コリジョンルールは本塁上の芸術的攻防をなくしてしまう悪法
コリジョン、コリジョン、とうるさいと思いませんか? たった今知りましたが衝突とか対立という意味だそうじゃないですか。衝突しないためのルールなんでしょう? どうせならコリジョン防止ルールと言ってほしい。そして何でもかんでも英語を使わないでほしい。クロスプレー大好き男の黒柴スポーツ新聞編集局長はルール改正に不満大である。けがをしかねない選手には朗報だったかもしれないが。
巨人の鈴木尚広らスライディングがべらぼうにうまい選手の輝きも減ってしまう。彼らはいかに芸術的に滑り込むかで査定が上がり年俸も上がるのに。キャッチャーの巧妙なブロックをギリギリのところでかわし忍者のようにホームベースにタッチする。ここが腕の見せ所なのだ。突っ込んできた鈴木が滑り込みながらキャッチャーのおしりの下に手を伸ばしあおむけになった顔面をかすめるようにキャッチャーミットが空を切る場面はまさに芸術と呼ぶにふさわしい。
そして強肩が持ち味の外野手にとっても見せ場が減ってしまう。ああ、1点はしょうがないなと味方ピッチャーが諦めた時に矢のようなバックホームが完成し間一髪アウト!となれば球場はがぜん盛り上がる。これぞプロだというプレーが続くからこそファンは球場に足を運ぶのだ。華はまったくなかったが中日にいた英智が甲子園で見せたバックホームにはタイガースファンも脱帽したことをコアなプロ野球ファンなら覚えていることだろう。野球はただ打ったり抑えたりできる主力級だけで成り立つ単純なゲームではないのだ。足と肩。この要素が組み合わさることでゲームがより魅力的になることをプロ野球ファンは知っている。
もちろん無用なラフプレーで選手生命が短くなる、あるいは絶たれるなんてことはあってはならない。先日も本紙イチオシの川島慶三が田中賢介にやられてけがをしてしまった。野球ファンの間でも賛否あったようだが意図的なものかで善悪を判断したい。マートンみたいにむちゃくちゃに突っ込んでくるのはもちろんアウトだ。
衝突回避のためのルールが適用したらいい年代もある。例えば高校生まではダメとか。本紙としては高校生からは衝突OKにしたいのが本音。なぜなら即プロ入りする選手もいるわけで、よりハイレベルな本塁上の攻防が見たいからだ。あのような神業スライディングは一朝一夕で身につくものではない。オコエ瑠偉みたいな選手がいたらぜひアピールポイントの一つにと技術を磨いておいてほしいと思ってしまう。
つまりプロなんだからギリギリのとこでやってくださいよというのが本紙の結論。プロ野球では数々のクロスプレーはあれどもっとも胸が熱くなったのは2006年WBC決勝でキューバ相手に闘志を見せた川崎宗則の「神の手」。追加点がどうしても欲しい場面にイチローのライト前ヒットで2塁から本塁を狙うも完全にブロックされていた。そのわずかな隙を狙ってホームから遠い側の右手のみでホームイン。まさにムネが熱くなるシーンだった。体は完全に止められていたのだから川崎の気転、センスが物を言った。普段の言動は暑苦しいので好きではないが近年はマイナーからはい上がる姿勢に好感を持っている。
キャッチャーもルール改正でとまどっていることだろう。そのうちタッチプレーが簡単にできてしまうバレーボールのセンタープレーヤーみたいな長身キャッチャーの方が有利な時代になるかもしれない。もっとも一球一球受ける時は長い手足が窮屈になるが。巨人の小林誠司らを筆頭に、キャッチャーはひと昔前の香川伸行のようなドカベン型でなくともいい時代にすでに突入しているがその流れがより加速することも予想しておく。
ただし決定的な視点が欠落しているのは正直に書いておく。プレーヤー目線だ。本紙編集局長は一生懸命頑張るレベルの草野球経験しかない。気合はムネリン、気分は鈴木尚広だが動きは運動会のオトーサンなのだ。バリバリの高校野球など経験者は今回のルール改正をどう見ているのか。ぜひとも聞いてみたいものだ。
というわけできょうの一枚「きょう1」は走塁に革命を起こした人として記憶されている与那嶺要。MVP1回、首位打者3回、ベストナイン7回。中日監督として巨人のV10を阻止した。編集局長は複数枚、与那嶺のカードを持っているがやはりスライディング中のものを紹介したい。アメフット経験を生かした闘争的な走塁は当時の日本プロ野球に新風を巻き起こした。存命ならコリジョンルールのことをどう評するだろうか。