黒柴スポーツ新聞

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心のスタミナがあってこそ~13試合無失点のソフトバンク甲斐野と危険球降板の武田翔太

5月2日、DAZNソフトバンク戦中継で解説の若菜嘉晴がルーキー甲斐野央をこう評していた。

「体も心のスタミナも強い」

ハートが強い、という表現は聞いたことがあるが、心のスタミナというフレーズが面白いなと思った。

 

いくら技術があってもそれを駆使できなければ結果を出せない。そのためにもまずは心身共に充実していなくてはならない。甲斐野はいま勝ちゲームの中継ぎに起用されている。先発の思いを守護神らへとつなぐ。強い気持ちが求められる。

 

中継ぎ投手 ---荒れたマウンドのエースたち

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きょうは特別きつかったと思う。先発が大竹だったからだ。4月からローテーションの一角として好投しながらも勝ち星に恵まれなかった。打線の援護が少なかったのだ。またもやソフトバンク打線は大竹の援護に四苦八苦。この日も初回の今宮健太のタイムリーのみにとどまっていた。わずか1点リードのまま甲斐野は大竹から8回、バトンを受け継いだ。

 

それが先頭の茂木栄五郎を四球で歩かす。前回登板でデビューからの無失点試合を12に伸ばした甲斐野。その日本ハム戦では暴投で失点するところだったが大きく弾いた甲斐が素早くフォローしてセカンドランナーの生還を許さなかった。楽々と記録を伸ばしたわけではなかった。今回もまたランナーを背負ってしまった。

 

甲斐野の武器は直球だ。それが威力を発揮して、続く田中和基は送りバントを2度空振り。ヒッティングに切り替えると打球は甲斐野の元へ。ピッチャーゴロ。よっしゃ、ダブルプレーだと思った矢先、甲斐野のグラブからボールがこぼれた。あわてて甲斐野は拾ってかろうじて一塁で田中をアウトに。結果的には送りバント成功と同じ形になった。

 

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だが次は強打者の浅村栄斗。レフト前にタイムリーになりそうな打球を打たれたが、サード松田宣浩が横っ飛び。打者走者をアウトにはできなかったが、間一髪のプレーだった。これでランナーは一、三塁。続く4番の島内は強い当たりのセカンドゴロでダブルプレーとなり、甲斐野はまたもや無失点で切り抜けた。

 

ピンチの際、甲斐野の目つきが鋭かったのが印象的。集中力を高めていたのだろうが、この辺りが若菜が言う心のスタミナか。絶対抑えるという強い気持ちを感じた。

 

気持ちだけではどうにもならないこともある。一方で気持ちがあれば何とかなることもある。心のスタミナがなければ、ついつい弱気になることだろう。それではいくら力があってもそれを発揮することはできない。

 

甲斐野はこれからもしびれる場面での登板が続くことだろう。きょうは大竹の勝ち投手の権利を守ることができたがこの先思い通りになることばかりではあるまい。チームメイトの勝ち星を消したりチームに黒星を付けることがあった時、甲斐野の心のスタミナの真価が問われることだろう。

 

野手以上に投手は結果がすべて。抑えるか、打たれるか。それのみだ。逆に言えばランナーを背負ってもこの日の甲斐野のように失点しなければよいとも言える。プロジェクトが順風満帆であればいうことないが、紆余曲折あっても終わりよければすべてよしという考え方もある。甲斐野ばりに絶対抑えるという気持ちがあれば何とかなるかもしれない。

 

強い気持ちといえば中継の終わりに若菜は武田翔太にも言及していた。武田は前回登板でウィーラーの頭部付近に投球し、危険球により降板した。アナウンサーが、武田は内角を攻められますかと尋ねると若菜は「それができなきゃ投手は勝てない」と言い切った。そして、そういう組み立てをするのはキャッチャーの責任だとも話していた。3日に先発する武田にとっては心のスタミナが問われる登板。甲斐の組み立てと共に注目したい。


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