黒柴スポーツ新聞

ニュース編集者が野球を中心に、心に残るシーンやプレーヤーから生きるヒントを探ります。

名コラムニストに必要な才能~黒田創さん「加藤博一」コラムを読んで

最近、セレンディピティーを大切にする気持ちでいられるのだが、またうれしい出合いがあった。文春野球コラム ペナントレース2020にこんな素敵な作品を見つけた。改めて「親父、すげえな」って思った…“56歳で他界”元大洋・加藤博一さんと最愛の息子の物語。作者は黒田創さん。恥ずかしながらこのコラム企画の熱心なファンではなかったゆえ黒田さんのことは「初めまして」なのだが、加藤博一というネタに引かれて読み進めた。大当たりだった。

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加藤博一。初めて知った頃はスーパーカートリオの一角。当時私は神奈川に住みながらもバリバリの巨人ファンで(成人後にホークスファンに転向)、横浜大洋ホエールズと言えば5位をヤクルトスワローズと争っていた印象だ。大人になってからはあの大洋のユニフォームはシックでかっこいいな(特に遠藤一彦あたり)と思えるが、子供心に地味に見えて仕方なかった。それでもスーパーカートリオという名前はスピード感があり明るいイメージ。特に加藤博一は引退後もっぱらプロ野球ニュースで見たが、いつも目尻を下げてニコニコしている印象。明るく楽しいキャラクターだった。

 

黒田さんのコラムには、そういうエピソードと共に、そうではない一面が描かれている。故人の足跡をたどる記事はそうであってほしい。みんなが知っている定番は抑えつつ、しかし実はこんな一面がある、と紹介する。このバランスが絶妙であればあるほど故人が生き生きと描かれる。加藤博一編では次男の眞一さんの語りを通して加藤博一の人となりが描かれる。筆者としてはとっておきのエピソードをゲットしたら小躍りしたくなるものだ。それを抑えつつ、眞一さんの語りを生かす形で作品を仕上げた。ここが素晴らしいなと感じた。きっと黒田さんと眞一さんは信頼関係が出来上がっている。そのことにジェラシーさえ感じてしまった、物書きの端くれとしては。

物語を書く時、ライターには文章力、構成力が求められる。しかしそれ以上に取材対象との距離感が大事だと個人的には考えている。この黒田さんの作品では加藤博一が亡くなる場面も描いているのだが、加藤博一の顔まで浮かんでくるようだ。最期の言葉でまた加藤博一という明るいキャラクターが印象付けられる。悲しいはずなのだが、それが爽やかさに変わっていく。そのダメ押しが加藤博一のお墓の話。写真が紹介されているのだが、こんなに素敵なお墓は初めて見た。お墓まで人柄を表すんだなとビックリした。そこまで把握できるなんて、黒田さんの丁寧な仕事ぶりの一端が見えた気がした。

まあお会いしたこともない人をよく誉められるよなと自分で思わなくもないが、これでも私は記者歴10年以上。文章が人を表すことを知っている。まさに文は人なり、と思っているから黒田さんにはぜひ一度お目にかかりたいなぁと思った。大洋ファンはもちろんそうでない方も、ぜひ黒田さんのコラム、改めて「親父、すげえな」って思った…“56歳で他界”元大洋・加藤博一さんと最愛の息子の物語、をぜひご覧ください。世の中にはまだまだ素晴らしい文章があふれている。お宝を探して、きょうもネット上を回遊しよう。

改めて「親父、すげえな」って思った…“56歳で他界”元大洋・加藤博一さんと最愛の息子の物語 | 文春オンライン

積極補強に執念で勝て~ソフトバンク内川と長谷川の代打起用を

元中日チェン年俸3000万円って何だろなと思いつつもスルーしていたが、あら、ロッテ入団やん。こりゃ井口監督は本気だなと危機感が芽生えてきた。勝利、逆転優勝への執念。これは手強いぞと不安になってきた。ソフトバンクにはこれに対抗するくらいの執念があるだろうか。

だってもう秋分の日である。この時期に新外国人を獲得する球団があっただろうか。ちなみに楽天も広島からDJ・ジョンソンを獲得。ちょっとでも成績を上げようと諦めていないのは好感を持つ。いやいや、ソフトバンク与党の黒柴スポーツ新聞としてはライバル球団たちを誉めてばかりもいられない。同じことをやってほしいわけではないが、そのくらいの執念を見せないと足元をすくわれかねない。悪い事例ならある。2016年は日本ハムが最大11.5ゲーム差を逆転。2019年は西武が最大8.5ゲーム差を逆転。シーズン終盤の逆転はままあることだ。それが今年はまだ2位ロッテとわずか1.5ゲーム差。対ロッテは苦戦しているだけにもはや差はないと言っていい。

追う立場だからかもしれないが、ロッテはやることは全部やるぞと言わんばかり。先日も巨人から澤村を獲得したばかりだ。一度「死んだ」男は強い。澤村は拾ってもらったロッテのために必死で腕を振るに決まっている。こういう選手は厄介だ。ではソフトバンクはどう対処すればよいのか……と思ったら東スポWebにこんな記事があった。積極補強ロッテに負けない! 鷹にも最終兵器ズラリ 森ヘッド「明石、内川、長谷川が待機」。そう、ソフトバンクには心強いベテランがいる。

