センバツ逃した浜田高ナインに目指してほしい、大先輩・梨田10・19の一振り
センバツの出場校が1月29日、決まった。
読者の皆様の地元はどんな結果だっただろうか。
黒柴スポーツ新聞の地元にも吉報が届いた。
購読している新聞には、球児たちの弾ける笑顔が掲載されていた。
選手、そして関係者の皆さん、おめでとうございます。
出場切符を手にした学校があれば、当然、行けなかった学校もある。
中でも島根県の浜田高校のことが気になって仕方ない。
報道によれば部員間で暴力を伴ういじめがあり、センバツ推薦を辞退したという。
残念というしかない。
浜田は今季から楽天で指揮をとる梨田昌孝監督の出身校でもある。
何か根本的な問題が?
それにしても、この種の事件は本当に後を絶たない。
本紙編集局長は高校野球経験者ではないだけに、想像するしかないのだが、何か根本的な問題があるのだろうか。
当事者のみか連帯責任か
また、毎回話題になるのが処分方法の是非。
「甲子園を目指して一生懸命やっていた(そして、当事者ではない)子がかわいそう」
もっともな意見だ。
一方で、高校野球はイメージとして「はつらつさ」「汗」「全力プレー」「人間形成」といったクリーンさが他競技以上に求められてきた。
その是非はさておき、これらを鑑みると、当事者でなくとも仲間が起こした不祥事は連帯責任、ということになる。
当事者が責任を負うのは当然だが、「彼、または彼ら」もまた心に一生傷を負うのだろう。
応援してくれた方々への最大の裏切りでもある。
つまり、部内外に影響する不祥事は人を不幸にするだけなのだ。
もちろん、いじめや理不尽なしごき、精神論の類などは論外である。
よって野球を愛する一人として声を大にして言いたい。
「仲間と野球を楽しんでください」
夏を赦す、ご一読を
この問題を考える上では、長谷川晶一氏の力作「夏を赦す」をおすすめする。
日本ハムで活躍した岩本勉氏の世代が起こした不祥事とその後が分かる。
丁寧に取材対象と関係を作っていく姿勢には好感を持った。
一方で、率直に言えばやりすぎと思える場面もあった。
ただ、そこまでしないと真実に迫れなかったかもしれない。
失敗を糧にすればいいと言うのは簡単。
だが、甲子園出場は下手をしたら一生に一度しかないビッグチャンスだ。
浜田高校ナインはセンバツ出場校決定のニュースをどんな思いで見聞きしたのか。
話は球史に残る一戦へ
勝負の世界は甘くない。
よって「まだ夏にチャンスがあるので気を落とさずに」などと軽々しく言えない。
それでも問題を反省した上で、再起を図ってほしい。
応援の意味で大先輩・梨田の魂の打席をつづってみよう。
1988年10月19日、川崎球場。
近鉄はこの日ダブルヘッダーで2連勝しないと優勝の芽がついえる。
だが第1試合は3-3の同点のまま9回を迎えた。
1死から淡口憲治が2塁打を放ち、俊足の佐藤純一を代走に送った。
続く鈴木貴久がライト前に運んだが、打球が良すぎた。
そして外野からの返球も素晴らしかった。
そして佐藤の脚も速すぎた。
この三つの要素が絡まり合い、佐藤は三本間に挟まれてしまった。
佐藤は必死で逃げたが、がら空きの三塁ベース目前で無念のタッチアウト。
ビッグチャンスを消してしまった佐藤は呆然、顔面蒼白である。
もう2アウト。
あまりの出来事に、誰もが鈴木が2塁にいることを忘れていた。
諦めなかった大先輩
ここで代打に浜田高校出身の梨田が出てきた。
プロ17年目、この日をもって引退する覚悟を決めていた。
つまり第1試合がこのまま終われば、最後の打席になる。
梨田は諦めていなかった。
万感の思いを込めて振ったバットは牛島和彦の球をとらえ、打球はセンター前へ。
鈴木が猛然とホームに突っ込んでくる。
タイミング的には微妙だったが、センターからの送球がやや3塁方向に逸れた。
鈴木はキャッチャーのタッチをかいくぐり、右手でホームを擦った。。
そしてなぜそこにいたのか分からないが、中西太コーチと本塁後方で抱き合った。
「近鉄勝ち越し! 梨田がやったあ!」
アナウンサーの興奮の実況に合わせ、テレビカメラは梨田の笑顔をとらえていた。
梨田はその裏、マスクをかぶった。
ロッテに2死満塁まで追いすがられたが、最後のバッターは空振り三振。
ウイニングボールが梨田のミットに吸い込まれた。
近年、おぜん立てされた引退試合が多いだけに、梨田の登場の仕方はかっこよすぎる。
何かは起きる、かも
野球通の本紙読者は10・19に何が起きたかご存知のはずなので、第2試合のくだりはがっつりカットする。
そして、頑張れば奇跡は起きる、という成功者がよくいう言葉も書かない。
梨田のプレーを引き合いにして何が言いたいかと言えば、粘れば何かが起きる「かも」ということである。
つまり、やりさえもしなければ何も起こらない。
梨田はバッターボックスに立ったから、奇跡のタイムリーヒットを放てたのだ。
間違いを起こさない人はいない。
大事なのはその後、どうするか、ではなかろうか。
日々失敗と成功を繰り返す社会人としても心がけておきたい心構えだ。
和田毅の母校でもある
1月29日付本紙「甘利経済再生担当大臣が使った矜持という言葉で思い出した杉内と涌井の涙」でも触れたように、編集局長はソフトバンクも応援している。
そんな意味では浜田高校出身、和田毅のホークス復帰は頼もしい限り。
くしくも松坂世代の松坂大輔(当たり前だが)とチームメイトになった。
けがを乗り越えた、あるいは乗り越える最中の選手である。
頼みの左腕、右腕として鷹の投手陣を支えてもらいたい。
特に和田の頑張りは浜田ナインへの刺激につながることだろう。
そんな意味でも和田には頑張ってもらいたい。
どうしても書きたかったこと
余談と承知の上で書く。
今まで食べた天丼の中で、島根県浜田市の漁港近くの店で食べたスーパー天丼が一番おいしかったです。
食通の方はどうにか情報を探り当てて食べに行ってください。