黒柴スポーツ新聞

ニュース編集者が野球を中心に、心に残るシーンやプレーヤーから生きるヒントを探ります。

4.5差でも抱くソフトバンク逆転優勝の希望〜手応えを感じた4つの理由

ソフトバンクが連敗を3で止めた。この1勝は希望である。もし負けていたら今季最大の首位から6.5ゲーム差。いくらまだ前半戦とは言え、赤信号が灯ったと言えるゲーム差だった。それが4.5に縮まったわけだ。この試合、まずは勝てたことが大きいのだが、他にいくつも、収穫があった。

 

まずはモイネロの復帰だ。オリンピックのキューバ代表として予選に挑むも敗退。とっくに終わっていたのだが、コロナですぐチームに合流することはできなかった。調整も必要だから1軍合流にはさらに時間がかかった。思えば8回のモイネロも、守護神の森唯斗もいなかったわけで、むしろ投手陣はよく持ちこたえていたと思う。モイネロは復帰登板から僅差のタフな状況だったが、無失点で切り抜けたのはさすが。勝ちパターンが少し整ってきた。これは大きい。

もう一つはダメ押し点の取り方が「つながり」だったこと。ソフトバンクが調子よかったころは自然とやれていたのだが、きっちりランナーを貯めるあるいは進めて少ないチャンスでもモノにしてきた。特に交流戦以降はチャンスがつくれてもあと1本がなかなか出なかった。5月も6月も打率が2割1分台なのは痛かった。打線が上向くまでは少ないチャンスをモノにするしかない。今日も柳田が逆転ホームランを打ったがその打席は前の三森がツーアウトからヒットで出塁したからこそ。また、点差を2点に広げたダメ押しは中村晃のしぶとい犠牲フライ。これも「4番」川島慶三がきっちり四球を選んで1死1、2塁が満塁になったからこそ。川島は初回にランナー三塁というチャンスで得点につなげられなかったから、力が入ってもおかしくない場面。しかしここで無理をしない、その代わりに何をしたら最もチームに貢献できるかを考えて実践するのが川島慶三である。個人的には大好きな川島がタイムリーを打ってお立ち台…というシナリオを書いていたのだが、川島が四球を選んだことがすごくうれしかった。そして、チームの思いを背負った中村晃が犠牲フライを放ち、柳田がホームに突っ込んできたのがすごくうれしかった。つながりが得点に結びついたことがうれしかった。

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三つ目は世代交代が感じられるスタメンだったこと。ソフトバンクファンでもなければ気づかなそうだが、ソフトバンクはシーズンを苦戦しつつも世代交代を図っている。1番三森大貴はすっかり定着。打率は3割近辺を保っている。また、真砂勇介も出番が増えた。谷川原や佐藤直樹がスタメンの日もあった。そして今日は3年目の野村がスタメンに抜てきされた。その結果というか、最初からその方向だったのか、松田宣浩がスタメン落ちした。野手の世代交代はもう何年もソフトバンクの課題であったが、ようやく何人もの才能が花開きつつある。育てながら勝つのは難しい。ソフトバンクがBクラスにおりながらも収獲があるのは世代交代が進んできている面だ。ここはそもそも全体的にチームが若いオリックスと一番異なる点だ。ソフトバンクはいま過渡期なので多少もたつくのは仕方ない。

四つ目は岩嵜翔が締めたこと。オリックスを調子づかせたターニングポイントはズバリ、京セラで岩嵜が宗に逆転サヨナラタイムリーを浴びたあの試合だと思っている。オリックスは途中まで競り合いながらも地力の差でソフトバンクにねじ伏せられてきた。が、宗のタイムリーはその呪縛から解放したという意味でターニングポイントだった。今日最終回、先頭バッターを岩嵜が出塁させた時、悪夢が一瞬よぎった。もし宗まで回ったらひょっとすると…。しかしその手前で岩嵜は締めた。少なくとも森が復帰するまでは、岩嵜は最終回を抑え続けねばならない。だから今日岩嵜が無失点で抑えたことは、嫌なイメージを薄められた意味で大きな収穫だった。モイネロー岩嵜という勝ちパターンが戻ってきた。

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打つ方にしても、投げる方にしてもようやく、勝てていたころのソフトバンクに少し戻れた気がする。やはり結果を出す人(チーム)は自分の形やパターンを持っている。ソフトバンクのいいところはベテランだろうがユニフォームを汚すほどのハッスルプレーとチームプレー。チームメイトの活躍を我がことのように大喜びする姿勢。何より明るく元気…。まずはそこから、強かったソフトバンクを取り戻してもらいたい。

惜別・大島康徳さん〜一発長打の男、代打から通算2204安打、そして監督へ

中日と日本ハムで活躍した大島康徳さんが6月30日に亡くなった。70歳、まだまだ野球界への貢献をしてもらいたかった。今日は生前の勇姿を野球カードで振り返ってみたい(以下敬称略)。


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大島は大分の中津工出身。中学生の時はバレーボール選手だったらしい。中日には投手として入るがすぐ野手に転向。もし投手として1勝していたら、石井琢朗より先に、投手として勝利経験のある2000安打達成者だった(ほかに川上哲治も)。

 

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大島は代打で頭角を現す。1976年には代打で1シーズン7本塁打。これはプロ野球記録である。背番号は40だったが後に5となった。