明石、内川、長谷川。いずれも素晴らしい選手である。だが内川、長谷川は厳しい立ち位置と見た。特に内川。稀代のヒットメーカーが今季いまだに1軍の打席なし。となると考えたくもないのだが、内川とて大きな決断をせざるを得ないのではないか。かつてソフトバンクは日本一になった翌日に功労者・攝津に戦力外通告をした。内川に同じことができるだろうか。このあたりは昨シーズンの阪神鳥谷敬と重なる部分がある。結果的に鳥谷は越年してロッテ入りし、そればかりか1軍で試合に出ているからよかったのかもしれないが、内川はそこまでするのかどうか。2年続けての2軍扱いは内川に対してできない、またやってはいけないことに思える。内川はそのくらい厳しい立場なのだから、終盤戦に1軍昇格があるとしたら実質、現役続行への試験的な打席となろう。長谷川もそれに近い。

しかしそれはソフトバンクの弱点補完の意味では間違っていない。というのも現状、ソフトバンクは代打が手薄だ。すっと浮かぶのは川島慶三だが川島の代打はチャンスメイク型。しぶとく四球を選ぶかヒットで出塁するタイプだ。いわゆる代打の神様的な選手は打点が付く。そういう選手が今いない。そこへ内川なり長谷川を持っていきたい。確かに率は低かろう。しかし築き上げた顔と経験がある。長谷川は2011年クライマックスシリーズで涌井から起死回生の同点タイムリー(私は現地で生観戦していて歓喜の絶叫した)、昨シーズンもクライマックスファイナルステージ第1戦で同点タイムリーと何度ソフトバンクを救ってきたことか。内川も2017年クライマックスファイナルステージでホームランを4戦連発。ネットには短期決戦の鬼という動画まである。長谷川、内川とも実績は十分だ。

もちろんかつてと今は違う。だからこそ彼らは今2軍にいるのだが、森ヘッドが具体的に「明石、内川、長谷川」と名前を挙げるくらいだからリップサービスではないと見た。ライバル球団が積極補強で逆転優勝を狙うなら、ソフトバンクはベテランの現役への執着、執念で迎え撃つ。私は内川、長谷川の執念が見たい。ソフトバンク優勝のためにも執念を見せて限界説を払拭してもらいたい。

良書と人をつなぐ~ブログをやっていてよかったなと思う時

先日、わがブログ「黒柴スポーツ新聞」が久々アクセスを集めた。毎日200いけばよい方なのだが、9倍の1800いった日があった。昼休みに異常に気付いたのだが、どうやら週刊ベースボールONLINEで吉村禎章の記事が出たことで検索され、この記事が読まれたようだ。

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たくさんの方にお越しいただいたことはすごくうれしかったのだが、もう一つうれしいことがあった。記事の中で取り上げた高山文彦「運命」が売れた。記事の内容補完程度にAmazonアフィリエイトをやっているのだが、どなたかが購入してくださったのだ(本当にありがとうございます!)。少額なりとも紹介料が入ることもうれしいのだが、それ以上にうれしかった。

運命(アクシデント)

運命(アクシデント)

 

「運命」に興味を持ってくださったこと。そして「運命」を買ってまで読もうと思ってくださったことがうれしかった。興味を持つことと買うという行動は近いものの、実際には二つの間には深い川が流れている。最近はネット上でクチコミや評価がすぐ見られるから衝動買いはずいぶん減ったのではなかろうか。このご時世で衝動買いされる商品は素晴らしいと思う。というわけで「運命」を購入された方が衝動買いされたのかよくよく吟味されたのかは分からないが、どちらにせよ「運命」という作品に心を動かされたことは間違いない。世の中に絶対はないから確実に満足していただけるとも限らないのだが、野球にまつわるノンフィクションを読みまくった私は「運命」を自信を持っておすすめできる。

 

ブログをやっていてよかったなと思うのは「共感」できた瞬間だ。黒柴スポーツ新聞はソフトバンク与党だからソフトバンクの勝ち負けをファンの皆さんと一喜一憂したい。あるいは特定の選手を親身に応援したい。時には「あんなことはダメだろう」という批判も。そんな感じの共感だ。今回は「運命」って本は面白そうですよね、という共感ができた。数多あるブログの中からわが黒柴スポーツ新聞に来ていただいて、素晴らしい作品との縁を作っていただけて感謝。素晴らしいセレンディピティー。かくいう私も先日面白そうな本を新聞の書評で発見した。素晴らしいセレンディピティー。また近々古本屋に買い付けに行ってこよう。ちなみにこの投稿で通算900号。次は1000号目指してコツコツやります。応援よろしくお願いいたします。

周東は盗塁王になれるのか~タイトル奪取に必要な二つの要素

ソフトバンクの周東佑京が初の盗塁王に向けて進んでいる。当初はロッテの和田康史朗が好調で、逆に周東は出遅れた。しかし侍ジャパンに選ばれた「脚」はだてじゃない。9月19日には21個目の盗塁を決め、日本ハム西川遥輝とリーグトップの座を分け合っている。

