黒柴スポーツ新聞

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目の前のアウトを取る~ソフトバンク高橋純平の思考に学ぶ

Sportiva高橋純平のインタビューが紹介されていた。ホークス髙橋純平「野球を苦しいと感じていた」。その重圧をなくしたコーチの助言、という記事だ。個人的に参考にしたい、真似したい前向きさがあったので、今日はこちらを深掘りしてみたい。

 高橋純平は2015年のドラフト1位。しかし即結果が出ることはなく、4年目の2019年、ようやく才能が開花した。コンディションによるものはあったのだろうが、それまでの3年間とは何が違ったのか。確かに気になっていた。ズバリ記事に書かれていたのは3年目途中にもらった、コーチのこんな言葉だった。

「お前がドラフト1位で入団したことなんて、もう誰も覚えてないよ」

 一見乱暴な言葉に見えるが高橋純平は「プロは入ってしまえばドラフト1位も2位も関係ない世界なので、それに気づくことが出来たんです」と振り返っていた。それまではずいぶんと重圧を感じてしまっていたようだ。ファンからの期待に応えねば。その思いと結果の間でもがき苦しんだことだろう。「野球を楽しむことよりも、苦しいと感じることのほうが先に来ていた気がします」とも述べている。

2019年のソフトバンクは投手陣が総動員され、若いピッチャーもどんどん起用された。高橋純平もようやく1軍の戦力になり、中継ぎをすることになった。まずはそのイニングに全力を尽くす。目の前のバッターに集中する。それがよい結果につながったのだそうだ。「一球、一球全力で投げられたことが良かったです。それまでは先発を見据えて勝手に逆算してしまっていました。例えば、5イニングは最低でも投げたいというように思っていたり。1イニング、その一人の打者に対して全力でどう抑えるかという中で、ストレートの球威が戻ってきたように思います」

中長期的な仕事をしていると、息切れしないよう、無意識に力をセーブしているのかもしれない。それはある種の自己防衛であり、自分の力を過信しない、オトナの対応でもある。しかし一投一打に人生がかかるプロ野球の世界で、そんなに自分のペースで事が進むはずもない。まずはそのアウト一つを取ることに最善を尽くす。裏返せば、そのアウト一つ取れないようでは先はないのだ。こうした思考の結果、高橋純平は球威を取り戻した。高橋純平は4年目にしてうれしいプロ初勝利。なんと翌日にも勝ち星が付いた。新人以外での、プロ初勝利から2日連続の勝ちはプロ野球史上初。野球の神様からの粋なプレゼントだった。

個人的には高橋純平が先発する姿が見たい。本人もゆくゆくは……と思っているのかもしれないが、2020年の先発ローテーションには高橋純平の名前はない。昨年同様、中継ぎでの登板だろう。甲斐野が離脱していることもあり、高橋純平の出番は「後ろ倒し」で試合の終盤になってくるかもしれない。まずは持ち場で結果を出してもらいたい。それを続けることが高橋純平のブランド化になる。結果も出さずに先発をやりたいんです、と言うよりよっぽど説得力がある。まずは目の前のアウト一つに集中する。中長期的な目標を達成するためにはその積み重ねなのだ……というごく当たり前のことを高橋純平のおかげで再認識できた。私も欲張らず、できることから一つ一つ丁寧に取り組んでいこう。

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