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タイトルは1983年に36本で本塁打王に輝いた(山本浩二と分け合う)。ちなみにホームランは通算382本まで伸ばす。「燃えよドラゴンズ」の歌詞には「一発長打の大島君」というフレーズがある。382本という数字、地味にすごい。ソフトバンク柳田悠岐でもまだ200本なのだ。

 

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大島は1988年に日本ハムにトレードで移籍した。チームの若返りという切なすぎる理由らしいが、移籍先できっちり試合に出続けた大島は本当に偉いなと思う。この踏ん張りがあったからこその通算2204安打かとも思う。ちなみに筆者は公式戦かオープン戦かあやふやだが、大島の二塁打三塁打を東京ドームで見た。1991年、もしくは92年の日本ハムの野球カードが入手できていれば、オレンジ基調の大島が見られたはず。残念ながら持っていなかった。

 

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特筆すべきなのは大島が移籍先の監督に請われたことだ。途中から入団した人が監督になるのは相当信頼されているように見える。途中からの加入は落ち着かないものだ。そこ独特の価値観やらしきたりがあり、そのハードルの高さは生え抜きには分かるまい。それでも大島は監督になった。代打からレギュラーになり、タイトルもとったスター選手がチームを移れと言われた。移籍先で埋没するパターンもある。大島は埋没どころかそのまま試合に出続けて名球会入りして監督まで務めた。

 

トレードの際、日本ハムが必要とするから呼ばれると言ったのは名言だと思う。また、中日が本当に必要と思うなら出さないはずだとも言ったという。どちらも真実である。ただ、若返り方針イコール出場機会が減る流れを考えると、大島は試合に出て結果を残せたという意味ではやはり、移籍して運が開けたのではなかろうか。監督時代の5枚目のカード写真は大島の笑顔が印象的である。これを見ても大島の野球人生は幸せだったことが伝わってくる。謹んでご冥福をお祈りします。

ニ保と中谷のトレードは誰得?〜ソフトバンクは打線活性化、阪神は中継ぎ充実なるか

非番の朝、スマートニュースで話題を漁っていて目が釘付けになった。スポニチ記事、阪神・中谷とソフトバンク・ 二保がトレード  17年20発の和製大砲放出 投手陣再整備へ「7回の男」 期待、のことだ。ソフトバンク非公式機関紙を自負するわが黒柴スポーツ新聞的にはニ保への惜別の思いがこみ上げてくると共に危惧を覚えた。ニ保に求められる中継ぎのポジションは、若干荷が重いのではないか?と。ニ保は丁寧なピッチングが持ち味であり、球の勢いで抑えるタイプではないからだ。

近年のニ保は先発を担ってきた。ただしポジション的に6番目の男、といったところ。いわゆるローテーションの谷間、あるいは先発ローテが厳しい時の応援である。どうしてもいつか捕まるイメージがあり、ニ保の登板時は6回3失点なら及第点があげられる。粘ってなんとかしのぐそのピッチングスタイルを見るとウミガメが苦労して産卵するのを思い出す。そう、ニ保旭の6イニングはとても長く感じられ、それだけに他の投手の1勝の3倍くらいの味がある。外角に丁寧に丁寧に変化球を集めるニ保旭。苦労人を応援したい人にはたまらない感動がある。阪神ファンの皆さん、ニ保とはそんなピッチャーなのです。

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今回のトレードは誰得なのか? そもそもなぜトレードが必要なのかと言えば、「今回打者を求めるソフトバンクさんと投手を求める当球団というところで合致した形です」(デイリースポーツ記事、ソフトバンク・二保を獲得した阪神・嶌村本部長「脂が乗り切ってきている」と期待、より)を読むと分かりやすい。阪神は投手がやや心細い。ソフトバンクは貧打に苦しんでいる。そこで阪神は経験があるニ保に目を付け、ソフトバンクはシーズン20発打ったこともある中谷の長打力に期待…なのだ。トレードは若干の寂しさがあるが、才能が埋もれるよりよっぽどいい。ニ保にしてみればソフトバンクは次々に活きのいいピッチャーが出てきている。阪神は打線が活発だ。残念ながらニ保も中谷も、今のままでは2021年シーズンは1軍でバリバリ活躍…という雰囲気ではなさそう。ならば求められた場所で暴れた方いい。

本当に、ほしいと思ってもらえることが野球をやっている中でうれしいことですし、もう一回うまくなれるチャンスだと思う。しっかりいろんなことを吸収できたらいいと思います」(デイリースポーツ記事、トレードの阪神・中谷「ほしいと思ってもらえることがうれしい」新天地での活躍誓う、より)。中谷は前向きだ。そして中谷は実は福岡工大城東高出身。ソフトバンクファンとしても迎えやすいことだろう。やはり早めに名刺代わりの一発がほしいところ。この一発が中谷の魅力なのだから。

中谷は外野手なので、またまたソフトバンク外野陣は競争が激化する。特に右打者の真砂は世代的にもかち合う。同じく右打者では佐藤直樹がいるが、この3人の競争になりそうだ。中谷はホームランがあるから右の代打の魅力もある。今のところ代打だと左が長谷川、明石。右なら川島慶三が定番だ。川島もパンチ力があるが、最初からでかいのを狙うタイプではない。ソフトバンク的には吉村裕基以来の右の本格的な代打になり得るがどうだろう。深読みすれば中谷を獲るイコール、バレンティンに見切りかも? バレンティンには結構チャンスを与えてきたからそれは仕方ない。中谷の使われ方は興味深い。