周東は盗塁王になれるのか。ポイントは二つある。まずは出場機会。西川はレギュラーだからけがしたりよほど不調にならなければ毎試合出てくる。対する周東はまだレギュラーの座が確約されたわけではない。そもそも2019年にブレイクしたてだから、1年通して試合に出る、ということ自体やったことがない。それでいきなりタイトル争いをするのだから、周東には荷が重いように見える。西川は2014、2017、2018年と3回も盗塁王を取っている。経験という意味では西川にアドバンテージがある。張り合うためには少なくとも西川と同じくらい試合に出たいところだ。

そして二つ目が出塁率。そう、いくら足が速くても塁に出なければ盗塁はできない。NPBウェブサイトによると、9月19日時点で周東は.296。対する西川は.427で西川の圧勝だ。これはタイトル争いだけでなく、周東の課題。持ち味の足の速さを生かすためにはどんな形でも出塁したい。「世界の盗塁王福本豊は足の速さをイメージさせるが通算安打は2543安打。打ってもすごかった。周東がすぐ打力を付けるのが難しいのであればせめて好球必打。際どい球を見極める選球眼を磨きたい。出れば盗塁するぞ、怖いぞと思わせられたらピッチャーにはプレッシャーがかかる。とにかく簡単にはやられないイメージを持たせたい。

もちろん代走で出ても盗塁は記録されるから、周東をとっておきの代走要員にする手はある。しかし歴代盗塁王を見るとやはりバリバリのレギュラーだ。30個台でタイトルを取れた例もあるが、周東のポテンシャルならハイレベルな数字を求めたくなる。ちなみにソフトバンクでの直近の盗塁王は誰だろうか?


本多雄一。2010年に59個、2011には60個で2年連続の盗塁王。2020年はコロナの影響で試合数が120と少ないため単純比較はできないが、まあレベルの高いこと。せっかく今ソフトバンクのコーチにいるのだから、周東はしっかり本多コーチの奥義を学んで自分の力に変えてほしい。

周東が盗塁王になれたら恐らくソフトバンクのレギュラーシーズン順位は……と期待している。優勝に欠かせない周東の快速。レギュラーの座を確固たるものとし、出塁率を上げることは選手生命を延ばすことにもつながるはずだ。周東が2020年に盗塁王になれるか、興味深く見ていこう。

悔し涙を無駄にしない~周東がスタメンの座を確実にするために

あら、周東泣いてる? 周東が、タオルで顔を覆っていた。併殺狙いのはずが二塁に悪送球。この日は一塁にも悪送球していたからエラーは二つ目だ。最終回のセカンドには牧原が入った。周東が泣いていたのは交代を告げられた直後だったのだろう。ダグアウトでは川島慶三が周東と川瀬の間に立ち、何やらアドバイスをしていた。もしくは叱咤激励か。川瀬の胸を優しく叩いたり、周東の肩に手をやったり。川瀬もまたタッチアップ中の中継でまずいプレーがあったばかり。川島の即フォローはさすがである。

「悔しさが次のバネになりますよ、あそこで何も思わない選手よりは、悔しいと思える方が……」。まさに解説の池田親興が言う通りである。かつては松田宣浩も、そして今や名手と呼ばれる今宮健太も試合中に悔し涙を流したことがある。ある意味、周東もそのレベルまでは来たのかもしれない。

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前夜には二盗、三盗を決め俊足ぶりをあらためてアピールした周東。盗塁王も視野に入っている。しかし今季の周東はタイトルも大事だが、レギュラーの座が目の前、もう手の届くところにきている。だが取れるダブルプレーが取れなかったり、一塁への送球がそれるようでは心もとない。信頼に関わってくる。スタメンは、当たり前のプレーを確実にこなさないといけない。そういう立ち位置だ。周東もそれが分かっているからこそ、当たり前のプレーができなかったことに悔しさを感じているのだろう。

 

ホークスのセカンドは周東、川島慶三、明石、牧原、川瀬とさまざまな選択肢があったが、今宮離脱でまず川瀬がショートへ。明石は故障で2軍に行った。牧原は打撃に期待ができず、となると川島か周東ということになる。私は川島慶三フリークだからベテランの川島セカンドで構わないのだが、ホークスの今後を磐石にするためにはこのあたりで周東のような若手に当面のスタメンを張ってもらいたいと考えている。ショート今宮の穴を埋めるべく必死のパッチの川瀬晃、そしてレギュラーの座をつかみつつある周東という二遊間は安心しては見られないのだが、最初からうまくいくほど甘くはあるまい。悔しさを積み重ねながら、それをバネにうまくなるしかない。少なくとも周東が悔し涙を流す時点で今後には期待できる。その気持ちがあってこそ上達するというものだ。いつか周東がバリバリのスタメンになった時、この日の涙が話題になるはずだ。あの涙があったから今がある、と。失敗を無駄ではなくすることができるかどうかは、未来の自分にかかっている。頑張ろう、周東!

