監督代行になっている。そんな年齢だ(平石がそういう器という説もあるが)。今年は村田修一も引退したし、松坂世代はだいぶ現役選手が減ってきた。


DeNAファンでも西武ファンでもない。強いていえば高校野球好き。だからこそ思う。「後藤武敏の最後の対戦相手は松坂大輔であれ」と。
続ドキュメント 横浜vs.PL学園 松坂大輔と戦った男たち

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それは無理な話ではない。後藤武敏引退試合は9月22日の中日戦。中日には松坂大輔が、いる。

引退試合の最終打席。その対戦相手は切腹の時の介錯人である(後藤武敏は何も責任を問われるようなことをしていないが)。思い残すこともないよう、スパッと選手生命を断つ。それが友人なら諦めもつこう。

現に後藤自身も「最後はマツに」と思っているという。そして松坂大輔自身も登板したい意思を示している(スポーツ報知記事より)。記事にあるように、情が深そうな森繁和監督のことだから可能性は十分ある。

参謀 (講談社文庫)

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そう、引退試合はエンターテイメントなのだ。


後藤はチームの一員として小池正晃引退試合に参加した経験がある。その試合で奇跡は起きた。そのシーズン、1本もホームランを打っていなかった小池正晃はまさかのホームラン2発。後藤は小池が打席に立った時点で泣いていた。もう、もらい泣きしちゃう。詳しくは下の過去記事を読んでいただきたいが、他人のために泣ける人は最高だ。

tf-zan96baian-m-stones14.hatenablog.com


友の引退試合で泣く男は自分の引退試合でどうなってしまうのだろう。だいたい予想はつくが、演出を想像してみた。


まず、試合冒頭に後藤が打席に立つパターン。これだと試合にさほど影響はない。世の中には、セレモニーを真剣勝負の試合中にせんでよろしいというケチ臭い人もいるが、1回の裏ならまだ許されると思う。後藤は第1打席で終了。松坂大輔は先発して行けるとこまで投げれば問題ない。投手と打者の違いはあるが、山本昌引退登板がこのパターンだった。

山本昌という生き方

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だが、盛り上がるのは試合後半の登場。8回くらいの山場で代打後藤武敏登場。ならばと満を持して松坂大輔がリリーフ登板。1打席限りの真剣勝負である。後藤がヒットなりホームランを打てばめでたしめでたしなのだが、松坂大輔のことだから三振を狙いにいくに決まっている。後藤はまっすぐ1本に絞りホームランを狙ってみてほしい。小池正晃に続いて奇跡は起きる、かもしれない。

そんな夢を見られるのも、実は松坂大輔が退路を絶って中日入りしたからこそでもある。松坂はいつまでも松坂世代のシンボルであり、太陽であった。横浜高校-中日の小山良男明徳義塾-ロッテの寺本四郎。PL-横浜の田中一徳。PL-大阪近鉄などの大西宏明。PL-立教-日テレの上重聡(あっ、この人は違う?)。すでに球界を去った松坂世代にとっても、松坂大輔はきっと心のよりどころに違いない。きっと後藤武敏にとっても………。

松坂世代 (河出文庫)

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幸か不幸か中日もDeNAも優勝争いはしていない。ゆえに誰はばかることなくセレモニーをやったらいいと思う。ベイスターズ戦だし、Abema TVあたりで生中継してくれないかなあと切望する。そう、22日は横浜スタジアム終戦なんだ。横浜高校で育った二人が最後の最後にどんなドラマを見せてくれるか。期待せずにはいられない。


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