ニ保は具体的に7回という記事もあった。球質が重くはないので一発は要注意だが1イニングなら何とかしのげるかも。ニ保にしてもこのまま2軍にいるよりは阪神の方が出番がありそうなのでいいきっかけにしてほしい。選手生命を考えても、トレードしてオフに即戦力外はなかろうから、少なくともあと1年は続けられる。好投することでそれが延びるのだからぜひ頑張ってもらいたい。

個人的には中谷の方がチームにハマりそうという意味でソフトバンクにお得なトレードに感じたがいかがだろうか。ソフトバンク阪神も共にAクラスだから、日本シリーズで激突する可能性もある。中継ぎのニ保対代打中谷、なんてことを想像するのは気が早いが、ぜひそんなことも期待したい。ニ保と中谷のトレードは、二人の活躍次第でペナントレースの行方を左右するかもしれない、とても興味深いトレードと言えそうだ。

落ちそうで落ちない〜松田宣浩の鳥人間的現役生活はいつまで続くのか

貧打に泣いたソフトバンクが嘘のような先発全員安打で獅子粉砕。9点も取って勝った。北九州市民球場だったから? 鷹の祭典だったから? 赤い特別ユニフォームだったから? 久々に福岡でお客さんが入った試合だったから? ま、その全部だったということでよかろう。打線が活性化したおかげで松田宣浩まで目覚めた(2ランを放った)。松田はしぶとい。もし今日打てていなかったらどうなっていただろうか。そろそろ出番がなくなっていたかもしれない。そのどん詰まりで打つ。そして熱男と絶叫し、ヒーローインタビューで観客を沸かせる。するとみんなマッチの虜になっている。そう、これがマツダノブヒロなのである。

まさにこれが、松田が長く第一線でやれている理由にほかならない。題して鳥人間的生き方。そう、だんだん降下して、あ、もう着水だな、もうダメやろと人が思ったその時! 火事場のくそ力で再びペダルをこぐ。するとまた上昇する。しかしそれは長くは続かない。疲れるから当たり前である。そして再び落ち始めるのだが、決して着水はしない。そのギリギリのところで踏ん張る。絶対に着水はしない。スタメンを外されてしまっても、次に起用されたら勝負強いバッティングをしてチームに貢献する。やっぱり松田は必要だ。そう思わせられるからこそ、松田宣浩は使われ続ける。思えば松田の出身地は滋賀。鳥人間コンテストが行われる琵琶湖がある滋賀である。

見る人が見れば、コンスタントに頑張っている人(いま中村晃の顔が浮かんだ)より松田の方が生き方上手なだけじゃないの? うまくやってるだけじゃないの?と思うかもしれない。しかしあの鳥人間コンテストパイロットは見えないところで必死に脚を動かし続けている。きっと松田ももがいている。そう、やはり楽して結果を出せるほど甘くはない。松田は不調に陥る度にまた結果を出して、周囲の評価を覆す。近年はその繰り返しだと思う。

北九州でホームランを打った後、ベンチで松田がよしよしとばかりに谷川原の頭に抱き抱えた。谷川原がタイムリーを打ってつないだから松田に打席が回った。だからこその「よしよし」だった。「松田の気持ちが分かりますね」と解説の池田親興。こういう池田の解説は最高である。

もう一つ、松田をいいなと思ったのは、先発東浜が四球でランナーを貯めた時。次打者のスパンジェンバーグへの初球が抜けたのだが、幸い空振りしてくれた。東浜が不安定になっていることがありありと分かる一球だったのだが、「ナイボー!」という大きな声が中継で聞こえた。声の主は映っていない。しかし明らかに松田だった。いつも声を出しているかもしれないが、本当にしんどい場面だからこそ、東浜は勇気付けられたことだろう。東浜はスパンジェンバーグを空振り三振に抑え、7回を投げ切った。そう、松田は気遣いができる人だ。和田毅が不調の時には「グラブを変えたら」なんてアドバイスも。勝っている時のグラブと負けている時のグラブの違いに気付く細やかさ。相手のことを思わないとできない助言だ。

ソフトバンクファンはまたしても松田にやられた。鷹の祭典であと1本が出なかった松田にフラストレーションが溜まったソフトバンクファンは相当いたはずだが、北九州でのホームランからの熱男ポーズ、そう、いつもより長めの熱男ポーズを見せつけられてファンはすっかり乗せられた。これだから松田はニクめない。だが確実に松田の着水は、刻一刻と近づいている。果たして松田の鳥人間的現役生活はいつまで続くだろうか。楽しみにガッカリと歓喜を繰り返すとしよう。

野球本を売りに行ったら買取価格が予想以上に…!だった件

久々にソフトバンク以外のネタで(きょうは試合がありません)。断捨離を思い立ち愛しの野球本たちを売って参りました。そこでプロ野球ニュースの名物コーナー「今日のホームラン」テイストで査定価格を列挙いたします。BGMはもちろんジェームス・ラストのVIBRATIONSで。それでは行ってみよう!

 

テレッテッテレー🎵

野村ノート 100円!

 

テッターララー🎶

選手たちを動かした勇気の手紙 5円!

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この一球 10円!

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マリアノ・リベラ自伝 20円!

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悔いは、あります 5円!

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背番号三桁 5円!

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松坂の野球脳 東尾の活人力 5円!

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「超」一流の自己再生術 5円!

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それでも逃げない 5円!

