黒柴スポーツ新聞

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トータルでまとめればいい~桑田真澄の理想の投球数とは

一つミスをしたら引きずる方だ。大事なのはその次、なのに。一つ一つ丁寧に作業をするのは長所だとは思うが……。そんな自覚があっただけに、偶然見かけた桑田真澄のインタビュー記事(「逆風を楽しむ野球人生だった。-桑田真澄」文・石田雄太さん、Number PLUS September 2009 完全復刻版 桑田真澄に収録)は、なるほどなと腑に落ちた。ピッチャーにとっての理想は全員三振の81球か、全員打ち取っての27球なのか。桑田真澄の答えは「130球」だった。

Number PLUS 桑田真澄 完全復刻版 (Sports graphic Number plus)

Number PLUS 桑田真澄 完全復刻版 (Sports graphic Number plus)

  • 発売日: 2009/08/07
  • メディア: ムック
 

 

理想のピッチングは130球。桑田はこう解説していた。
だから、方法は一つじゃないということです。たとえば、三振が取れる日は三振を多く取ればいいし、コントロールが冴えている日は、コーナーを突いて打たせて取ればいい。その日、その日によって、自分のピッチングスタイルを変えていく。もちろん、完璧な130球を投げることはできませんけど、ミスを次の1球でカバーしながら、130球で完璧な試合を作ることはできるんです。それは長年の経験から身につけたいくつもの引き出しを自由自在にあけて、こういう配球もある、こういうフォームもある、こういう投球術もあるというふうに、選択肢を持って、ピッチングをしたかったということなんです

心の野球 超効率的努力のススメ (幻冬舎文庫)

心の野球 超効率的努力のススメ (幻冬舎文庫)

  • 作者:桑田 真澄
  • 発売日: 2015/04/10
  • メディア: 文庫
 

 

深い。何球で投げたいか、という問いに対する回答はピッチャーの気質を端的に表しそうだが、この桑田の答えはいかにも、と言いたくなる。無理をせず、合理的。クレバー。桑田真澄のピッチングそのものだ。だがピッチングなんかする機会のない一般人にも当てはまるような考え方だと思った。特に私は冒頭に書いたようにミスを引きずりがちだから、トータルで考えればいいんだ、と割りきれた。「完璧な130球を投げることはできない」と桑田が言っていて救われた。言われてみたらその通り。完璧そうに見える人でも実際ミスをしている。ミスをしていないように見えるのはリカバリーやその後のフォローが上手なのだ。「ミスを次の1球でカバーしながら、130球で完璧な試合を作ることはできる」とはそういうことだ。そう、トータルでうまくやればいいのだ。

桑田真澄 ピッチャーズ バイブル (集英社文庫)

桑田真澄 ピッチャーズ バイブル (集英社文庫)

  • 作者:石田 雄太
  • 発売日: 2007/09/20
  • メディア: 文庫
 

 

アラフォーともなると若いときのような球速は出せなくなるかもしれない。だとしてもアラフォーには経験がある。桑田が言っていた「引き出し」だ。これを桑田が言っていたように「自由自在にあける」ことがポイント。必要な時に必要なケアをする。驚いたのは桑田が「こういうフォームもある」とフォームを変える意識を持っていたことだ。プロ野球のはピッチャーともなればいつどんなときでも自分のフォームを崩さず投げることが理想とばかり思っていた。そう、時には投げ方すら、変えていい。大事なのは結果を出すこと。フォームは手段でしかないのだから。


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