黒柴スポーツ新聞

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気持ちも球種の一つ~引退表明の上原浩治インタビューより

先日、日経新聞に掲載された権藤博コラムで、上原は2軍では燃えられなかった説が唱えられていたが、それは本当だった。5月26日のシューイチで放送された上原浩治インタビューで上原本人が「気持ちが入らなかった」と述べていた。

 

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それは決して偉ぶったものではなく、トップレベルに長年いたからこその感覚。これから結果を出そうという2軍選手と気持ちの入り方が違うのはむしろ当然だ。そんな自分が1イニング投げるよりは、これから自力で未来を切り開く後輩たちにチャンスを与えてほしいと身を引く上原は潔かった。

 

ただし完全燃焼ではないらしい。インタビューした中山秀征が高橋由伸の言葉「上原はまだやりたいはずだ」を伝えると「やりたいですよ」「(やめることは)後悔しかない」と胸の内を吐露していた。だが巨人としても上原クラスに戦力外通告はできない。上原は引き際を自ら感じ取り、実行して正解だった。

 

不変

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インタビューで印象的だったのは「気持ちも球種の一つ」というフレーズ。球に気持ちが乗っていることは自分でも分かるのか、という中山秀征の問いに対する答えだったのだが、さすが世界一に輝いたクローザーの言葉だし、語り継がれるあのWBC韓国戦で好投したのもうなずける。

 

何でも気持ちで片付けるのは好きじゃない。気持ちだけで何とかなるというのは、社会人になると年々減っていく。だからこそ変な諦めが染み付いてしまうのだが、だからこそ気持ちで何とかなるとか、何とかしなきゃいけない場面は必死のパッチで何とかしたい。いつものスキルに一つ、気持ちが加われば選択肢も一つ増えるわけで、ひょっとしたら追い詰められた壁に小さな扉があって、何とか脱出することができるかもしれない。

 

上原の場合はそんな逃げではなく攻めのピッチングなのだが、気持ちが乗っているからこそストレートが伸び、気持ちが乗っているからこそスプリットが一段と落ちたのだ。150キロ台を連発せずともなぜ上原がメジャーで結果を出せたのか、また一つ答えが分かった。

 

気持ちも球種の一つ。本当にその通りだ。押しきる時も、思いやる時も、気持ちを込めることで一段と効果が出ることだろう。そう信じて、自分の力を発揮したい。気持ちも球種の一つ。本当に素敵な言葉を教えてもらった。


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