続かない苦しい努力はしない~中日・山本昌「133キロ怪速球」を読んで
2020年は読書に力を入れよう、そう考えている。年末にいくつか読み、元日も続きを読んだ。読み終えたのはこれ、山本昌著「133キロ怪速球」(ベースボール・マガジン新書)。私はソフトバンクファンだから元日から山本昌じゃなくても、とも思ったが、なかなかためになるくだりがあった。読書イヤーとしては幸先いい。
本の中で山本昌は、自分は特別の才能の持ち主ではないと表現し続けていた。本の最後にもそう書いていた。名球会入りしているし、ノーヒットノーラン(しかも史上最年長)達成者でもある。最多勝3回、最優秀防御率、沢村賞にも輝いた。特別な人でしょ、と今でも思う。しかし「133キロ怪速球」を読むと、数々の運や縁を大切にし、ひたむきに野球を続けてきたからこその成績だということが分かった。
また、山本昌は10.8の当事者でもあり(登板機会はなかったが)、その内幕にも触れている。その日は巨人が勝ったので巨人が優位だったと思いがちだが、巨人の投手のやりくりは厳しかったこと、そして中日は勝つムードがあったと書いてあった。10.8については鷲田康著「10・8 巨人VS.中日 史上最高の決戦」が詳しいが、今回山本昌の証言も興味深く読めた。
「133キロ怪速球」は七つの章から成っている。一番面白く読んだのは選手時代のエピソード以上に第7章の「正しい努力の方法」。本の帯に「小さな努力をコツコツと」と書かれていることに後から気が付いたが、そういうことが書いてある。中でも「続かない苦しい努力はしない」という小見出しが印象的だった。こういう考え方もあるんだな、と勉強になった。努力を続けるのにもコツがある。やるかやらないか、じゃなくて、続けてやるにはノルマを減らしてでもやる、でもそうする代わりに続けるのだ、と書いてあった。山本昌は人に誇れる才能があるとするなら「継続力」なのだそうだ。