 

そう、もはやただ同然である。

だがこの本たちも、わが家の本棚で長々と出番を待っているのはかわいそうだ。野球本を楽しみに読む方々の元に旅立って、活用してもらうことを切に願うばかりである。

 

代打明石またもトレンド入り〜てこでもブレないソフトバンク工藤監督

またもや代打明石がトレンド入りしてしまった。ある意味38試合連続無失点のプロ野球タイ記録の平良をもしのぐ注目度である。そして私は確信した。これほど一つのことに固執する、てこでもブレない工藤監督が、やはり昨シーズン内川聖一を1軍に呼ばなかった原因ではなかったか、と。

打てない明石もプロ野球選手として責任は負わねばならない。しかし任命責任は監督にある。たとえコーチ発案だとしても最終的には監督の責任である。説明責任という言葉もある。なぜ甲斐に代打明石なのか。確率論で右ピッチャーには左バッター云々の話は今の明石に通用しない。完全に調子を落としている明石に1打席で結果を出せという方が酷だ。解説者の若菜嘉晴も言っていた。明石は1打席で結果を出すタイプではないのだ、と。それは長谷川勇也なのだ、と。

荒療治で、明石にとにかくヒットを打たせて楽にさせたいのか。ソフトバンクファンだって代打明石のヒットを見て早く楽になりたい。かつてウチゲという言葉が話題になったことがある。内川があまりにゲッツーを打つからそう揶揄されたのだ。あれほどチームに貢献してきた名バッターでさえそう言われる。プロ野球選手は大変だ。

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ある程度の年齢に達すると人は頑固になるのだろうかか。人の意見に耳を傾けないのだろうか、とさえ思う。なぜここまで代打明石にこだわるのか。「つまらん!」キンチョールのCMで岸部一徳の父親役の大滝秀治ばりに一喝したい気分である。これを書くためにYouTubeキンチョールCM見て大爆笑。寝よう。ソフトバンク敗戦により同率3位に西武もロッテも並んでしまった。投手陣は貧打にめげずに踏ん張っている。少ないチャンスならなおさら、それを生かす作戦&選手起用を求めたい。

ソフトバンク石川柊太の配置転換はアリ?〜仕事ができる人が不調になったら

工藤公康監督が石川柊太の配置転換を示唆した、という記事が相次いで配信された。配置転換の理由は、日刊スポーツによると「今は先発するよりも、中(リリーフ)に入ったほうが良かったり、短いイニングで投げて、自分を取り戻すのも1つの方法」(ソフトバンク石川柊太の中継ぎ配置転換も 工藤監督「本人と話して決める」より)という。私は反対の立場からこれに言及したい。

石川は開幕投手であり、毎週金曜日にエース級と渡り合うしんどさはあった。しかしそれを逃げていてはエースにはなれない。いや、別に石川は逃げてはいない。いわゆるクオリティースタートは11度と12球団随一だ。それで未だ3勝止まりなのは援護に恵まれていないことを物語っている。

しかし、同時に7敗というのも気になる。特にこのところは先に失点してしまい、援護のなさがさらに露呈している気がする。エースとは負けない投手である。援護がないなら失点しなければいい。そのくらいの気概がエースにはほしい。また、気になるのはホームランによる失点。見た目的にダメージが大きい。繰り返すが石川は開幕投手、今年は石川を軸に投手ローテーションが組まれる主軸である。パカパカ本塁打を打たれてはいけない。はっきり言えば石川が3勝しかできていないことがソフトバンクの順位に影響している。オリックスの宮城はもう8勝だ。石川は今からでも必死のパッチで取り返さねばならない。

一つ気になっていたのは、石川を開幕投手にしたら、ずっとカードあたまを石川にしなきゃいけないのかという点。ぼちぼち安定しているマルティネスを先に投げさせて、石川はその後など、順番を少しずらしてもいいかなと思っていた。一度決めたらそれでいく。年度主義の悪いところである。柔軟性がない。調子を崩しているならケアが必要だ。そう思っていたら、登板間隔を開けることに加えて配置転換ときた。これは振れ幅が大きすぎないか? そこまで石川は重症なのだろうか。

また、今の中継ぎはリフレッシュの場にふさわしくない緊迫感だと思う。短いイニングだから楽、というのは確かに長いイニングを投げる先発に比べたらそうだろうが、決して津森や嘉弥真や泉や板東や岩嵜らが楽をしているわけではあるまい。石川をリリーフでつぎ込んでまたホームランを打たれて負けたりしたら余計やばいのではないか? それよりも石川はあくまでも先発を続けながら何とか勝っていく。やはり長いイニングを安定的にこなせるピッチャーは稀有な、貴重な存在である。簡単に手放してはいけないと思うのだが。

配置転換については石川本人と話して決める、という。しかし上司からの打診はイコール指示である。石川に選択権はあるのだろうか。あるならここはもう1度、いやしばらく先発でやらせてほしいと言ってもらいたい。ここが踏ん張り時だからだ。どのみち石川が復活しないとペナントレースはきつくなる。であれば一刻も早く石川に勝ちを付けることが一番の薬になると思うのだが…。仕事ができていた人が不調だから軽作業をする。それはあくまでも気分転換や体調管理にはよかろうが根本的には何ら解決しない。石川に先発一本でいってほしい理由はそこにある。

三森、価値ある猛打賞〜ソフトバンク8試合ぶり勝利に貢献

ソフトバンクが8試合ぶりの勝利だ。立役者は誰かと聞かれたら私は三森大貴を推したい。レイは初勝利おめでとうだし、今宮47イニングぶりチームタイムリーも殊勲。松田の2度のホーム生還もさすがの熱男ぶりだし、柳田悠岐の豪快なポール直撃弾で多くのソフトバンクファンがこのところの鬱憤を晴らすことができた。中村晃犠飛、犠打、犠飛という献身ぶりは頭が下がる。でも、今夜は三森のサイクルヒットにあと数十センチに迫る大活躍を書き留めておきたい。

