黒柴スポーツ新聞

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信頼関係は無言のうちに作られる~2016年夏で甲子園「勇退」鬼嶋一司さんの名解説は早慶戦で健在だった

やはり鬼嶋節は健在だった。テレビ中継があった早慶戦で鬼嶋一司さんが解説されていた。

2016年夏、鬼嶋一司さんは甲子園解説を電撃引退。黒柴スポーツ新聞編集局長にとっては黒田博樹引退をしのぐビッグニュースだった。引退理由は分かっていないのだが画面で見る限りお元気そうでホッとした。
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早慶戦中継では早稲田元監督の應武篤良氏による4年生への思い入れいっぱい解説と、鬼嶋一司さんの愛情いっぱい解説が聞きどころだ。この日も應武篤良氏は「見ていて心が揺さぶられる」などと最後の早慶戦となる4年生に期待をかけまくっていた。

中継が見られたのは試合の後半のみの1時間だったが、期待通り鬼嶋一司さんの心に残るフレーズをゲットした。

「信頼関係は無言のうちに作られる」

場面は早稲田が無死3塁と追加点のチャンスだった。慶応は1点もやりたくない。ピッチャーは武器のチェンジアップを連投。しかし鬼嶋一司さんは1年生捕手のキャッチングに注文を付けた。

信頼関係が表れるのは低めをいかに止めるかなんだ。止め続けていけば信頼関係は出来上がっていくんだ。そういう説明だった。

慶応バッテリーは決め球のチェンジアップを読まれながらもほどよい高さからの変化で空を切らせ、3者連続三振でピンチをしのいだ。

このキャッチャーなら投球をワンバウンドでも身を挺して止めてくれる。うまく捕ってくれる。そういう安心感があって投手は思いきって腕が振れる。逆に不安だったら腕が縮こまって球威が欠けたり「置きにいった」ところを痛打される。勝負どころだからこそ信頼関係が試される。

仕事でもそうだなとつくづく思う。仕事をきっちりやる人はどんどん信頼が高まる。この人に頼めば間違いない。「えっ!」ということがない。最初は「大丈夫かなあ?」と思われた人でも結果を出し続けていけば「大丈夫」に変わる。そうやってブランドが出来上がっていく。

「信頼関係は無言のうちに作られていくんです」

無言のうちにっていう表現がいい。信頼ってわざわざ作るというよりも、出来上がっていくものだと思うから。こうしてまたまた鬼嶋節に心の左中間を真っ二つに割られた黒柴スポーツ新聞編集局長なのであった。

なぜこうも鬼嶋一司さんの解説が心地よいのか考えてみた。決して選手をくささない。うまくなってほしいという愛情が言葉の端々から感じられる。
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ただし言うべき時にはズバッと要点を突く。ゲームセットのシーン、チャンスでバッターは見逃しの三振だった。「苦言を呈すれば」と前置きした上で鬼嶋一司さんは言った。

「ヒットはね、バットを振らないと生まれないんですよ」

さすが。お見事。何で打たないのかとこき下ろすのではなく、次こそ打ってほしい、振ってくれるのを待ってるぞと言わんばかりである。

そう、営業マンも新聞記者も目の前のドアをノックしないと仕事が始まらないのだ。何かにつけてバッターボックスに立てない(厳密に言えば、立たない)言い訳をする人には胸に刺さる言葉だ。だがそれほどプレッシャーに感じないから素敵な言葉に思えてしまう。指導者的な役割の方にはぜひこんな鬼嶋節をお手本に部下を育てていただきたい。黒柴スポーツ新聞編集局長も人を輝かせる、応援する言葉遣いを心掛けよう。

きょうの1枚は山下大輔。慶応のプリンスはホエールズの名遊撃手に。1974年ドラフト1位である。2016年のドラフトでは同じ慶応の加藤拓也が広島に1位指名された。力強いフォームが印象的。赤いユニフォームは想像もつかないがマツダスタジアムのマウンドでぜひ大暴れしてほしい。
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