黒柴スポーツ新聞

ニュース編集者が野球を中心に、心に残るシーンやプレーヤーから生きるヒントを探ります。

元南海・ブレイザーなら日本の長時間労働至上主義をどう評価するか

4月22日の巨人ーDeNA戦をラジオで聴いた。解説は野村克也。だいぶお年を召されたなと思ってしまうような口調だったが相変わらずお説教モード全開の解説だった。お元気そうで何よりである。

 

やり玉に挙がっていたのが長野久義ノムさんは以前から「何を考えて打撃をしているのか」と長野を酷評している。長野はこれまでの6シーズンで首位打者1回、最多安打1回、ベストナインゴールデングラブ賞は3回ずつもらっている。新人王も。これだけを見れば責められる選手でもないのだがノムさんクラスになれば力があるのに考えてやっていない(と見える)ところが歯がゆくて仕方がないのだろう。

 

考えてやっていないとしてこれまでに指摘されたのが小早川毅彦山崎武司。才能だけでやっていたとノムさんに見られおり、アドバイスを与えると合理的に結果を出したーというのがノムさんの本に書いてある。ノムさんがぼやいていた。「長野と一度話してみたい。聞いてみたい。野球とは? 打撃とは?」。大きい質問を上司にされると右往左往するのが社会人の常だがノムさんは放送中に答えを言ってくれた。「野球は頭のスポーツ」と。

 

野村は本当にそう思っており、ずばりという本も出している。「野球は頭でするもんだ!」(朝日文庫)。頭ごなしに理詰めの話を書いているのではなく実例を挙げて頭でやる野球を紹介している。影響を受けた大リーグ式のプレーや練習法も書いてある。

野球は頭でするもんだ! (朝日文庫)

野球は頭でするもんだ! (朝日文庫)

 

 

 黒柴スポーツ新聞編集局長も不毛な精神論は大嫌いだ。気合で何とかできるものならそうするがどうにもならないことはどうにもならない。意気に感じてダメ元でやることはままあるけれどそれとこれとは次元が違う話。この本を読んで共感する部分は多かった。

 

特に好感を持ったのが野村の盟友・ブレイザーの理論。ノックはやさしく正面に打つことを繰り返す。基本が大事だからだ。そして同じ練習は40分以上続けない。よくあるキャンプのノック風景とは大違いだ。「さあ来い」と選手が構え、右へ左へ散らされるノック。ユニフォームは泥だらけ。確かに体力と根性は身に付くだろうが肝心の技術はどうなのだろうか。

 

キャッチャーのショートバウンド対策練習も、日本は速い球をショートバウンドで投げるのだが、大リーグは時々顔のあたりにコーチが投げるという。ショートバウンドが来ると思って身構えた上で取るのと、いつくるか分からないと思って取るのとでは違うのだ。

 

練習時間も本に出てきた表現では大リーグは2時間半。巨人は5時間。長嶋巨人時代は7時間やったこともあったとか。南海時代のブレイザーコーチは「ダラダラ5時間やるより集中して2時間半やるほうが効果がある」が口癖だったという。見習いたい考えだ。日本は長時間労働が問題だが可能な限り効率的にエネルギーを消費したいものだ。長時間労働至上主義はまだまだ日本にはびこっていないか。早々になくなってほしい。一つもいいことがないのだから。

 

ドン・ブラッシンゲーム。ブレイザーの名前である。ブレイザーとは愛称のようだ。ウィキペディアにはスコアボードに名前が書ききれないため愛称を使っていた、とあった。きょうの1枚のカードにも確かに「DON BLASINGAME」とある。阪神と南海で2年ずつ監督を務めた。シンキングベースボール。試合だとあまりに合理的過ぎたら味気ない時はあるが、特に練習や仕事の仕方については合理的でありたい。どういう経験が彼の生き方を決めたのか。ブレイザーの思考回路、とても興味深い。

 

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