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直近の日本ハム3連戦、なんとソフトバンクは合計11安打だったらしい。1試合平均4安打以下。これじゃ勝てない。貧打にソフトバンクファンは怒りが沸点に達し、選手の起用を含む作戦面から小久保ヘッドコーチへの批判が噴出。「代打明石」がツイッターでトレンド入りした日もあった。うまくいかない時はこんなもんだろうが、ソフトバンクファンには精神衛生上悪い1週間であった。それは選手も同じだっただろうし、本当に悔しかっただろうと思う。そんな沈痛なムードをまず振り払ったのが三森の初回先頭打者初球三塁打だった。あれこれ考えず、甘い球は積極的に打ちに行ってほしい。そんなファンの願いを体現してくれた。すぐに中村晃が犠牲フライを打ってくれたので、三森の三塁打にさらに価値が出た。

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三森の勢いは止まらず、次の打席でセンター前ヒットを放った。これで松田が進塁し、さらに中村晃のバントで三塁に進んだ松田が柳田の犠牲フライで帰ってきたから、やはり三森のヒットは価値がある。三森は第3打席で見逃し三振に倒れるも次の打席では二塁打を放ちまた松田が三塁に到達。今度は中村晃が犠牲フライを打ち、松田が本日2度目のタッチアップ成功。ソフトバンクファンの筆者が見てもアウトに見えた際どいタイミングだったが、タッチアップに備えた松田の素早い帰塁と気迫のスライディングの賜物だった。そのお膳立てをしたのは三森の二塁打だった。

あとホームランが出たらサイクルヒット。自分で気が付いていたのか人から言われたのか、解説の里崎智也いわく「狙っている」というスイングだったが、第5打席でライトポールをかすめようかという大飛球をかっ飛ばした。私はこれが何よりうれしかった。ようやくスタメンを手にしようかという選手が個人記録のためにスイングするのは邪道なのかもしれない。しかしチャンスがあるなら思い切って狙いにいってほしい。今の停滞するソフトバンクのムードに足りないのはそういう貪欲さに思えて仕方なかったから余計にそう思った。結果的に三森は三振して偉業はならなかったが、三森の積極的なバッティングが見られて満足した。そろそろ牧原大成が戻ってきそうだが、その時は三森と牧原のどちらがどう使われるのか。牧原は三森の活躍をどう見ていたのか興味深い。

スタメン起用された谷川原もヒットを打ったし、スタメンを外された松田はヒットや走塁でアピールに成功した。バレンティンはそろそろ見切って真砂を使ってもいいと思う。今のソフトバンクに必要なのは三森たち若い力だ。そのエネルギーと勢いであれば調子のいいオリックス相手でもいい勝負ができる気がする。首脳陣にはぜひ若手の起用をお願いしておきたい。

打線も梅雨入り…ホークス貧打解消に一つの提案

ホークスが貧打に喘いでいる。リーグ戦再開初戦は日本ハムのエース上沢に完投を許した。2-1。この1点は上沢のボークによるものだ。試合中そして試合直後にベテラン長谷川が感情を露わにする場面があった。長谷川はもともと闘志をむき出しにするから驚いたりはしなかったが、今回は苛立ちに見えて仕方なかった。

その長谷川をベンチでフォローしたのは平石コーチだった。一方、そこにいなかった小久保ヘッドはどうなの論もあるらしい。言いたくなる気持ちは分からなくもない。しかし人には役回りというものがある。小久保はここで手を差し伸べるタイプではない。フォローは平石が適任であった。

だが、長谷川以外の選手・コーチが悔しがらないはずがない。どうにかしたいと思っているはずだ。まだシーズン半ばだから言えることなのだが、今年は惜敗が多いのがまだ救いだ。どうしようもない試合はあまりないように思う。千賀、東浜、森、モイネロ、グラシアルが抜けて、これだけ交流戦でもたついてもまだ貯金2で3位。そのことが不思議ですらあるが、裏を返せば、中継ぎ陣を筆頭に一人一人の力の積み重ねで今がある。好転のきっかけが何なのか分からないが、それさえつかめたら、もっと得点できると勝手に期待している。

そこで提案。もうこうなったら実績や名前は取っ払ってとにかく今調子がいい人をできるだけ引っ張る。使う。それを実践してほしい。真砂が打ち続けたら行けるところまで真砂。三森や柳町もそう。勢いのある人を軸に打線を組んでもらいたい。そうすれば少なくともファンは「なぜこの人がスタメンじゃないの?」なんて言わないから。なお、この提案はあくまでも野手限定の話。いくら調子よくても頼りたくても、中継ぎはきちんと計画的に投入してほしい。泉ばっかりとか、津森ばっかりとか、板東ばっかりなんてならないように。そうしないとまたけが人が出る。

長谷川の怒りがクローズアップされたが、柳田も栗原も悔しいはずだ。梅雨空のようにジメジメした雰囲気はホークスに似合わない。とにかく好球必打でタイムリーを打ってもらいたい。

