黒柴スポーツ新聞

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うまくいかない時は自分らしさを思い出そう~ソフトバンク田中正義、勝負のシーズン

田中正義の記事を見て、涙が出そうになった。東スポの記事の見出しは「ソフトB・田中 家賃5万円からの逆襲『裏切ったものを取り返す』」。田中正義にとって、2019年が勝負の年ということがひしひしと伝わってくる。



田中正義は2016年のドラフトで5球団が競合した逸材だ。だが、まだプロ野球で勝ち星が付いたことがない。確実に、彼が思い描いていたプロ野球選手の生活は送れないでいる。
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寮を出たのはどんな意図だったのか。家賃は5万円だという。私も社会人になりたての頃はそのくらいの水準の所に住んでいた。家は休息を取れたら十分だと田中正義は言っていた。選り好みをするのは1軍に定着してからでいいんだ、と。

田中正義は潔いなと思う半面、あまり自分を追い込みすぎないでほしいなとも思う。ただでさえタレント集団のソフトバンク投手陣にあって、プロ未勝利のピッチャーがアピールしていくのは生易しいことではない。強いチームに入るということは、埋没するリスクもあるのだ。

だが、田中正義の歩みを見ていると、思うように投げられなかったから結果が付いてこなかった面がある。だから無理をしてまた以前のようになってしまったら元も子もないじゃないかと心配になるわけだ。

見出しにある「裏切ったもの」とは、入団時に背負っていた周囲からの期待だろうか。そのプレッシャーは当事者にしか分からない。ドラフト上位者には億から何千万円単位で契約金が支払われるわけで、責任感も感じるのだろう。

でも、背水の陣だからこそ、いきいきと投げられていた時の感覚を取り戻してほしい。田中正義にしてみたら、もうそんなことは言っていられないのかもしれないが、もう一度、自分らしさを取り戻してほしいなと願うばかりだ。

5球団競合なんて、だてじゃない。田中正義のストレートを見た人は皆、惚れ惚れしたに違いない。田中正義が競合の結果、ソフトバンクが交渉権を獲得した時は小躍りしたい気持ちになった。プロ野球選手はけががつきものだけれども、素晴らしい才能を発揮しきれずに終わるのは悲劇でしかない。

思えば2018年に中継ぎで大ブレイクした加治屋蓮も背水の陣だった。同じくドラフト1位の松本裕樹もプロ3勝にとどまっており、サイドスロー転向にチャレンジしている。ホークスの2年連続日本一の裏側で、もがいて奮闘する若者たちがいる。
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思うようにいかなかった時こそ、原点に立ち返りたい。自分の売りは何なのか。自分は何がしたかったのか。私はあの惚れ惚れするような田中正義のストレートを見たい。筑後で活躍するのも悪くないけれど、やっぱり超満員のヤフオクドームで躍動する田中正義が見たい。そのマウンドに田中正義が立っている時はきっと、自分らしさを発揮できている時だから。


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