打たれたのは真っ向勝負した証~被本塁打最多記録・鈴木啓示の草魂
一発を食らうのは速球派投手の宿命という定説がある。2016年もソフトバンクの千賀滉大が4月6日のロッテ戦で好投しながらも2発に泣いた。先日の投手本塁打記事で調べ物をしていた時、被本塁打にも目が行った。参考HPはNPB、参考図書は例のごとく宇佐美徹也氏のプロ野球記録大鑑だ。
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【歴代被本塁打ベストテン】
1鈴木啓示560本
2山田久志490本
3東尾修 412本
4北別府学380本
5金田正一379本
6平松政次374本
7米田哲也370本
8小山正明365本
9工藤公康362本
10柳田豊 359本
10位の柳田には申し訳ない書き方になるが被本塁打はキャリアを誇ってよい大投手の勲章と言える。
宇佐美氏は著書の中で鈴木を擁護している。鈴木の時代は「飛ぶ球」であり、本拠地も日生球場、藤井寺球場という狭いスタジアムだったからこその数字だ、と。そして真っ向勝負のタイプだったからとも書いている。
ちなみにNPBのHPによれば11位は現役の三浦大輔で355本。2016年シーズンを戦い切ればもしかしたらベストテン入りする。これはこれで長いキャリアの勲章である。
プロ野球記録大鑑によると、シーズン最多被本塁打は池谷公二郎の48本。1試合(9回)平均で1.91本という記録が残っている。宇佐美氏は「けれん味のないピッチングで比較的本塁打を浴びやすい投手だった」と書いている。
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村上雅則はもはや神話のように思えるが野茂英雄が本格的にメジャー移籍の扉を開けて以降、日本にいれば過去のレジェンドを目指せそうな投手が次々に海を渡った。そしてそろってけがも経験している。メジャー志向は否定しないがもしも彼らが日本球界で歴史を作っていたら被本塁打記録も塗り替えられていたのではーというのが黒柴スポーツ新聞の見立てである。
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ちなみにウィキペディアによると野茂は日本の5年で83本、アメリカの12年で251本の計334本を浴びている。これをNPBのHPにある表に当てはめると13位の成田文男328本を超える。もっともアメリカでの方が打たれているから野茂の場合は力と力の勝負を楽しんだのかもしれないが。
本紙編集局長が好きな被本塁打シーンは1989年10月12日の西武ー近鉄戦での渡辺久信対ブライアント。がっくりとひざをつく渡辺の表情もまたプロフェッショナルだった。記事のタイトルこそ「私の失敗」だが力と力で紙一重の勝負を繰り広げることでファンは酔いしれるのである。
社会人の世界ではつい安全策を取ってしまうものかもしれないが討ち死にしたとしても屍を運んでくれる先輩方がいる若いうちは真っ向勝負したいものだ。渡辺もあの一球から学んだことは多かったに違いない。
千賀は2015年日本シリーズで山田哲人にその試合3打席連続となるホームラン(2ラン)を食らった。148キロのストレート。試合を5-4とひっくり返された。対戦中は変化球も混ぜていたため馬鹿正直な真っ向勝負でもなかったが山田は調子がよく見切られていた。そして内角高めの直球をスタンドまで運ばれた。まだまだ若い千賀。悔しかっただろうがきっとこの1球が現役生活によい影響を与えるはずだ。
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ソフトバンクはエース摂津正が2軍落ちでチームもスタートでつまずいている。ソフトバンクの浮上に千賀の活躍は不可欠だ。ホームランを恐れずどんどん真っ向勝負を挑んでいってほしい。
きょうの1枚「きょう1」は被本塁打最多記録に敬意を表して鈴木啓示。通算312勝238敗。最多勝利3回、最優秀防御率1回、最多奪三振8回、最優秀勝率1回。数々のタイトルをとったが被本塁打記録が記憶に残っているという。踏まれても踏まれても芽を出す「草魂」が座右の銘、とカードの裏に書いてある。われわれ社会人も日々の失敗を鈴木のようにばねにしてこつこつ前に進みましょう。