最後の30勝投手・皆川睦雄がもうひと花咲かせられた理由
人間はいつまで成長できるのか。それは向上心を持ち続けている限り、だろう。安打数の新記録を作ったイチローだって進化し続けている。年齢で判断される選手ではないので、イチローが引退するのは、自分で決める、監督に使われなくなる、けが、いずれかの理由しかない。
しかしプロ野球選手ではないサラリーマンは勝手に、入社後の10年くらいは必死のパッチでやるもののそれ以後は成長が鈍化してしまうものだ、成長は若手ならではだ、と思ってはいないか。キャリアを積んだ人ほどそう思っても無理はない。だって結果が出ているのだからジタバタする必要がないのだ。
野村克也著「この一球」に出てきた皆川睦雄のエピソードが好きだ。皆川睦雄は最後の30勝投手と言われている。シーズン30勝がどれほどすごいかは田中将大を考えてみればいい。全部勝ったマー君でさえ24勝だったのだ。皆川睦雄はなぜ30勝できたのか。「この一球」を下敷きに考える。
皆川睦雄と野村克也は同期生。南海で18年間を共にし16年バッテリーを組んだ。1958年から8年連続、1年おいて4年連続の2けた勝利など実績は十分だった。しかし右の横手投げの皆川睦雄は野村克也の分析だと左にめっぽう弱い。このままでは先が見えている。そこで胸元を突く「小さいスライダー」の習得を野村克也は勧めた。
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今で言うカットボールの元祖だそうだ。野村克也に相談にきた1967年時点で170勝。もはや誰にも尻を叩かれない円熟期に新しい技術に挑む。この向上心こそ1968年の31勝と防御率1.61の原動力だった。
「どうすればこれから先、長く投げて行ける?」。同期生だからこそ打ち明け相談できた内容かもしれない。だが最高の答えを持っている同期生を持てた皆川睦雄は強運だった。
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「この一球」では太字でこう書かれている。
「プロの世界とは、限界を超えた先にある」
「妥協、限定、満足は、人間の成長を阻む」
胸に染みる。黒柴スポーツ新聞編集局長も、仕事もブログも、ずっと満足せずに質を向上させたい。さて、あなたにとっての「小さいスライダー」とは何ですか?