黒柴スポーツ新聞

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伝えるという強い意思~DAZN、がんから復帰の阪神原口サヨナラ打インタビュー込みハイライト

大腸がんから復帰の原口文仁がサヨナラヒット、という見出しをスマホで見つけて、ああ、よかったなと思った。私は阪神ファンではないけれど、ひたむきに頑張る人が大好き。サヨナラ勝ちはただでさえ興奮する状況だが、その主役は病からの復帰だから、甲子園は盛り上がったに違いない。

 

どんな試合だったのかな、とDAZNでハイライトを見てみた。すると「11:01」の表示が。それってハイライトなの?という長さ。いつもは3分とか5分程度だから倍以上の長さだ。薄々予想はついたが、やはり最後は原口文仁のヒーローインタビューが収容されていた。

 

阪神タイガース 選手フォトタオル (94原口)

阪神タイガース 選手フォトタオル (94原口)

 

 

 

そう、DAZNではゲーム前からヒーローインタビュー後まで流してくれるため、ファンにはたまらない。もちろん、ひいきのチームが負けたら敵チームのヒーローインタビューはイライラしてしまうので見ずに消すこともある。だが解説者が試合結果から今後の展望まで語ってくれるので、なるべく見るようにはしている。

 

 

 

きょうの阪神戦のハイライトに長々と原口のヒーローインタビューを入れたのはさすがだ。何が面白いのか、何が求められているのか、何を伝えたいのか。通常の倍以上の長さのハイライトになっても、DAZNとして伝えるべきものはこれなんだ、という編成だと感じられた。

 

BBM2016/2nd ■レギュラーカード■362/原口文仁/阪神

BBM2016/2nd ■レギュラーカード■362/原口文仁/阪神

 

 

 

私は紙媒体育ち。決められた分量の中で結果を出すことを求められてきたし、時間やスペースの制約がある中で結果を出すことに快感すら感じてきた。だが、ネットの世界はスペースの制約が紙より圧倒的に少ない。恐るべき自由度だ。そこを羨ましく思うのだけれど、じゃあ分量を自由に決められるから何でも面白くできるか、というとそれは違う気がする。

 

要は編集者としてきょうはこれを伝えるんだ、という意思だ。それがなければいくら環境がよくても力強いコンテンツにはならない。DAZNではゲームハイライトの長さを自由に決められるのかもしれないけれど、それでも定番の長さというのはある。そこを度外視してもきょうは原口なんだ、打った場面だけじゃなく、「僕の活躍がそういう力(病と向き合っている方々への力)になるとすれば、僕も生きて野球をやれる意味があると思うので、さらに頑張っていきたいと思います」という原口の生の言葉が一番のコンテンツなんだ、という意味合いが伝わるハイライトだった。

 

これだけ情報発信が簡単にできる時代なのだから、有力なメディアの編集者は違いを、個性を見せなければダメだ。コアなファンは一家言持っており、解説者顔負けの鋭い見立てをする方もいる。何をどう伝えるのか、勝負の分かれ目や審美眼がますます問われる時代になっていく。いつまでも「スペースがないから」「時間がないから」なんて理由でありきたりな編集をしていたらどんどん淘汰されていく。変にとがりすぎる必要はないが、何を伝えたいかが分かるコンテンツしか生き残らない。私はそこに不安を感じるのではなく、これを伝えたいんだというメッセージを込める、これを伝えたいんだという強い気持ちを持つことで編集者としての腕を磨いていきたいと考えている。


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