黒柴スポーツ新聞

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いま何をすべきか理解する~川島慶三の四球を起点にソフトバンク打線が爆発

日本シリーズ期間中、試合がなかった11月23日は第1戦、第2戦を報じるスポーツニュースを見て試合結果を咀嚼していた。そこで気付いた。第2戦、川島慶三は意図した走塁をしていたんだな、と。

 

巨人の先発は左腕の今村。左殺し川島慶三が2番に起用された意味は十分理解できたが、川島自身、己れが何を期待されているのか、何をしなければならないのか分かっていた。先頭の周東が倒れるも川島慶三は四球を選んだ。この時点で川島慶三フリークはもうご飯がおかわりできる態勢だ。そこへ柳田悠岐がセンター丸佳浩を越える力強いライナー。遠慮がちにセカンド手前まで進んでいた川島は丸が打球に追いつけないと見るや、明らかに生還する意思を持って二塁を蹴ったように見えた。丸から内野手経由でバックホームされたが、川島は難なくホームを陥れた。その瞬間、川島は伸び上がるように、跳ねるように立ち上がった。そう、川島がやりたかったのは先制点を取ることだったのだ。

 

ソフトバンクがやりたかったのは先制点を取り主導権を握ること。逆に巨人は初戦を落としているわけで、絶対に先取点を与えてはいけなかった。別に巨人の中継プレーが乱れたわけではないが、かといって、何が何でもアウトにするぞという気合も感じられなかった。川島慶三は先制点を取る意味を理解しているからこそ丁寧に四球を選び、かつアグレッシブな走塁をし、ホームインを伸び上がって喜んだ。私にはそう見えた。まさにチャッカマン川島。その後ソフトバンク打線が火を吹き、終わってみれば13得点。その起点はベテランの選んだ四球なのだから、もう川島慶三フリークはお腹いっぱいなのだった。

 

巨人との差は何なのか。別に巨人のプレーが雑だとは思わない。しかし、意識の高さはソフトバンクが数段上に見える。例えばグラシアルの走塁。ライト前ヒットで一塁から一気に三塁に行く。この姿勢は堀内恒夫若松勉も誉めていた。グラシアルは平気でヘッドスライディングするが、過去ここまで献身的な走塁をした外国人選手は少なかろう。クライマックスシリーズでロッテ守備陣のミスにつけこみヘッドスライディングで同点とした果敢な走塁は、あなたツーランスクイズした時の金足農業の選手ですか?と言いたくなるほどカッコよかった。また、守備面では第2戦で坂本勇人二塁打になりそうな当たりを飛ばすも素早い返球をされて自重し単打に封じられた。返球したのは柳田悠岐だったか。目立ちはしないが、強いチームはこうした攻守のそつのなさが特徴だ。今それぞれが何をすべきか理解しているからこそ、チームが機能している。川島慶三の四球&果敢な走塁はまさにその象徴に思えた。


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