黒柴スポーツ新聞

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強行策失敗は危機を招く~ソフトバンクCSファイナル進出に黄信号

選手にフォーカスすることが多かったが、きょうは戦術について語りたい。ズバリ3回裏ノーアウト一塁からの強行策は失敗だった。2019年クライマックスシリーズファーストステージ、ソフトバンク楽天での話。ソフトバンク明石健志がヒットで出塁するも、今宮健太は送らずレフトライナーに倒れた。

今宮健太を責めるつもりはない。センターライナーは鋭い当たりだった。ズバリ批判の矛先は工藤公康監督。ここは送ってチャンスを拡大させるべきだった。なぜなら短期決戦だから、勝たねばならないからに他ならない。

今宮健太は初回に同点ホームランを放っており、調子は悪くないのかもしれない。打たせるのは確かに一つの手であった。だが、繰り返すが短期決戦。結果がすべてなのだ。ファンが試合後あれこれ語るのはズバリ結果論で、空虚なものかもしれない。しかし送りバントをさせてほしかったのには理由がある。

まずは千賀滉大の不安定さ。いきなり初回浅村に先制ホームランを浴び、3回オコエにも打たれた。内川聖一が2回に勝ち越しツーランを放っていたからまだ勝っていたが、1点差になった後は四球を連発し満塁になった。何とか後続は断ったが大量失点の危機だった。

ソフトバンクが手堅く送りバントしなかったのはそのピンチの裏なのだ。フラフラのエースを一刻も早く援護するのが打線の責務であり、作戦ではなかろうか? あれだけ貧打に苦しんだのなら、少ないチャンスを有効に活用しないと勝てない。そう、二つ目の理由はこれ。後半戦打てずに苦しんだのなら、まずは得点圏にランナーを送り、得点の可能性を高めるのが合理的だと思うのだが。今宮は犠打の名手でもある。

結局この3回、ソフトバンクは今宮がランナーを進められず、グラシアルは内野ゴロでゲッツーは何とか免れた。続く柳田悠岐がヒットを放ってグラシアルが一塁から三塁まで進みチャンスは拡大したが、デスパイネが倒れて追加点は奪えなかった。ランナーを二塁に進めた上で、グラシアル、柳田悠岐デスパイネの中から得点を期待する。それでよかったのではないか。そうしなかったのはアウトを与えることを惜しんだからなのか。中軸が打てないから、あわよくばノーアウト一塁二塁さらにはノーアウト一塁三塁を望んだのか。だとすれば中軸はあまり期待されていないのかもしれない。そう勘繰ってしまうほど、作戦の意図を汲み取れずにいる。

作戦の意図が分からない試合を見るのはなかなかしんどい。試合途中、立花コーチを中心に円陣が組まれ、中では松田宣浩も手を叩いて鼓舞していたが、結局得点は前半だけ。工藤監督含め、ファイティングポーズを見た気がしないのはなぜだろうか。9回に送り込んだのは高橋純平。逆転するためには1点差を守りきらねばならない。高橋純平も勝ちパターンの一角だが、ここはチームを鼓舞する意図も込めて森唯斗投入が見たかった。

 

考えたくもないが、2戦目負けたらソフトバンクの2019年は終わる。たった一つの送りバントだが、もしソフトバンクがCSファイナルステージ進出を逃したら、分岐点はこの回だと私は見る。そう、結果論だけれども。勢いのある時はイケイケでいい。しかし盛り下がっている時こそ、少ない可能性は拡大すべきではなかろうか? もがくエース、バットが湿る中軸に少しでも結果が出るよう整えるのがベンチの役割のはずだ。千賀の4被弾ばかりクローズアップされがちだが、この強行策失敗は看過できない。

ソフトバンクファンが「タラレバ」を言うためには何としても2戦目を勝たねばならない。パ・リーグは過去、ファーストステージ初戦に勝った15チーム中、13チームがファイナルステージに進んでいるという。圧倒的に不利なデータはあるが、今の戦力とチーム状態で勝つためには、ということを考えて戦ってもらいたい。


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