流れを渡さなかった陰の立役者~ソフトバンク川瀬と松本裕樹

定期購読している新聞をけさ(8月30日)読んだが、スポーツ面にソフトバンク川瀬晃の写真はなかった。松本裕樹も載っておらず、来日初勝利のムーアの写真だった。まあ順当か。西日本新聞も見てみたがこれまた迫力あるムーアの写真。2枚目は貴重な追加点のグラシアル。これまた順当か。しかしやはり黒柴スポーツ新聞は川瀬と松本にクローズアップしたい。そのくらい、8月29日の日本ハム戦ではキーとなる活躍だった。

川瀬のビッグプレーは、ソフトバンクが1-0とリードしていた5回1死一、二塁に飛び出した。先発ムーアがセンター前に抜けようかという当たりを打たれ、DAZNで見ていた黒柴スポーツ新聞編集局長も同点を覚悟したのだがショート川瀬がセカンドベース後方でダイビング。打球は間一髪グラブに収まった。そして素早くセカンド周東にトス。二塁でアウトを取ることができ、何よりセカンドランナーの本塁生還を阻むことができた。ムーアは90球を目安にしていたそうだから、同点に追い付かれていたら降板だ。ムーアは川瀬のファインプレーに後押しされ、次のバッターから三振奪い締めくくった。もちろん勝ち投手の権利を得て、である。川瀬のエラーがらみで失点した試合もこれまであったが、この日は確実にムーアを救いチームの勝利に貢献した。

そして松本裕樹。好投したムーアの後を受けて6-7回を無失点で切り抜けた。無安打、四死球もゼロだった。ロッテ戦では、2軍から昇格して即使われるもホームランを立て続けに浴びてしまった。しかし今のストレートには力強さを感じる。日本ハム戦では解説の加藤伸一が絶賛。理由は「ゲームが動きそうな6-7回を封じたから」。確かにソフトバンクがリードしていたとはいえわずかに1点。いつひっくり返されるかも分からない。松本が0点に抑えたことで流れができ、その後のソフトバンク追加点につながったとも言える。流れを渡さなかった立役者として加藤伸一がしっかり評価してくれたことはうれしかった。

新聞紙面に載っていることがすべてだ、なんて今さら言わない。むしろ新聞紙面には限りがあり、載らない話題の中には見逃せないものも多々ある。黒柴スポーツ新聞はそういうものにこそ光を当てる存在であろうと思う。だからきょうは川瀬と松本だ。ソフトバンクは層の厚さが売りではあるが、一枚一枚の層自体は一人一人の努力の積み重ねである。それを知っているとソフトバンクの試合を見るのがめちゃくちゃ面白い。うまくいくことばかりではないが、川瀬や松本らこれからの選手たちの奮闘を見守っていこう。

陰での努力を怠らない~ソフトバンク栗原陵矢、スタメン奪取後も慢心せず

こたつ記事、という言葉がある。読んで字のごとく、現場に行かずにお手軽にまとめた記事のことだ。まぁわが黒柴スポーツ新聞も一切現場には行ってないがホークス戦についてはradikoDAZNを活用して「取材」はしている。そこにスマートニュースのアプリと西日本新聞の情報を加味して、黒柴スポーツ新聞編集局長なりの見解を交えて書いている。もちろん趣味の域を出ないので職業倫理を問われるわけではないのだが。これでも元新聞記者。趣味の域を出るくらいの推敲はしている、かもしれない。愛情を込めてこのコラムを書いているが、やはり現場には勝てないなと思わされた記事があった。西日本スポーツの石田泰隆さん記事「歓喜の30分後グラウンドへ…心打たれたソフトバンク栗原の姿」だ。

歓喜、とは8月26日のオリックス戦で中村晃が放ったサヨナラタイムリーを指す。まさにホークスファンを小躍りさせる、殊勲の1打。27日の西日本新聞スポーツ面には一塁から二塁に向かう、疾走感あふれる中村の写真が掲載されている。後方にはナインが打球の行方を見ながら総立ちのソフトバンクダグアウト。盛り上がりが伝わってくる。代走牧原が一塁から長駆、ホームイン。ソフトバンクは4連勝となった。ナインもファンも余韻に浸りながら帰ったかと思いきや、激闘の30分後に栗原陵矢がグラウンドに現れたという。はて?

もちろん選手が居残るとしたら理由はアレしかない。
栗原も整備が行われる本塁横を通り過ぎ、三塁ベース横も通過していった。そこでようやく察しがついた。それから間もなくして、左翼ポール下まで歩を進めた栗原が力強くバットを振り抜いた。さらに一歩歩いて1スイング。さすがにバックネット後方にある記者席までスイング音は届かなかったが、約30分かけて右翼ポール下まで歩きながらの素振りを繰り返した」(前述の石田泰隆さん記事より)

一時期草野球に励んだ私も、高校野球経験者に教わってフェンス沿いを素振りして歩く練習をしたことがある。もちろん栗原の方が本格的なのだが、フォームの矯正が目的だったのだろうか。ボールも使わない、地道な練習である。30分前はサヨナラ勝ちの歓喜に包まれていたのだから、なおさらギャップがある。しかもそれをしているのが栗原という伸び盛りの選手。でもこういう記事を見ると、栗原がただの勢いで試合に出ているのではないと分かる。そしてまた応援したくなる。現場にいたからこそ取れるネタであり、かつ読んだ人の心をぽかぽかさせる。その熱量はこたつ記事の比ではない。何でもリアルタイムで速報できる時代ではあっても、陰で行われている努力に気付くかどうかは取材者の姿勢次第。そしてそういう人が書く文章にたどり着けるかは読み手のセンス次第だ。わが黒柴スポーツ新聞は速報では他メディアにかなわないとしても、洞察力とトリビアでは負けないよう精進していこうと気を引き締めている。栗原を見習って、地道に努力していこう。

