黒柴スポーツ新聞

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意地で放った上林劇的同点タイムリー〜自分らしさを取り戻せ

ゴールデンウイーク終盤、昼間仕事しているうちに上林誠知が大活躍していたとは! 帰宅してからDAZN見て熱い同点劇を堪能させてもらった。ジーンとさせられた。上林、よかったなぁ。

このところソフトバンクは低調でこの日負けたら4カード連続の負け越し。この9連戦はここまで3勝5敗。そんなチームでも戦力は充実しており、ここまで上林が2軍から呼ばれることはなかった。ようやく4日に守備固めで初出場。そして5日に初スタメンだったわけだが5打数3安打4打点と大当たりした。うち1本はホームランであり、別の1本が9回裏の同点タイムリー。くすぶっていた男が塁上で「シャアっ!」と吠えていた。

「彼の意地だったりプライドだったりが、今日のヒットやホームランにつながったと思います」と工藤監督は上林の心中を慮った。そう、上林は次代のソフトバンクを背負うと期待されながら伸び悩み、低迷していた。今年こそはと挑んだはずだが開幕から2軍暮らしを余儀なくされた。腐ってしまってもおかしくない。しかしそうではなくしっかり備えて1軍に上がってきた。まだまだ高めの球の見極めなど粗い部分はあるが、気持ちの入ったスイングをしていたように思う。意地で仕事をすることを否定する人もいるだろう。仕事に私情を挟むのはスマートではない。それは分かるがこのやろう、何くそ!という思いが好結果を招くこともある。今日の上林はその典型だと思う。

多かれ少なかれ1軍の選手はそういう思いをして1軍に定着しているのだろう。だからこそ事実上この日が開幕日である上林が結果を出したことを、チームメイトは喜んでいた。土壇場で追いついたこともうれしいけれど、それ以上に上林の悔しさが晴らされたことをチームメイトは喜んでいたに違いない。何とか同点のランナーとして出塁をと意気込んだ松田宣浩が粘って四球をゲット。そしてチャンス拡大というミッションを粛々とこなして四球を選んだ川島慶三もさすが。ネクストバッターズサークルには上林が見えたから、ここで上林に回ったらドラマだよなと思っていたら、本当に打席が回ってきた。しかし相手は守護神・松井裕樹。2ストライクと追い込まれてしまった。ストレートか、伝家の宝刀スライダーか。確率2分の1でスライダーに反応。おっつける形でレフト方向に運んだ。セカンドランナーが生還すると上林は両手を突き上げた。ベンチ前には先輩後輩が飛び出して大盛り上がりだった。そりゃそうなるわな。

この日は工藤監督の誕生日。結局サヨナラ勝ちにはならなかったが上林の意地の同点タイムリーはよいプレゼントになったことだろう。同点劇のお膳立てとして、中継ぎの踏ん張りも見逃せない。特に岩嵜翔は8回に配置転換間もない。今日もランナーを出してヒヤヒヤしたが、前回登板とは違って外角低めに鋭い球を投げ込めていた。岩嵜は岩嵜で階段を登っている途中。モイネロも森唯斗が復帰するまで9回を任されそうだ。それぞれが新しい持ち場で結果を出そうとしている。そのことこそが工藤監督にとって最良のプレゼントのような気がする。

もう一つ気付いたのは上林への応援。スタンドには上林の名前を表した手作りのボードや、上林の応援タオルを掲げているファンの姿があった。しばらく2軍にいた上林の視界に入ったら感激したことだろう。自分は忘れられていないのだ、と。選手層の厚いソフトバンクで上林が常時試合に出るためには、コンスタントに結果を出さねばならない。次こそは勝利に結びつけてお立ち台に上がってもらいたい。

復活ののろしとなる今季第1号ホームランは上林独特の、リストを生かした一撃だった。それでレフト方向にも長打が出れば以前のような活躍が期待できる。そう、何より自分らしさを取り戻してくれたことがうれしかった。柳田ともグラシアルとも栗原とも違う。上林は上林。走攻守、バランスの良さが上林の素晴らしさ。上林が活躍することで真砂や栗原には刺激になることだろう。遅れてきた男がソフトバンクにどんな効果をもたらすか。ゴールデンウイークが明けてからの楽しみができた。上林の躍動を期待しよう。


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