黒柴スポーツ新聞

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真実は結果の中に~西野ジャパンはオレ竜の轍を踏むな

サッカーW杯の日本代表が、ポーランド戦での時間稼ぎ戦法で批判されている。チームというよりは西野朗監督が、かもしれないが。たった2カ月でチーム再建を託され、1次リーグ突破を果たした途端、勝ち上がり方を非難される。気の毒に思えてならない。

試合後すぐ西野監督は「本意ではない」と言っている。成長するために必要なプロセスなのだと、むしろ自らを納得させるようにも聞こえた。元々ズルなんてしない人なのだと、もう少し理解してあげられないものか。J1最多270勝の監督であり、アトランタ五輪指揮の経験者。結果を残すことの必要性を熟知しているからこその戦法に思える。
攻め切る―指揮官西野朗の覚悟

攻め切る―指揮官西野朗の覚悟

ともかく、選手も監督も「勝ちゃいいんだろ」的な態度じゃないのだから、その人らがなぜそうしたのか、思いをはせねばならない。一般社会でも、行動の背景を想像せず一方的に断罪する人、いるよなぁ…。例えばポーランドが無理に日本からボールを奪いにいかなかった理由を考えてみよう。ポーランドは日本戦を前に予選リーグ敗退が決まっていた。帰国したら結果を問われるに決まっている。だからなにがなんでも1勝しないといけない。日本が勝手に時間稼ぎしてるのだから仕方がない。実際、ポーランドのエース、レバンドフスキは「僕らにはどうしようもない」旨の発言をしている。そう、人にはそれぞれ立場があるのだ。ここからサッカーで言う「逆サイドに展開する」ばりに話を野球に振ってみる。2007年、落合博満監督が史上初の日本シリーズ完全試合の夢を断ち切り、9回に山井大介から岩瀬仁紀に継投したことがあった。正直に言うと山井の完全試合へのチャレンジを見てみたかった。何せ公式戦での完全試合は1994年の槙原寛己以来、達成されていない。それが日本シリーズで目前なのだ。そこを継投できるのはオレ流・落合博満しかいない。
完全試合―15人の試合と人生

完全試合―15人の試合と人生

落合は「日本一になるために必要だった」と言い切ればよかったのだが、どうも山井に原因があるかのような結論に至っている。落合クラスであれば「中日が日本一になったのは何年前だと思ってるんですか」(前回は2007年から53年も前の1954年)と、勝ちきる重要性を説けばよかった。落合ならばそれができた。だから山井が云々の話が出た時はがっかりした。だから西野監督には「あれがその時の最善策だった」と言い続けてほしい。
采配

采配

もう一つ書いておきたいのは長谷部誠の存在感。一歩間違えばチームが浮き足立つ状況で投入されたがしっかり「現状維持」と「イエローカードをもらってはいけない」の意思をしっかりチームに伝達。それができる長谷部誠がベンチスタートだったのは幸いだった。スポーツの世界でもビジネスでも、チームを制御できるのは素晴らしい人材である。本人に希望があるかは知らないが、いつか長谷部がどこかのチームで監督をしている姿が見たい。そんな長谷部誠が言った「真実は結果の中にしかない」とは、結果がすべての世界にいる人の言葉だからこそ重みがある。日本はグループリーグ突破を決め、それによって日本の多くの人がまだW杯を楽しめることになった。決勝トーナメントでは7月3日にベルギーと 戦う。そこで負けたとしても今回の西野ジャパンの頑張りが無駄になるわけではないのだが、少なくとも「善戦」という結果を残すことで、西野ジャパンの時間稼ぎは正解なのだったという真実が見たい。


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