まだまだ未熟者ではありますが……ソフトバンク川瀬が粘りと実直な人柄披露

ソフトバンク川瀬晃がいい味を出していた。まずはバッティング。8月25日のオリックス戦。先発はエース山本由伸。川瀬は第1打席ではファウルで粘り、12球目をセンター前ヒット。第2打席は四球、第3打席は左飛に倒れるも山本に9球投げさせた。そして第4打席では代わった村西から貴重な追加点となる2点タイムリー。初めてお立ち台に上がった。

そのお立ち台、上がるとアナウンサーが間違えて「ナイスピッチングでした!」。川瀬はニコニコしながらも「ありがとうございます……」。アナウンサーがすぐに気付いて「ナイスバッティング」と言い直した。この日の先発はエース千賀。当然話は千賀が前回のオリックス戦で浴びた満塁ホームラン(その裏には川瀬の手痛いエラーがあった)方面へ。「思い出しちゃいました」と川瀬は苦笑したがそれも当然。悔しい思いをしたからこそ、別の機会にやり返せばよいのだ。そう、川瀬は今宮健太が脚の故障で離脱している間、その穴を埋めることで自分をアピールすればよいのだ。お立ち台では「迷惑ばかりかけてきた」「人間的にも未熟」なんて話していたが、若いんだから(川瀬は5年目)経験はこれから積むしかない。決して饒舌ではないヒーローインタビューだったが、川瀬の実直な人柄がにじみ出ていた。鷹ガールの皆さんはキュンキュンしたのではなかろうか。

私はこの試合をradikoで聴いていた。RKBエキサイトホークスで解説の浜名千広が川瀬の第1打席の粘りについて「自信になる」と言っていたが、本当にそうだと思う。粘っただけでも価値があるが、ヒットになってさらに価値がある。しかも相手は山本由伸だったのだから。ちなみに川瀬はロッテ戦で「幻のタイムリー」を放った(井口監督リクエストによりアウト→得点なし)。その時の解説の川相昌弘は「きれいなヒットじゃなくてもいい。転がしたら得点の可能性はある。そういうバッティングを」と期待したが、川瀬はその通りセンター前に抜けようかというゴロを打った。川瀬に必要なのはこうした経験、そして結果だ。「これで今宮の離脱後、遊撃手として全5試合に先発出場する川瀬は打率3割3分3厘(15打数5安打)、出塁率4割4分4厘と期待に応えている」(西日本スポーツ記事、今宮抜けたソフトバンク、ダメージ補う川瀬の粘り=筆者は石田泰隆さん)というから、むしろ淡白な打撃が目立つ周東、牧原、上林は川瀬に負けじと奮起してほしいくらいだ。今宮健太の離脱はソフトバンクにとって痛すぎるのだが、一人の若い野手を育てるという意味では貴重な期間でもある(と前向きにとらえたい)。柳田悠岐や千賀らパワフルな兄貴たちに囲まれながら、川瀬には一つ一つの打席と守備機会を大切にしてもらいたい。期待してます!

一生懸命攻めた結果ならば~ソフトバンク石川柊太の四球論

石川柊太っていいなぁと思った。それは8月23日のロッテ戦に勝ってくれたから、だけではない。西日本スポーツ「開幕6連勝のソフトバンク石川はぶれない男 4四球は信念の表れ」には、石川の興味深い持論が紹介されていた。
「四球と安打は一緒と言っても、ツーベースとは一緒ではない。四球なら打たれた方がいいというのは、甘えだと思う。『打たれるもんか』と思って投げたボールで、四球になるのは仕方がない」

血みどろの戦いになった対ロッテ6連戦、いや、その前からホークス投手陣には四死球を出しすぎの懸念があった。が、石川は、四球に至るプロセス次第だ、と言いたいようだ。よけて逃げての四球と、厳しく勝負した結果の四球は意味合いが違う。そんなとこだろう。

プロ野球選手と会社員は働くフィールドがまったく違うが、「結果がすべて」という意味では同じである。「一生懸命やりました」では責任を免れない時もある。しかし経験を積むと先が読めるというか相場を値踏みするというか、まあこんなもんだろうと無意識に省エネしてしまいがちだ。それではいけない。省エネだけならまだいい。失敗することを恐れてだんだん勝負しなくなる。それが一番怖い。厳しく攻めた結果の四球でした。一生懸命やりましたがうまくいきませんでした。そう、どうせうまくいかないならせめて……。とにかく一生懸命やればいいんだよな。逃げるのではなく、攻める気持ちで常に立ち向かわねば。石川の強い気持ちに触発された。

先輩の抜けた穴は大きいけれど~ソフトバンク川瀬、今宮復帰まで積みたい経験値

今宮健太のけがの箇所が報じられた。ヒラメ筋。ざっくり言えばふくらはぎを傷めた、ということになろうか。復帰まで1カ月~2カ月弱だそう。Full-Countは「レギュラーシーズン中の復帰は微妙。早くてもシーズン終盤となりそう」とズバリ書いてくれていた。この手の報道はきっちり「だからどうなのか」まで書いてくれないと困る。今宮の離脱はかなりソフトバンクに打撃だということがよく分かった。

