12年目のライジングサン~ソフトバンク二保旭が初の開幕ローテーション入り
ホークスの二保旭がついにチャンスをつかんだ。12年目で初の開幕ローテーション入り。育成出身ということもあり、ついつい応援したくなる。そしてもう一つ、私には二保旭を応援したい理由がある。
ホークスファンは覚えているだろうか。2019年シーズンオフ、二保旭はささやかな「抵抗」をした。
「球団が先発として見ているのか、中継ぎとして見ているのか、はっきり聞きたかった。どちらで評価されているのか分からなかった」
年俸2000万円の現状維持を一旦保留したのだが、私はそこに二保の意地を見た。2019年、二保は先発として起用された。だがその試合は二保のために用意されたというよりは、いわゆるローテーションの谷間。「困った時の二保」ではなかったか。おれは中継ぎなのか、先発なのか。完全にローテーション入りしたピッチャーならば次の登板がだいたい読めるが二保はそうじゃない。そんな調整の難しさもあっただろうが、二保の本意はそこではなかったのではないか。おれは中継ぎなのか先発なのか。評価軸をはっきりしてほしい。その一心だった気がするのだ。
契約は無事まとまり、二保の年俸は200万円上がった。中継ぎ待機、中継ぎの負担を減らすために長いイニングを投げようとしたこと。そのあたりが評価されたという(full-count2019.12.10記事より)。その記事の締めくくりに筆者の藤浦一都さんは「中継ぎの気持ちが分かる先発」という言葉を使っている。別にホークスの先発陣が中継ぎの気持ちを分からないとは言わないが、やはりやったことがない人には本当のところは分からない。二保が長いイニングを投げようとしたのは、中継ぎのしんどさを理解しているからにほかならない。
二保がカッコいいのは有言実行した点だ。契約更改時に二保はこう言った。
「来年は先発1本でやります」(2019.12.10日刊スポーツ記事より)
二保は確かにそう意思表示し、本当に開幕ローテーションの一角に食い込んだ。2019年はローテーションの谷間、乱暴な言い方をすれば組織の都合で働いた。組織の論理と選手の意向は必ずしも一致しない。チームとしてはどうしようもないから二保に白羽の矢を立てたわけだし、よく言えば二保にチャンスを与えたとも言える。だがリアルに言えば数合わせであり、消極的選択だったことは否めない。だから同じ先発であっても、2020年に二保が立つ先発のマウンドはひと味もふた味も違う輝きを放つ気がする。その働き場所は二保が自らの手でつかみとったものなのだから。私が二保旭を応援したくなる一番の理由はそこにある。