黒柴スポーツ新聞

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人的補償は突然に…ソフトバンク岩嵜翔が中日移籍

中日からソフトバンクにFA移籍した又吉の人的補償で、岩嵜翔が中日に行くことが決まった。ホークスファンとしては誰が指名されるかソワソワしていたのだが、個人的には岩嵜の移籍を惜しみつつ、又吉を取ったのだからこのくらいの痛みは仕方ないと受け止めている。年齢的にも又吉31歳、岩嵜32歳と、それぞれもうひと花咲かせてほしいところ。移籍選手は早めに結果を求められがちだから、岩嵜も又吉も2022年からの2年間が勝負だろう。

 

ソフトバンクからの人的補償で経験のあるピッチャー流出と言えば馬原孝浩を思い出す。寺原隼人オリックスから来ることに伴うものだった。馬原と言えばソフトバンクで一時代を築いたストッパーだ。故障明けとは言えプロテクトしなかったんだなとその時ちょっと憤慨した。どの組織でも功労者にはそれなりの待遇をしてほしいからだ。しかしプロ野球は契約の世界、そして実力の世界でもある。馬原は人的補償に驚きつつも、リリーフに転向してからは「チームに貢献できなくなったらいつやめてもいい」と考えていたという(Sportiva記事、人的補償を告げられた瞬間。馬原孝浩は一瞬戸惑い、寺原隼人は絶句した より)。


岩嵜もまた覚悟はしていたようだ。「さすがに驚きはしましたが、プロテクトから外れているんじゃないかということは覚悟していたので。そうなった場合に選んでもらえなかったほうが悲しいなと。選んでいただいたことに感謝してやりたい。どこに行こうがやるしかないので」(東スポ記事より)。この言葉の中で、悲しかったのがプロテクト漏れを覚悟していたこと。岩﨑はなかなかに派手な負け方をするから傷が深い。個人的には2021年、パリーグペナントレース結果を決定付けたのは岩嵜だと考えている。オリックス戦で宗にサヨナラの長打を食らったのだ。ソフトバンクはこのところオリックスがお得意様だったのだが、どうもこの勝利で決定的に、オリックスに自信を与えてしまったのではないか。宗は今年ブレイクしてオリックスの軸になった。対象的に岩嵜はプロテクト漏れし、中日に移籍。プロ野球はくっきりと明暗が分かれる、厳しい世界である。


確かに岩嵜が言うように、プロテクト漏れした挙句、中日から指名されなかったとしたら、それはそれで寂しい話。別に名簿が公表されるわけではないから、もし中日が別の選手を指名していたとしても岩嵜は気付かなかったかもしれない。個人は個人で頑張ればいいのだが、実はさほど組織が必要とみていないとしたら、やっぱり頑張り甲斐は少ないだろう。実は中日は2007年ドラフトで、岩嵜を外れ1位で指名したそうだ。この時はソフトバンクが当たりくじを引いたため、中日入りはしなかった。中日にしてみたら元々高い評価をしていたわけで、届いた名簿に岩嵜の名前があったから「じゃあ」となったのかもしれない。


岩嵜は移籍コメントで「たいした成績を残していない」なんて言ったが、球団記録72試合登板は立派な数字だ。まさに岩嵜が必要とされていた証拠である。けがに苦しんだ後、再び球速を出せるようになったのもすごいと思う。ピンチの時汗をびっしょりかいて、余裕がまったくない表情で投げる岩嵜を見守るのはものすごく疲れる。でも本来、抑えというのはそういう厳しいポジション。抑えて当たり前、打たれたら戦犯。7回や8回が主戦場だったが、中日はその経験込みで獲得したと思う。結果的に又吉とのトレードみたいになったが、両方とも新しいチームでぜひ結果を残してもらいたい。


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