ただでさえソフトバンクはロッテに分が悪く、特にマリンでは勝てない。この6連戦前にキャッチャー田村に全部勝つくらいのこと言われて、んなことあるかい!と思ったことだがあれよあれよと3敗1分け。第5戦に負けたら1勝もできないかも……くらいの沈痛なムードだったが二保旭の粘投や柳田悠岐の先制弾・勝ち越し打などで一矢報いることができた。

 

で、今宮の代わりはというと川瀬晃ということになろうか。周東もショートをやったりするが今のところはセカンドか。牧原が上がってきたので牧原ショートかもしれない。しかし第5戦では最後まで川瀬がショートを守りきった。思い出させて申し訳ないが、川瀬は今シーズン手痛いエラーを頻発している。川瀬は何とも間が悪い。エラーすると失点に絡んでしまう。これまで千賀や東浜の時にそんなことがあった。まあ柳田悠岐風に言えばそこをフォローしきれなかった「千賀が悪い」「東浜が悪い」ということになろうが、以前王会長は言っていた。プロはミスをしてはいけない、と。王さんらしい厳しく高い理想だが、川瀬も曲がりなりにもソフトバンクの1軍スタメン内野手なのだから、やはりミス前提ではいけない。第5戦最終回は1点リードで森唯斗を投入できたからソフトバンクファンも何とか勝つかなと思って見ていたはずだが、三つのゴロアウトはすべて川瀬がさばいた。川瀬の所に打球が飛ぶ度、申し訳ないが「頼む!(ミスしないでくれよ)」とヒヤヒヤしてしまった。もちろんうまく処理してくれたからうれしかったのだが、やはりずっとそういう訳にはいかない。川瀬は今宮の穴を埋めなければならないのだから。

大概の場合、先輩の抜けた穴は大きい。しかし先輩と同じことはこなさないといけない。川瀬晃の場合は大変だ。何せ今宮は西武源田壮亮パ・リーグNo.1のショートを争う名手なのだから。といっても今宮のようなワクワクするようなプレーをファンは望んではいない。まずはきっちり一つ一つのアウトを確実に取ってくれれば……。そうしないと「今宮がいたらなあ」と言われ続けてしまう。

ペアを組む相手も課題だ。川瀬がショートの場合だが、困ったことにソフトバンクのセカンドは固定されていない。ある種調整弁的に使われるポジションなのだ。ある日は周東、ある日は川島慶三、ある日は明石健志など。ダブルプレーや盗塁対応、中継パターンなど、せめてセカンドが固定していたら川瀬はそれに対応すればよいのだが、呼吸を合わせるパターンは何通りも覚えないといけない。実は第5戦で気になるプレーがあった。板東が救援して代打佐藤に同点打を喫したのだが、そのセンター前ヒットを捕球した柳田悠岐から低めに返球がきたのだ。川瀬もしくは周東はカットせず、何回もバウンドしながらホームに到達。結果的にセカンドランナーまで生還させてしまった。ロッテは走塁や外野からの返球において、ソフトバンクを上回っていた。だから勝っている。この先ロッテと張り合うためには同じくらい精度を高めないといけない。

今宮の離脱が決まった今、川瀬はしっかり一本立ちしなければならない。レギュラーを勝ち取ったのとは異なるから明らかに川瀬は荷が重そうな顔をしている。しかし川瀬のキャリアを考えればこれはビッグチャンスでもある。チャンスだなんて考える余裕は一切ないだろう。それでもこのヒリヒリするような僅差のゲーム差での首位争いの中で、川瀬は試合に使ってもらえているのだ。しばらくは今宮と比べられるしんどさはあるが、そこは経験値が違うのだから、とにかく一生懸命打球を追うことだ。バッティングはこの際、二の次。送りバントはきっちり決める。あるいは四死球でよいのでとにかく出塁もしくは進塁打で上等だ。まずは守備で手堅く結果を残してほしい。今宮健太の早期復帰を祈りつつ、その間川瀬がどれだけ成長できるのか、ハラハラしながらも期待したい。頑張れ、川瀬!

どうせ遠回りするのなら~阪神・藤浪晋太郎692日ぶり勝利

阪神にようやく得点が記録された。しかも藤浪の内野安打で。実に38イニングぶりの得点だった。そのトンネルも長かっただろうが、藤浪晋太郎はそれよりはるかに長いトンネルを脱した。692日ぶりの勝利。その長さ、苦しさは、体験した者にしか分かるまい。

大阪桐蔭高校時代には甲子園春夏連覇を達成。阪神タイガースにドラフト1位で入団し、デビュー年から3年連続2桁勝利。年俸は2013年1500万円だったが2019年には1億7000万円になった。ところが制球難に陥り2016年ごろから成績は下降線をたどった。2019年度はついに0勝。同年代のスター大谷翔平が海を渡り二刀流に挑戦するまでになったのとはずいぶん差ができてしまった。

藤浪晋太郎―阪神タイガース (スポーツアルバム No. 46)
 

 

もう藤浪にはトレード、環境を変えるしか手はないんじゃないか?と余計なお世話を考えていたのだが、どうにか藤浪は戻ってきた。コロナ感染した時はもはやこれまでかとも思ったのだが、とにかく勝ててよかった。今の藤浪には勝ち星が必要だったのだから。久々の勝利とはいえ7回4失点。次は内容を伴う勝ちになればいいなと思う。