ソフトバンク三森4打数4安打で4割超え〜レギュラー獲りへ最大のチャンス到来

ただいま売り出し中の男がまた活躍した。三森大貴。広島戦で4打数4安打の固め打ち。広島の先発玉村に完璧に封じられたソフトバンク打線において、一人気を吐いたと言っていい。うち1本はタイムリ三塁打で、チームは負けを免れた。その長打が外野を深々と割った瞬間、私は鳥肌が立った。三森が覚醒しつつある!と。

人生何があるか分からない。ソフトバンクのセカンドは周東で開幕。しかし出塁できなくなってくると、スタメンは牧原大成が務めるようになった。牧原はコンスタントにヒットを打ち、定位置を手にした…はずだった。が、皮肉にも全力プレーがあだとなったか、脚を傷めてしまった。そして浮上してきたのが三森なのだった。昇格して即スタメン。タイムリ三塁打を放つなど打力や走力をアピールすることに成功している。もし周東や牧原が想定通りの活躍をしていたら、三森は1軍に呼ばれていたのかは分からない。

「レギュラーを取る時は一瞬たりとも気が抜けない」。三森が4安打した日のラジオ中継で、解説の島田誠がそう言っていた。三森は今、最大限アピールしておかねばならないが、今のところ大成功だ。打席数がまだまだ少ないとは言え、打率はついに4割を超えた。広島戦での1試合4安打はいずれも左ピッチャーから。この点を島田誠も絶賛。「なかなか打てませんよ。僕もなかったんじゃないかな? あ、鈴木啓示から5打数4安打がありましたね」にはズッコケてしまったが、確かに左だからといって起用を躊躇されていてはレギュラーとは言えまい。まだまだタイムリーを打った後のガッツポーズも控えめだが、それが初々しくて笑ってしまった。だけどもすごくうれしさの伝わるガッツポーズに見えた。青森山田高校出身の5年目、三森大貴が今、スタメン獲りへ最大のチャンスを迎えている。

周東に新たなライバル・三森現る〜ソフトバンク二塁手争いますます激化

ホークスのセカンド争いの構図が変わった。開幕から周東佑京が出ていたが、出塁率や打撃が失速。入れ替わる形で牧原大成が猛アピールしてスタメンを奪取したかに見えたが、全力プレーの蓄積が響いて戦列から離脱した。阪神戦からは三森大貴が起用され、6月6日の試合では1番スタメン。先制点につながるヒットを放ち、快足を印象づける三塁打も放った。盗塁も一つ成功させた。

黒柴スポーツ新聞的に見逃せなかったのは6日の試合途中で三森がセカンドからファーストに回った点。これは周東にはない選択肢だ。三森がファーストに使えるならば中村晃を休ませることができる。そしてセカンドには周東を入れる…そう、そうなる時は周東がスタメンではなかったことになる。

牧原大成の復帰時期によるのだろうが、このセカンドのポジション争いは楽しみだ。かつては川島慶三明石健志も含めてセカンドが、ホークスの攻撃パターンを充実させていた。セカンドが若手3人の争いになると、川島や明石は代打に回ることが増えそうだ。走攻守の総合力では牧原に安定感があるが復帰は未定。周東は守備と走力があるが打力は乏しい。三森は上がってきたばかりで1軍での打力は未知数だが走力はあり一塁が守れる。周東にしてみたら牧原離脱で普通ならまたスタメンに戻るところだがそうならないところがホークスの選手層の厚さである。

三森が三塁打を放った後、中継ではその後方に周東の姿が見えた。出場に備えてキャッチボールでもしていたのだろうか。ライバルになりうる三森が快足をアピールした姿を見てどう思っただろうか。中日戦での牽制死、DeNA戦での走塁死があってから周東はすっかり火が消えてしまったかのようだ。躍動感がなくなってしまった。だが下を向いても始まらない。阪神戦での三森の打撃を見ると当面セカンドは三森が試されそうに思うが、周東はとにかく出された場面で結果を出しつつ、打力を向上させるしかない。稀代の韋駄天はいま、岐路に立たされている。

気迫を前面に出す〜ソフトバンク真砂が反撃の一打、激しく拳を振り下ろす

ようやくホークスが勝ち、引き分けを挟んだ連敗は4で止まった。阪神との2戦目も途中まではリードを許す苦しい展開だったがそれをこじ開けたのは柳田悠岐のヒットであり、続く真砂勇介のタイムリーだった。外野を深々と破る二塁打で柳田が一気に生還。バックホームの間隙を突いて真砂も三塁を陥れたのだった。

何がよかったかって、あの三塁上で「よっしゃ!」と拳を振り下ろす姿。これだよ、ホークスファンが真砂に求めていたのは。良くも悪くもあまり顔に出ないタイプ。実は私もそうなのだが、内心はとてもうれしかったり悔しかったりする。だが変にそれを出さないようにしてしまいがちだ。真砂はこれからレギュラー獲りを目指す選手。打ったら喜びを爆発させてチームに勢いをもたらしてもらいたい。

5番に抜擢された真砂がなぜタイムリーを打てたのか。その後の打席中に、中継では談話が紹介されていた。「自分で流れを変えるんだという強い気持ちで打席に立ちました」だって。何これ、真砂がそんなこと思ったのかとびっくりした。そして慌ててこのコメントをメモって、いま紹介している次第。そう、人は気持ちの持ちようで熱くなれるのである。

