黒柴スポーツ新聞

ニュース編集者が野球を中心に、心に残るシーンやプレーヤーから生きるヒントを探ります。

飼石と勇猛心が組織を強くする~日本ハム優勝の2016年日本シリーズを振り返って

石垣といえばそこそこの大きさの石が重なっているイメージ。だが大きな築石(ちくいし)の間には飼石(かいいし)という小さな石が詰まっている、と下のサイトで見た。実は我が家の石垣がほんの一部崩れたのでテキトーに小さな石を詰めたのだが、石垣とは絶妙なバランスで成り立っているのだなと実感した。
www.shimz.co.jp


「バランスがいいチームでしたよね」。昨夜日本シリーズが終わり、優勝を決めた日本ハムをそう実況アナウンサーが振り返った。大谷翔平という大黒柱はいるが、奮闘した救援陣を筆頭に各選手が持ち味を発揮。見事逆転でシリーズを制した。黒柴スポーツ新聞編集局長は石垣を小さな石で補修しながら、飼石的な活躍をしたファイターズの面々のことを考えていた。



市川友也。スタメンマスクは大野奨大がかぶることが多かったが第5戦では先発起用され、シリーズタイの1試合3犠打をすべて初球で決めて流れを作った。
www.sponichi.co.jp



メンドーサ。第5戦で先発加藤貴之からマウンドを引き継ぎ2回からロングリリーフ。1死満塁のピンチを鮮やかにしのぐと、その後も広島の打線を沈黙させて試合を作り直し逆転を呼び込んだ。
www.nikkansports.com



そして前回の記事でも触れた岡大海。第5戦では同点に追いつく犠牲フライ。3塁走者・田中賢介も好走塁だった。岡大海はその試合で西川遥輝の劇的なシリーズ2本目となるサヨナラ満塁ホームランにつながる死球。マウンドに詰め寄ろうとした気迫も話題になった。第6戦では先制点となるタイムリー内野安打。個人的には優秀選手に選んでほしかったが選ばれないところまで含めて岡大海のような気もする。
www.hochi.co.jp



ただやはり石垣を積むには大きな築石の存在感は必要。その点、第6戦での殊勲選手は決勝の押し出しを選んだ中田翔は偉かった。
www.daily.co.jp



勝てば優勝が決まる試合、同点で8回、2死満塁で回ってくれば「打たなくてもいい」なんて考える4番バッターなどいない。しかも中田翔である。「おれが」「オレ様が」と思っても何ら不思議ではない。だが中田翔は結果的にバットを一度も振らず四球を選んだ。その瞬間、「ガッ」と右の握りこぶしを3塁ベンチに向かって突き出した。



このシーンをフジテレビ「スポーツLIFE HERO'S」に出演したハマの番長三浦大輔も絶賛。「打ちたい気持ちはあったと思う」がそれを「押し殺して」よく四球を選んだと褒めていた。

逆境での闘い方 ~折れない心をつくるために~

逆境での闘い方 ~折れない心をつくるために~



なお第6戦中継のため遅れて始まった「Going! Sports&News」には中田翔大谷翔平が生出演。赤星憲広が第3戦で中田翔の前の打者である大谷翔平が敬遠された場面の心境を問うと「ふざけんなよと思いました」と素直に吐露。横にいた大谷翔平も含めて一同爆笑であった。別に広島は1塁も空いていたし中田を怒らす意図もなかっただろうが「次打者が燃える場合がある」という敬遠の副作用はあった。



そんな男が、である。その第3戦で一時逆転となるタイムリーを打った相手投手・ジャクソンがまた第6戦、目の前にいたのである。2死ながら満塁で。第3戦でとらえたあのスライダーよ、また来いと思わずにいれるだろうか。外角に外れたジャクソンのスライダーに一瞬反応したようにも見えたが、中田翔はそれを冷静に見送った。この時点で中田翔の方が優位に立ったのだ。そしてあのガッツポーズ…。



頼れるエース、4番がいる組織は強い。しかしその人が独りよがりのプレーをした場合、結果が出なくなった時点で流れは止まる。飼石的な存在はそういう姿勢を見逃さないものだ。大きくて目立つ築石も、飼石がぽろぽろ抜けたら一瞬にしてバランスを崩す。石垣はがらがらと崩壊してしまうのだ。



中田翔はビールかけでのインタビューでシリーズの活躍した感想を求められた際「みんなが気楽に打席に立たせてくれた」と言った。ピッチャーで、長距離砲として甲子園にも出場した男が周りを立てる発言をする。そう言わせる環境がファイターズにはあるように思えてならない。あの風貌である。巨人、阪神あたりに入っていたらただでさえ言動が注目されるし、華のある選手同士での競争も避けられないし、今のような協調性のある姿勢にはなれなかったかもしれない。中田翔は本当によいチームに入ったと思う。



ふと「勇猛心(ゆみょうしん)」という言葉が浮かんだ。どんな意味だったかなあ、何で目にしたかと思ったら別所毅彦の本「剛球唸る!」で見たのだった。仏教用語で、別所さんの書き方によれば「逆境に強い、逆境で逃げたりあきらめたりせず逆にぶつかっていく闘志」。11.5ゲーム差をひっくり返し、広島に2連敗から4連勝して日本一になった日本ハムにふさわしい言葉だと思う。



きょうの1枚は中田翔。風貌は無骨なパ・リーグの伝統を受け継いでいるとも言えるが日本一にもなったことだしこれからは「ほどほど」にお願いしたい。3年連続100打点というだけで十分かっこいいですから。ないとは思うが、間違っても甲子園を沸かせたあの大先輩のように道を踏み外したりしないように…。どんなスター選手であろうと不祥事を起こした瞬間、過去の実績も野球カードの価値も地に落ちる。そんな事態はあの人の一件だけで十分である。
f:id:tf-zan96baian-m-stones14:20161030133537j:plain