黒柴スポーツ新聞

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文化の違いで片付けていい? 明石健志のバック宙ホームインが米で賛否両論

見出しに目を疑った。「ソフトバンク・ 明石のバク宙が米国でも話題に 『暗黙のルールに従え』」(ベースボールキング)。構想16年、明石健志秋山幸二に憧れてサヨナラホームランを打ったあかつきにやろうと温めてきたバック宙ホームインがアメリカで賛否両論だという。

 

Fullc-Count記事でも見た。明石のパフォーマンスはMLB公式サイト内の人気コーナー「Cut4」も注目し、動画を公開するとファンからは賛否両論が沸き起こったそうだ。いわゆる侮辱行為というか、相手をリスペクトしていないというのだろう。

 

記事に書いてある通り、まさに文化の違い。日本のプロ野球ファンで明石のパフォーマンスを被弾したオリックス山崎福也への侮辱行為と解釈した人はまずいない。もちろんサヨナラ負けだからオリックスファンは悔しがったに違いないが。それでも相手の素晴らしいプレーを誉めるのが真の野球ファンである。

 

アメリカではそう思わない人がいる、というのが逆に新鮮だ。なんでも、派手なガッツポーズもダメだとか。そう言えば感情を表に出すタイプの田中将大が、巨人在籍中だったロペスと険悪なムードになった件があった。あくまでもプレーの中で自己表現せよということか。

 

 

 

確かに高校野球も、人間教育の場だから礼儀にはうるさい。グラウンドを出入りする時には帽子をとって一礼するし、試合中の派手なガッツポーズをよしとしない考えもあるようだ。

 

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だがプレーを一生懸命やった流れで出る感情は素直に出してもよいと思う。そして見ている側はその選手がなぜそんなパフォーマンスをしたのかを想像する力は持っておきたい。

 

今回の明石だったら、今季は腰を痛めて手術を決断。調整中にソフトバンクは故障者続出で猫の手も借りたい状態だった。例年なら手術した明石はそこまで早く召集されなかっただろうが、大丈夫なら出てくれということだったのだろう。しかし明石はなかなかヒットが出なかった。期待に応えられず、忸怩たる思いはあっただろう。そこへあの会心の当たり。興奮するなという方が無理だ。

 

文化の違いという納め方が一番無難だし、せっかくの明石のパフォーマンスをごちゃごちゃ言われたくもない。だがあえて書きたいのはそういうパフォーマンスの伏線なり背景を丁寧に表現することが大切だということ。アメリカではこんな反応です、と報じるだけではメディアの責任を果たしていない。明石の足跡をしっかり書いてアメリカに「輸出」するくらいの気概がほしい。

 

ファンはファンで明石がパフォーマンスに込めた思いをじっくり噛み締めたい。明石が縁の下の力持ち的な立ち位置で長年チームに貢献してきたこと、かつてバック宙ホームインをした秋山幸二(元上司)に憧れてパフォーマンスを実行したこと、サヨナラホームランを打ったあかつきにはバック宙ホームインをしたいなと思いながらもホームランバッターではないから実行まで16年費やしたこと、何年もチームに貢献してきた「同級生」の守護神・森唯斗が本調子ではないのをもり立てる意味があったこと……英語に堪能な方にはぜひこの辺りをまとめていただいて、海外向けに発信をお願いしたい。

 

なるべく日替わりで、頑張る選手を取り上げたいのだがせっかくの明石のパフォーマンスが色あせてしまわないようにと2日連続で明石健志について書いた。ダイエー時代を知る明石が平成の終わりに放った閃光。海外でどんな評価をされようとも、いいものはいい。私自身は、令和になっても人の心を打つプレーを咀嚼して、人の心に響く文章を書きたいと思っている。


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