この真砂の一打がまさに反撃ののろしとなり、甲斐が逆転2ランを含むホームラン2発。代打長谷川の2点タイムリー(あまりにもドンピシャのタイミングで打ったので、見ていて「んはっ!」と声が出た)などで計10得点と、ホークスファンは交流戦低迷の鬱憤を晴らすことができた。矢継ぎ早に周東、高田、上林と代走を出して一気呵成の攻撃。板東、尾形も得点を許さずピシャリと締めた。ホークス、久々の快勝である。一つ勝っただけでは交流戦順位を大きく改善させることはできないが、ずるずる連敗を長引かせることはひとまず回避できた。何より真砂が気持ちを露わにプレーしたのでそれが見られてうれしかった。そう、そのくらい激しくプレーしないと! やはりホークスの野球は元気が一番よく似合う。

代役を立てさせない〜牧原大成、代走送られた翌日に脚力アピール

いま牧原大成が熱い。このところの猛アピールは素晴らしい。周東の衝撃の走塁死がクローズアップされた中、牧原一人だけが別のことを考えていたに違いない。そう、なぜオレに代走なのだ、と。周東が一塁に来た時、牧原は名残惜しそうに下がったように見えた。

これはプロとして大事なことだ。たまたま中西太著「西鉄ライオンズ 最強の哲学」(ベースボール・マガジン新書)を読んでいたのだが、こんなくだりがあった。「プロでは、同情は絶対禁物である。同じチームでも、互いにライバル意識をむき出しにしてもらいたい」「仰木君、高倉君、みんな闘争心を燃やし、ライバルを蹴落としてポジションを手中にしたのだ」。牧原の闘争心を感じたシーンがあった。牧原に代走周東が送られた試合の翌日、2日の同じくベイスターズ戦のことだった。

四球で出塁した牧原はアンツーカーをはみ出る大きなリードをした。解説の多村仁志が「芝生(人工芝)まで出ている」と注目していた。牧原は再三、牽制を受けながらも結局二盗に成功。打者は犠打の名手・今宮健太だったが、アウトを増やすことなく牧原は二塁に進むことができた。そして今宮はセンターフライを打ったが、牧原はハーフウェーから戻り、再び三塁に向けてタッチアップした。多村はこれをトレーニングの賜物だと褒めていた。短い距離だからスピードが乗るのに三、四歩かかるといい、馬力がないとできないのだという。続く栗原の打球はセンター桑原の好守に阻まれてタイムリーにならなかったが、得点できていたら、間違いなく牧原の足で稼いだ点だった。

1番牧原、2番今宮であれば送りバントも強攻策もいける。そんな計算が立ったわけで、牧原的にはアピール成功だったように思う。もちろんチームが勝つことが最優先だから牧原も自分のことばかり考えてもいられない。だが中西太の著作にあったように、プロである以上、ライバルを蹴落とさない限りレギュラーポジションは手に入らない。そのためのアピールを、代走を送られた翌日に脚力で示したところに牧原大成の意地を見た。交流戦、いまひとつ乗り切れないホークスの中で、牧原の頑張りが目を引いている。

周東の走塁死が敗因なのか〜ソフトバンク、DeNAに手痛い逆転負け

あまりにも衝撃的な結末だった。一塁ランナーの周東が、三嶋の牽制球がそれた隙に一気に三塁を狙った。しかしバックアップのセカンド牧からの好返球にあえなくタッチアウトでゲームセット。パッと見、周東の暴走に見え、逆転負けのフラストレーションが溜まったホークスファン的にはついつい周東に敗因を求めてしまいそうになった。

が、果たして敗因は周東だったのか? 私はそうは思わない。周東が生還したとてまだ同点。勝てたわけではない。また、周東が欲張ったというのもお門違い。ライト側からの映像をTwitterに上げている方がおられたが、確かに村松三塁ランナーコーチが腕を回していた。これが決め手となり、周東の冤罪は晴れそうだ。かつて日本シリーズ初退場となった阪急・岡村捕手とランナー土井のクロスプレーで、土井がきっちりホームベースを踏んでいる写真が翌日の新聞に掲載されて、セーフの判定が正しかったことが周知されたことがあった(1969年)。時は流れ、試合当日の夜にはTwitterで別角度からの映像が確認できるようになった。プロ野球の楽しみ方は進化している。

周東の冤罪が晴れたとなると、村松コーチが追及されそうだ。実際、試合後には工藤監督がこんなことを言っていた。「まあ、致し方ないとは思います。あれは周東の後ろのエラーなので。あそこで三塁ランナーコーチの村松が回したのか回していないのかというところ。回しているなら行かないといけないですから、あいつ(周東)に罪はないので。そこはまだ確認を取っていないですけど」(西日本スポーツ記事、工藤監督が周東かばう「あいつに罪はない」9回2死、痛すぎる走塁死、より)。これはもう村松コーチが悪いと言っているに等しい。記者経験者なりの深読みなのだが、こういう場合、記者は監督のセリフとはいえ「村松コーチ」と肩書きを足す。「村松」などと呼び捨てのままにはしない。事実、スポーツ報知記事では「致し方ないと思います。サードの村松コーチが回しているのなら、行かないといけない。まだ確認は取ってないですけど、あいつに罪はない」と書いている。しかし東スポ記事でも「致し方ないと思う。周東の後ろのエラーなので。あそこで三塁(ランナー)コーチの村松が回したのか、回していないのかというところもあるので。まだ確認していないけど、回しているなら行かないといけない。(そうならば)アイツに罪はないので」村松呼ばわりをしている。記者がわざわざ「村松」などと呼び捨てにはしないはずだから、これは工藤監督が村松と言った可能性が高い。だいたい工藤監督は、裏では知らないが表では「周東クン」などと君付けするタイプ。村松と呼び捨てにしたり、周東をアイツ呼ばわりしているとしたら、結構頭に血が上っていたのではないか。

