黒柴スポーツ新聞

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複数ポジションの可能性と危険性~ソフトバンク栗原の起用法に注目

6月1日の日経新聞に「武田、社内業務掛け持ち」という記事を見つけた。期間限定ではあるが、武田薬品工業では社内他部署の業務を一定の労働時間を割いてやってもよいというものだ。このところのコロナ対応で時差出勤していた黒柴スポーツ新聞編集局長は思い知った。職場がさまざまな人の力で回っていたことを。そんなことは当たり前なのだが、スペシャリストがいない時は助っ人で何とかするしかなかった。だからこそ、自分の仕事プラスアルファでやれることを増やす、いわば守備範囲を広げることはとても大事だなと思った次第。もれなく忙しくなるというオチもあるのだが。

 

ちなみになぜこの記事に目が止まったかというと、先日、full-count記事「ショート周東、ライト西田!? 紅白戦での“奇策”にある工藤監督の狙いと願い」を見たからだった。それぞれ経験が乏しいポジションに周東や西田が挑戦しているという。多くの選手たちに、複数のポジションを守れるユーティリティ性を持たせ、起用の幅を広げるため、との意図があるようだ。本職のままスタメンの座を勝ち取れたら一番よいが、そうできるのは一握り。しかしあれもできます、これもできますと上手にアピールできれば選手は働き場を得られる。指揮官も戦力を有効活用できるというわけだ。理にかなっている。特にソフトバンクは2019年シーズンにけが人や離脱者が続出。人繰りに苦労した経験がある。危機管理の意味でも複数ポジションは有効なのだ。

 

ソフトバンクでは、栗原陵矢が打撃でアピール中という記事もあった。栗原の本職は捕手。だがそこには甲斐拓也という強敵がいる。売りは甲斐キャノンと呼ばれる強肩だ。栗原はそれに対抗する持ち味を発揮しないと正捕手にはなれない。栗原は打撃をアピールしつつ、守備では外野も視野に入れているらしい。まず試合に出るならば、必ずしも捕手だけでなくともよい。チームとしては栗原を有効活用できればいいのだ。

ベースボールコレクション/201905-H031 栗原 陵矢 R
 

 

だが、黒柴スポーツ新聞編集局長としては一つ書いておきたい。複数ポジションには落とし穴がある。つまりスペシャリストになる可能性は減るのだ、と。甲斐は本職の捕手として試合に出続ける。だから栗原との経験値の差は詰まらない。栗原は試合に出ることを模索しつつ、やはりキャッチャーの練習なり勉強をしなければ、キャッチャーとしてもそこそこ、外野手としてもそこそこ、悪く言えば中途半端な、特長の薄い選手になってしまう危険がある。スペシャリストになるにせよ、ユーティリティープレーヤーになるにせよ、中途半端が一番恐ろしい。複数ポジションは、できれば幅を広げる意味で取り組みたいものだ。果たして栗原陵矢は2020年、どんな働き場所をつかむのか。可能性は十分ある選手なだけに、起用法に注目しよう。

ちなみに前回は「打力を生かせ」という論調で書きました。よろしければこちらの栗原関連記事もご覧ください。

tf-zan96baian-m-stones14.hatenablog.com


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