黒柴スポーツ新聞

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炎はいまだ燃え尽きず~内川聖一が10月に2軍戦でホームラン

もう10月である。早い時には9月にリーグ優勝が決まることもある。2020年は開幕がずれ込んだから、ここから約30試合、ようやく終盤戦にさしかかったところだ。私は内川聖一のことが気になっていた。内川はいまだに1軍に上がらない。このまま引退してしまうのか。そんなことを考えていたら内川が2軍戦で打ったホームランの映像を見つけた。

 

かつて、2000本安打達成者が10月に2軍戦でホームランを打ったことがあるのだろうか。私は内川がダイヤモンドを一周してダグアウトに戻る様子を見て、ああ、内川はまだ諦めていないのだとほっとした。このホームランは工藤監督の耳にも入るのだろうかと考えた。同じように2軍で調整していたバレンティンが1軍に戻ったが、9月の打率は内川の方がよかったはずだ。しかしバレンティンが選ばれた。外野を守れるからという理由もあるらしい。しかしバレンティンの守備力は彼を1軍に上げる理由にふさわしいと思えない。

内川が他人と自分を比べているかは分からないが、なぜおれじゃないんだとは思っているような気がする。なかなか1軍に上がらない選手がそのまま秋を迎えれば、シーズン終了後どんなことになるか想像するのはたやすい。内川がそんな若手と違うのは、圧倒的な実績があり、やめ時を自分で決められるということだ。ただし、戦力外通告をされなければ、だが。

さすがの内川も、9月が終わり先にバレンティンが1軍に上がった時点でもはやこれまでと思ったのではと想像する。だからこそ私は内川がもう昇格を諦めたのではないかと心配だったのだが、あのホームランを見た時、まだ炎は消えていないと思えた。ホークスの歴史に残るクライマックスシリーズ4戦連発、そして日本シリーズ山崎康晃から放った起死回生の同点ホームラン。私は数々の内川のホームランに勇気づけられてきた。10月3日の2軍戦でのホームランは生涯記録には含まれないのだが、心に残る一発だった。逆に何か吹っ切れてしまって、踏ん切りがついたりしなければいいなとさえ思う。一本ホームランが出たから何?という意見もあろう。しかし汲んでもらいたいのは内川の諦めない姿勢。名球会入りしたバッターがいまだファームの試合に出て、野球と向き合っている姿勢である。

同じ日のナイターで、セカンドにヘッドスライディングした中村晃が脚を傷めた。大事をとって代走が送られたが中村晃が守るポジションの一つが一塁。そう、内川が守っていた所だ。中村晃は外野も守れるから内川が上がっても中村晃の代役にはなれない。しかしまるまる1試合でなければ、一塁を中村、内川の併用で乗り切る手もあるのではないか。そう、内川を試合終盤の代打で使うのだ。

私はまだまだ内川の打席が見たいが、このままあやふやな立ち位置なら、1軍に上げることはない、と内川に告げるべきだと思う。それで内川が引退するのか、現役続行を模索して移籍先を探すのか、内川に選ばせたらよい。これは2019年の鳥谷敬を思い起こさせる。私は阪神ファンでもないのに、鳥谷の貢献度を考えたらタイガースのユニフォームのまま引退してもいいかなと思えた。が、鳥谷は現役続行を選んだ。そして鳥谷が素晴らしいのはマリーンズのユニフォームを着て1軍の試合に出ていることだ。内川が望むなら、私は他球団のユニフォームを着るのもありな気になっている。もちろんホークスのユニフォームのまま現役を続けるのが一番だが。神がかり的に勝負強かった内川のバッティングはもう見られないのか。まだシーズンは約30試合ある。内川が1軍に上がる機会があることを、私は切に願っている。


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