黒柴スポーツ新聞

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やりたいこととやれることは同じとは限らない~ソフトバンク牧原大成は何番向きなのか

「そこは打ってもヒットにならない」

初球から内角の厳しい球に手を出してファウルになった牧原大成に、解説の松中信彦が注文を付けた。前々から思っていたことをズバっと平成の三冠王が指摘してくれた。

 

「牧原は低めの球が好き」

松中信彦は分かっている。また、牧原大成の持ち味が積極的な打撃であることも知っている。だから内角をいかに我慢するかがポイントだと解説していた。

 

開幕から1カ月がたつ頃だったか、牧原の出塁率が気になって何の気なしにスポナビのアプリから個人成績を見てみた。2割3分ちょい。思わず「えっ!」と声が出た。それで1番バッターは厳しいな。そう思っていたら最近は9番に変わった。

 

牧原はそれについて切り替えができているだろうか。1番バッターは今のところ、ピッチャーの調子や球種の確認がてら、球数を投げさせることが求められる。しかし牧原は初球から思いきっていくタイプだから1番向きとも言えない。むしろ下位ながら積極的に打ってくるのはピッチャーからしても嫌だろうから9番でもよいと思う。

 

彼は相変わらずあの内角低めを打ちにいっている。よほど好きなのだな、と思う。しかし牧原がヒットにしているのはどちらかと言えば外角の球のような気がする。だとすれば、打ちたい球と打てる球は違うのだな、と思う。松中信彦はもっと狙うゾーンを上げるよう求めていた。

 

私は牧原に物足りなさを感じつつもすごく彼の気持ちが分かる。打ちたい球が来たら振ってしまうのだ。自分は打てると信じているからだ。しかしそれを貫けるかどうかは結果次第。打てなかったのだから牧原はそろそろ切り替えねばならない。もしくはもう頑固なまでに積極さを売りにして1番バッターは目指さない。どちらかだと思う。

 

チームとしても牧原に何を求めているのか伝えた方がいい。1番バッターに定着してほしいなら牧原は初球からガンガンいくスタイルを変えねばならず、打ちにいく球も変える必要がある。私は何の権限もないのだが、積極的に打てるのも彼の良さだから、牧原には下位から1番につなぐ役割でもよいと思う。ただし内角低めでかなり打ち取られている事実はしっかり受け止めてもらいたい。

 

打ちたい球と打てる球が違った場合、どう折り合いを付けるか。練習して打てるようになるか、見極めて振らないようにするか。他の球を打てるようになるか。対処の仕方は人それぞれだ。私は野球をやらないけれど、仕事に置き換えて考えるとすごく悩む。やりたい作業だけやれるわけではない時、どう折り合いを付けるか。すごく悩ましい。

 

結局、やりたいことをやるには結果を出すしかない。そのためにもまずは打てるゾーンを広げるしかない。今までやらなかったような分野にもちょっとずつ手を出していく。その中で自信を付けて、もう一度やりたいけど難しいコースの球を打ちにいく。その繰り返ししかないように思う。

 

果たして牧原は内角低めを捨てるのか。ひたすら振り続けるのか。1番を打つのか9番を打つのか。内外野守れる貴重な選手であるだけに、もう一皮もふた皮もむけてさらにレベルアップしてもらいたい。


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