692日ぶり勝利を報じる記事にはこんなくだりがあった。「人の痛みが分かる。誰かの失敗にどうこう思わなくなった」。順風満帆だったら気付かなかっただろう人の痛み。それは遠回りの副産物だった。普通のコラムなら遠回りもいいよね的な締めに入るのだが、そんなのは気休めだと思う。遠回りしたら時間も労力もお金も掛かる。それよりはなるべく最短ルートが望ましい。人生は有限なのだから。じゃあ遠回りは悪なのかと言うと、それも違う。言いたいのは藤浪のように、何かしらを得られたならばその遠回りを少しは肯定できるということ。そう思えるようにジタバタすることが大事なんだと思う。自分ではどうにもできないことはいちいち悩まない、という考え方もある。しかし私はできる限り太刀打ちしたいと考える。自分の人生の主人公は自分なのだから、自分の道は自分で切り開きたい。私は阪神ファンでもないのだが、どうにかこうにか勝利を手に入れた藤浪の姿に、ちょっと勇気付けられている。

10回裏二死満塁フルカウント…大ピンチ脱した板東湧梧が手に入れたものとは

地味ながら面白かったソフトバンク対ロッテの首位攻防(8月19日)。ソフトバンクは崖っぷちまで追い込まれながら、ギリギリのところで首位をキープした。何せサヨナラ負け寸前、10回二死満塁カウント3ボール1ストライクまで追い詰められたのだから。大方のソフトバンクファンは負けを覚悟したに違いない。そこから板東湧梧がよく踏ん張った。一つストライクを奪うもなおフルカウント。ファウルを挟み、頬を紅潮させた板東は汗をかいていた。そして…………外角いっぱいに決まった、あれはカットボールだったのか? しぶといロッテ清田育宏のバットが空を切り(と思わず書いてしまいましたが実は手が出ず見逃し三振←訂正します!)、熱戦は引き分けで幕を閉じた。

若い頃の苦労は買ってでもせよ、という言葉がある。金出してまで苦労する人なんているのか?奇特な人だなと思うが、板東の渾身のピッチングを見て思った。金を出して苦労を購入するかどうかは別として、若い時にピンチを乗り越えたことは必ず自信になる、と。今後板東が先発になるのか中継ぎになるのかは分からない。しかし、どの立場になってもピンチはいずれ来るだろう。その時、「あの大ピンチを克服できたのだから」と思える経験があるのとないのとでは、落ち着き方が変わってくると思う。

そして結果と同じくらい大事なのが、ピンチの時逃げずに立ち向かえたかどうか。もしも板東が押し出しを献上しサヨナラ負けを喫していたら、負け投手になると同時に心に深い傷を負っていたはずだ。リリーフピッチャーとしての資質にも関わる深い傷を、だ。ベテラン清田は緊迫した場面で打席を外した。場の空気が一瞬緩んだし、そこからまた板東は気持ちを、集中力を高めなければならなかった。そんな細かい駆け引きにも板東は根負けしなかった。なぜか分の悪い敵地マリン。アウェイの観衆の手拍子。うだるような暑さ。その中で板東は踏ん張った。「よくやったよ」。そんなトーンで甲斐はミットを右手で叩き、マウンドを降りた板東の背中もトントン叩いていた。先日手痛いエラーをした川瀬の頭を柳田悠岐がポンポン叩いて話題になったが甲斐の背中トントンも優しさがにじみ出ていた。「あの一球を投げきれたのだから」。板東はピンチを乗りきったことで、金を出しても買えない自信と経験をゲットしたと思う。

言われなくてもやる~高谷裕亮は鷹のアンサング・ヒーロー

言われなくてもやる。これができたら確実に誉められる。8月12日のオリックス戦で、高谷裕亮が送りバントを決めた。1死一、二塁。サインは出ていなかったらしい。工藤監督が誉めていた。
サインは出してないです。出そうとはしてたんですが、初球から(バントに)構えて、意図を持って打席に入ってくれていたので任せました。相手がいい投手なので、そうチャンスはないし、前の回のチャンスでも点が取れてなかった(1死一、三塁から併殺)ので、その辺はさすがベテランだなと思うところはあります。これもチームのことを考えた素晴らしいチームプレーだと思います」(2020.8.13 Full-Count記事、鷹ベテラン高谷が好リード&先制打お膳立て 工藤監督絶賛「コーチの域に達してきた」より)

高谷に柳田悠岐並みの長打力があればここで送りバントはない。でも高谷には気遣い、心配りができる長所がある。ここは手堅く送って松田に何とかしてもらおう。そんな心境ではなかったか。その思いを十二分に汲み取った松田宣浩は見事、2点タイムリーを放ち勝利を決定付けた。

お立ち台には和田毅松田宣浩が上がった。和田の持ち味を引き出したり、タイムリーのお膳立てをしたのは高谷なのだが、高谷は呼ばれなかった。でもきっと高谷はお立ち台に上がりたいなんて思ってプレーする人ではない。まさに高谷は縁の下の力持ちなのだ。私はそんな高谷の控えめさが好きなのだが、たまには誉めてあげてほしいと思う。だからこそ、工藤監督が高谷についてきちんと働きを認めてくれたことがうれしかった。

55歳の自己改革

55歳の自己改革

 

 

