指示ではなく示唆をする~DeNA田代コーチとオリックス高山コーチが選手に送った言葉とは
「おなかがすいた」
こんなことをサヨナラの好機に言うコーチ、初めて見た。発言者はDeNAの田代富雄コーチ。ネクストバッターズサークルに向かう大和に言ったそうだ。「この回で決めてくれよ」と。
大和は応えた。
「裏にパンがありますよ」
なかなかの切り返し。この奇妙なやりとりは大和の力みをなくすための、田代コーチの作戦だった。そしてその6月19日、DeNAは大和のヒットでサヨナラ勝ちした。
気合いを入れて打ってこい。そういうアドバイスもありと言えばあり。だがシャレオツで若干アメリカンなやりとりが選手に好結果をもたらすことがあるんだな、と勉強になった。田代富雄はそんなユーモアがあるんだ、とびっくり。アラフォーの筆者にしてみれば、田代と言えば黙々と、淡々とホームランを重ねていくホエールズの主砲というイメージ(通算278本塁打)だったのだ。
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先日、日経新聞スポーツ面のコラムで、すぐマウンドに向かうコーチはどうなのかという内容があった(逆風順風「円陣と働き方改革」)。今後に期待されるオリックスの榊原に対して、高山郁夫コーチは、「ここで(気持ちを)切り替えられたら成長できる。踏ん張ってこい」とマウンドで告げたという。成長できる、というアドバイスがよかったと書かれていた。踏ん張った先の成長を匂わせる。技術論でも精神論一辺倒でもない、工夫したアドバイスに思えた。
そんなことを考えていたら、6月20日の日経新聞連載「メガバンカー」第3回には三菱UFJフィナンシャルグループの亀沢宏規副社長の人物評で「指示がくるのではなく、示唆がくる」と書かれていたのを見つけた。こういう指導者っていいなと思う。成長を促そうとしたら、とかく技術論に偏りがち。それは早く独り立ちさせてやりたいという親心でもある。しかし指導者本来の役割は選手あるいは部下を成長させることだと思う。
榊原や大和があのアドバイスをどう生かしていくのかは興味深い。ちなみに6月21日、大和はまたしてもサヨナラヒットを放っている。