黒柴スポーツ新聞

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無謀だが真面目な連投防止策を考えてみた~金足農業・吉田輝星をリスペクトしつつ

終わった。100回目の甲子園が。秋田県民の有給消化日が。そして東北の人々が見た、深紅の大優勝旗白河の関を越える夢が。

秋田が誇る「雑草軍団」金足農業が、史上初の2度目の春夏連覇を狙う大阪桐蔭に挑み、壮絶に散った。逆転スリーランに、意表を突くツーランスクイズ。大黒柱のエース吉田輝星だけじゃない、まさに全員野球で全国の高校野球ファンを楽しませてくれた。みんな、ありがとう、と言ってくれるに違いない。

しかし、多くの人は思っているはずだ。最高のコンディションの吉田輝星を、最強の大阪桐蔭打線にぶつけてみたかったな、と。

もちろん、体調管理やリスク管理も含めてのトーナメント戦である。もはや継投は甲子園を勝ち抜く上での常識かもしれない。

実際、1994年の佐賀商業の峯謙介以来、6試合を投げきった優勝投手は出ていない。それでも準決勝までの吉田輝星の力投を見ると、ついに壁が破られるのかと期待したのだが……結局、吉田輝星は5回を投げ被安打12の11失点。甲子園初戦から4試合連続で2けた奪三振だったが、決勝は四つにとどまった。

大阪桐蔭打線が見事に吉田輝星をとらえたのは紛れもない事実だが、吉田に疲労の2文字をダブらせない人はいないだろう。そこが「どうにかならないのか」と思う理由だ。

選手を守る方法として提案されるのが球数制限。よくプロで目安にされるのが100球だがそれだと大概完投できない。つまりピッチャーが複数必要になる。そこがまず問題。才能ある選手が集まりやすい強豪はいいが、公立校は逸材が入って来るのを待つばかりだ。

2番手投手がいなければエースが投げ続けるほかない。今でも公立高校が勝ち進むのは厳しいのに、球数制限をしたらさらに道のりは険しい。ちなみに吉田輝星は最も少なかった準決勝の日大三戦ですら134球。130球なら今と変わらないから、せめてMAX120球と制限した場合、吉田は1試合も完投できなかったことになる。金足農業は粘り強く戦ってきたわけだが、背景に吉田の好投あってこそ。やはりエース頼みの学校は球数制限が導入されると不利が予想される。

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次に、発想を変えて、試合自体を短くする手。これは解説者の里崎智也が日刊スポーツ記事で言っていてなるほどなと思った(ちなみに球数制限の下りも参考にさせてもらっている)のだが、やはり野球は9回で争ってほしいよなと思う。過去の記録との比較も何かとやりにくくなりそうなので、試合そのものをあまりいじってほしくない。そこで提案なのだが、すぐできそうなのが休養日の追加。欲を言えば決勝前に2日。最低でも1日挟んでもらいたい。球児は若いから1日でもだいぶ回復すると思うが、決勝まで残れるのはたった2チームなのだから、じっくり体調を整えてもらいたいと思う。高校野球ファンはひたすらネット検索やSNSで時間をつぶしたり想像力をふくらましたりできるから2日くらいなら我慢できる(はず)。もうひとつは補強選手制度の導入。都市対抗野球で適用されているのだが、高校野球にアレンジして言えば、同じ都道府県の大会で敗れた学校の選手を借りる。都市対抗だと3人までOKらしいが、高校野球は教育的であるべしなどと必要以上に言う人もいるので遠慮して2人まででいかがだろうか。エースの負担を軽くするため、投手を2人でもいい。バランスを取って投手と打者1人ずつでもいい。2人くらいなら母体の学校のカラーは変わらないのではないか。例えば今大会派手な打ち合いを演じた高知商業は県大会で明徳義塾を撃破したわけだが、そこからエース市川と四番谷合をレンタルする。投手は北代から市川に継投できるし、打線はここぞの時に谷合を代打に送ることもできる(事情が許せばスタメンでもOK)。実際、北代は高知大会から全試合投げきったわけだが、市川と併用したら負担は減っていた。また、敗れた済美戦はあと一本が出ていたら結果は違っていた。結果が出たかは分からないが相手の中矢監督からしたらとっておきの代打に谷合が出てきたらすごく嫌がったと思う(明徳の後輩でもあるし)。補強選手にもメリットはある。何せ甲子園に出られるのだ。県大会で負けた悔しさは何とか消化できるだろう。さらにはプロ入りを目論む選手なら最大のアピールチャンスになる。ライバル校の戦力になることさえ我慢できれば損にはならない。とまあ、選手の負担軽減が少しずつしか進まないことに業を煮やしての、真面目な提案なのだが「明徳と高知商業が一緒にやるなんてありえん!」と一蹴されそうな気配が……同じことは各県で起きること必至。八戸学院光星青森山田早稲田実業日大三……。ライバルゆえに無理な提案ではあるが、このくらい大胆なことをしない限り、公立高校が優勝するのは難しいように思うのだがいかがだろうか(公立にこだわるなら公立同士で選手を融通する手もある)。あの剛腕・吉田輝星をして、最後の最後に「もう投げられない」と言わせた事実を、大会関係者やわれわれ高校野球ファンは重く受け止めねばならない。