アンサング・ヒーロー、という言葉を初めて知った。内田樹さんが書かれていた。
「誰かがしなければいけないことがあったら、それは自分の仕事だというふうに考える人のこと」だそうだ(2019.9.3 内田樹の研究室、道徳について より)。内田さんは例で雪かきを書かれていたが、雪かきをした人が作業を終えて帰る。その道を通る人は恩恵を受けつつも普通に歩けていることに疑問を持たない。ゆえに雪かきをした人は称賛されない。アンサング・ヒーローは頑張りに気付きもされない。気付きもされない、と書くと少々大げさなのだが、高谷は甲斐から引き継いで試合終盤だけマスクをかぶったり、控えのまま試合が終わったりすることが多い。試合に出なければいないのと同じなのがプロ野球の世界なのだが、じゃあもし高谷がいなかったら? 甲斐に代打も送れない。甲斐はこれまで以上にけがに気を付けて慎重になるだろう。だって代わりはいないのだから(九鬼という若い後継捕手はいるけれど)。まさに高谷は雪かきをした人状態なのだ。高谷が送りバントを決めた結果、松田宣浩のタイムリーが飛び出した訳だが、やはりクローズアップされたのは松田宣浩なのだ。

とはいえ、Full-Countや西日本スポーツはしっかり高谷の送りバントにフォーカスしてくれた。さすが。川島慶三二塁打、周東が四球を選び、高谷が送って松田宣浩イムリー。この流れがホークスファンにはたまらない。ホークスはこういうチームプレーで勝つチームなのだから。アンサング・ヒーロー、高谷裕亮。選手層が厚いホークスでいぶし銀の活躍をしている。言われなくても、やる。私も高谷を見習って、言われなくてもやる人にならねば。

熱い気持ちがあるうちは~ソフトバンク和田毅、グラブ叩きつけから切り替え勝利

それは目を疑う光景だった。あのクレバーな和田毅が降板直後にダグアウトでグラブを叩きつけていた。8月5日、涌井との投げ合いの中、先に崩れた。5回3失点。自分へのいらだちか。うまくいかなかった悔しさか。降板前、決まったかに見えた投球をボールと判定された時には何かつぶやいていた。歯車が噛み合わない時はすべてがうまくいかないものだ。

 

しかし和田毅が素晴らしいのは次の登板できっちり勝ったことだ。8月12日のオリックス戦では7回途中まで無失点。今季4勝目を挙げた。その原動力になったのは、グラブを思わず叩きつけていた、あの熱い気持ちだったという。
自分にもああいう気持ちがあるんだなと。普通に悔しがるんじゃなくて、あれだけ腹立たしく思えるのは悪いことではないのかな。冷めるよりは熱く
西日本スポーツ記事にはそのように、和田毅の気持ちが紹介されていた(2020.8.13 白星挙げたソフトバンク和田が1週間前の“事件”振り返る「自分にもああいう気持ちが」鎌田真一郎記者)。そう、そんな熱い気持ちをアラフォーだって持っている。

 和田毅は39歳。いわゆる松坂世代だ。球界を彩った彼らもベテランの域、あるいは引退し、平石洋介のように監督まで務めた人もいる。その中で和田毅はまだローテーション投手である。人を年齢で判断してもいけないが、和田毅はまだまだやれそうだ。自分でも気付いていなかった熱い気持ち。それがあるうちはまだマウンドを降りられない。エース千賀とも、柱の石川とも勝ち星を張り合えている。ベテランであっても気持ちがあるうちは……。老け込むのはまだ早いぞ。和田毅のグラブ叩きつけは、アラフォーたちへの叱咤激励にも見えてきた。

「千賀が悪い」柳田悠岐は最高の先輩~川瀬もチームも救った規格外逆転ホームラン

おまえは悪くない、千賀が悪い

千賀が悪い。柳田悠岐が発したこの言葉こ、下半期なら確実に新語流行語大賞行けるなと笑ってしまった。いや、ぜひ日本シリーズ4連覇してオフの流行語大賞表彰式に出席してもらいたい。

だいたい、いまのご時世、責任の追及、自粛警察等々、世知辛すぎる。コロナ禍のせいだと思いたい。みんな余裕がなくなっているのだ、と。わがブログ「黒柴スポーツ新聞」では、1年前に書いた記事「悔しさを忘れない~ソフトバンク川瀬に見せたい名手・今宮健太の涙」にアクセスが集まり、ブログ内の注目記事にランクインしてしまった。この記事そのものは川瀬にエールを送ったものだから、またしてもエラーしてしまった川瀬へのフォローになればなと思う。もちろん川瀬にはレベルアップを期待している。

tf-zan96baian-m-stones14.hatenablog.com

川瀬へのフォローと言えば、あらためて柳田悠岐の逆転ホームランは最高だった。柳田自身、ミスでチームに迷惑をかけた経験があるという。だからこそ下を向いてる暇はないぞと川瀬に言いたかったのだと思う。さらに「千賀が悪い」と言ったのは「エースなんだから何とかしろ」的なメッセージが込められていた。「千賀が悪い」と聞いたスタジアム内からは笑い声が上がった。柳田悠岐のスパイシーなディスりぶりだなと思わせておいて、その中にはエース千賀への叱咤激励が込められていたとは……ホームインしてから川瀬への頭ポンポンを含め、柳田悠岐はかっこよすぎる。これぞパイセンの鑑(かがみ)。先輩や上司はかくありたいものである。


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