黒柴スポーツ新聞

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ソフトバンク日本シリーズ3連勝を呼び込んだ切り札たち

ソフトバンク日本シリーズで広島に3連勝。日本一に王手をかけた。マツダスタジアムで勝つのは容易ではないだけにこれ以上ない展開。好調の要因は投手も含めた守備力と見ている。



この点は第5戦、AbemaTVで解説した斉藤和巳が指摘していた。例えばヤフオクでは第4戦で初回に丸が長打を放つも、本塁を狙った菊池涼介を柳田→明石の見事な中継で本塁寸前で刺した。第5戦では野間に外野へ痛烈な打球を打たれるも、上林誠知が本塁へダイレクト返球。試合がその後シーソーゲームになったことを考えると、勝利打点並みの貢献だった。

また、甲斐が日本シリーズ盗塁阻止率100%と強肩を発揮。「甲斐キャノン」はガンダムファンまで含め全国区になったのではないか。今や守備でお金を取れる選手も少ないが、甲斐の強肩だけでもスタジアムに見に行く価値がある。

CSファイナルステージで西武と壮絶な打撃戦を展開しただけにどうしても強力打線に目が行きがちだが、やはり今季は中継ぎ、抑えの奮闘あっての結果だ。第二先発というジャンルを確立しつつある武田翔太、複数回投げられる石川柊太、左対策の嘉弥真新也や守護神の森唯斗。モイネロも高橋礼も頑張っている。ただ単に数がそろっているのではない。出る場面が決まっているのだ。この継投パターンが決まると見ていてすごく楽しい。

ソフトバンクが勝つとすぐに金満球団などと揶揄される。これは単に表面しか見ていない。確かに年俸が高い選手はいる。しかしそれは球団と選手の合意によって成り立っているから周りがとやかく言う問題ではない。球団による投資と見ることもできる。

ユーティリティプレーヤーを複数抱えるのも投資と言える。リスク管理でもある。この日本シリーズはその投資が生きている。例えば明石健志。第5戦は柳田悠岐によるバットを折りながらのサヨナラホームランが注目を集めたのは当然なのだが、そもそも明石健志の同点ホームランがなければソフトバンクは延長に持ち込めていない。明石は目立たないが内野安打になりそうな難しいゴロも上手にさばいている。そう、打つばかりが野球ではない。

守りという意味では高谷の存在も大きい。甲斐もパンチ力はあるが打率は高くない。試合後半にチャンスが生まれたら代打が投入される。そこで高谷の出番となる。こういう選手たちをソフトバンクは抱えている。そういう金は投じている。まさに人財。生きた金の使い道なのだ。高谷のホームランも、広島の猛烈な追い上げがあっただけに価値ある一発だった。付け加えれば、高谷のホームランも明石のホームランも、ソフトバンクが勝つための台本にはなかった。主演俳優だけじゃない。この脇役たちの「アドリブ」もまたソフトバンクの強さだ。

脇役と言えばこの日本シリーズ川島慶三の「ビッグプレー」をまだ見ていない気が。思えばシーズン終盤、西武との天王山でまさかの3連敗を喫したものの、川島が「残り全部勝つ」宣言をしてからソフトバンクは生き返った。ペナントレース優勝はできなかったが、CS、日本シリーズと諦めない戦いぶりに本当に感動している。

頂まであと一つ。日本一を決定付ける役者が誰になるのか。本当に楽しみだ。


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