とは言え、個人的には工藤監督の采配が疑問だった。まず松本裕樹の続投。工藤監督が言うように、このところ好投していた松本の起用自体は間違っていない。しかし牧に逆転打を浴びる前に、あわや逆転3ランとなりそうな大飛球を宮崎に打たれている。幸い宮崎の打球は二塁打となり、ホークスはまだ1点勝っていた。最終回に投げる機会があれば岩嵜だから、板東あたりを牧に当ててもよかったのではないか。また、申告敬遠も、結果論だが松本には重荷になったのではないか。DAZNでは飯田哲也が解説していたが、満塁だと真ん中で勝負せざるを得なくなる。外角の球がアクセントである松本には、ハードルが上がってしまった感が確かにある。ソトへの初球が大きく外れたのを見て工藤監督はすぐさま申告敬遠したが、同じ敬遠をするにしても、あ、もうアカンわみたいな見切られ感がにじみ出てしまっていた。松本にはプレッシャーが余計かかったはずである。工藤監督は試合を通じて選手を伸ばそうとする所があるのではないか。モイネロ、森という勝ちパターン2投手の穴を泉、岩嵜で埋めたいが泉は登板過多。調子も落ちており、松本というカードを作りたい。そんな思いが伝わってくる。それは間違っていないのだが、勝負をかけてやるのは危なっかしい。そうやって修羅場をくぐり抜けさせて選手層を厚くしてきたのかもしれないが、やはり試合に勝ってこそではないのか…と珍しく采配に疑問を感じた逆転負けだった。

呼ばれなくなる恐ろしさ〜代打を送られた牧原と上林、そしてスタメンから外れた周東

その日2安打するのはノッている証拠だ。しかし6回のチャンスで牧原大成には代打が送られた。巨人が変則左腕の大江を投入してきたからだ。左対左は打者が不利というのは定説。しかも変則だ。ノッている牧原でも手こずると見たのか。はたまた、ここは素直に左キラーの代打川島慶三か。いずれにせよ打席には川島慶三が送られた。

ヘルメットをかぶりバットを持つ牧原に平石コーチが声をかけていた。牧原の心中をおもんぱかってのことなのか。牧原は頭では理解しつつ消化不良の表情に見えた。それでいいと思う。2安打してもダメなのかよ。牧原はそんな乱暴な言葉は発していないけど、そう思ったとしてもいいと思う。

川島慶三も大変なのだと池田親興が解説していた。さすが優しい池田さん。調子がいい牧原を引っ込めて起用されるのだから、結果を出さねばならない。そういうプレッシャーはあるのだと。もちろん川島はいつも以上に気持ちが入っていただろう。しかし川島は初球を打ち上げてアウトになってしまった。

やっぱり牧原をそのまま打たせりゃよかったじゃんというのは結果論である。牧原がタイムリーを打てたかどうかは分からない。チームとして最善手を検討した結果、川島が送られ、ヒットが出なかった。そういうことだ。牧原にできるのは、代打を送られないくらいの実績をコツコツ積み上げていくことだ。今日の悔しさをバネにするしかない。

この日は上林誠知にも代打(明石)が送られた。左投手に左の明石。上林も同じ左打者であるのに左の代打を送られて上林は悔しいだろうとまた池田親興が解説していた。上林もちらっと映ったが残念無念というか元気のない表情に見えた。それが正しいと思う。団体競技だから誰が出たとしても、チームが勝つことが最優先なのだけれど、まだレギュラーが確約されていない選手には、こうした代打や守備固めを送られた時の気持ちを忘れないでいてもらいたい。なぜオレではないのかと、オレではだめなのかと、そういう気持ちでいてもらいたいと思う。

代打を送られた牧原に、セカンドのポジションを奪われつつある周東はもっと厳しい立場である。牧原は外野も守れ、このところサードでもレフトでもしぶとい守備を見せた。コンスタントにヒットを打っており、いま周東より牧原が使われるのは当然だろう。代走ででも出てアピールしたいところだが、巨人戦ではチームがホームランを量産。周東の出番はなかなかなかった。ようやく代走で出してもらえたが、2戦目は最終回、サヨナラになりうる一塁ランナーとして出てきた。しかし前の二塁には柳田がいる。盗塁はほぼできない。つまり長打が出て初めて周東の俊足が生きるという、回りくどい起用であった。これも悔しい起用だと池田親興が触れていた。

牧原、上林、そして周東。代役を立てられることはなぜいけないのか。それは代役が活躍してしまうと呼ばれなくなる危険があるからだ。一般社会でも横一線だった人が結果を出すと頭一つ抜けてしまう。次もその人に頼みやすくなり、それが積み重なるともう自分の顔が思い浮かべてもらえなくなる。呼ばれなくなるのは寂しいものだ。レギュラーは活躍すれば賞賛され、ミスをすると酷評される。矢面に立たされるのはつらいが、もっとつらいのは何も起きないことだ。呼ばれないからミスもしない。でも活躍もできない。存在感が低くなれば戦力にならなくなる。プロ野球選手にとっては死を意味する。そのくらい厳しい世界だ。世間的にはようやく巨人が対ソフトバンクの連敗を止めた試合なのだが、ソフトバンクファンとしてはそんなことは大したことではなく、悔しい思いをした若鷹たちがどんなリベンジをするかが問題。彼らならきっとやってくれるはず…そう期待している。


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