黒柴スポーツ新聞

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やさしい目つきを大切に~平成の終わりに山際淳司を読む

ゴールデンウィークに時間があったら、と本を買っておいた。久々の野球古書漁りだ。平成最後の的なフレーズは食傷気味で、自分は使うまいと意固地になっていたが、素直に平成を振り返りたい気持ちになり、そんな本はないかと探してみた。そして山際淳司を選んだ。昭和から作品を残しているが、私にとっては平成に出会った素晴らしい書き手だったからだ。

 

この人の着眼点には毎度うならされる。淡々としつつ深さの感じられる筆致も好きだ。それをうまく表現することができなかったのだが、なるほどなという表現に出合った。購入した「ウィニング・ボールを君に」の解説で読んだ海老沢泰久のものだ。「やさしい目つき」と書いてあった(画像は2016年発売のもの。私が購入したのは1999年発行のものです)。

 

 

 

このブログは表現力のトレーニングを兼ねて書いている。また、実験と実践の場である。今、独自の視点で他者との差別化を図ったらいいのか、文章力を鍛えたらいいのか、考えを巡らせている。この先のちょっとした目標探しといったところだ。

 

その過程で出合った「やさしい目つき」。これを今後意識してみようと思う。やさしい目つきを持っていなければ、何気ない話には目が向かない、と海老沢泰久は書いていた。

 

エピソード自体が面白いのだから、文章にそこまで凝らなくともよいと山際淳司が覚悟を決めているかのようだ、という海老沢泰久の見立ても興味深い。私は調子に乗って言葉遊びをしてしまう癖があるのだが、そうなると味付けが濃くなる。山際淳司の文章は「透明な水のような文章」と紹介されていた。そう、透明感があるのだ。

 

スローカーブを、もう一球 (角川文庫)

スローカーブを、もう一球 (角川文庫)

 

 

 

もちろん私と山際淳司は違うから、文章も違う。あんなクリアーな文章が書けたらなとうらやましくも思うが、自分らしさも大切にしたい。その点、着眼点については山際淳司に通じるものがあるんじゃないかと勝手に感じている。

 

ダグアウトの25人

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今はスマホさえあればかなりの試合が見られるし、結果もすぐに詳しく分かる。だからこそ、どこに、誰に注目するかが腕の見せ所だ。有名か無名かは関係ない。今回買った「ウィニング・ボールを君に」では王貞治イチロー松井秀喜も出てくるし、かなりの野球好きでも顔が浮かぶかどうかレベルの選手も出てくる。山際淳司は有名選手でも独自の分析をするし、無名戦士でも丁寧に光を当てる。そうやって事実を立体的に紹介する。このあたりはぜひ見習いたい。

 

江夏の21球 (角川新書)

江夏の21球 (角川新書)

 

 

 

私がひいきにしているソフトバンクは今シーズン、主力が相次いで離脱した。それは不幸なことなのだが、コツコツ努力してきた準レギュラーたちに光が当たっていること自体はうれしい。彼らのことをブログで書けたこともよかった。まだまだシーズンは始まったばかりなのだが、2019年に優勝することができたらそれは、この苦しい時期を支えた面々のおかげだと思う。だいぶ気が早い話ではあるが。

 

やさしい目つき。平成の終わりに、備忘録として書いておこう。


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