敵が一番いい状態で勝負する~智弁和歌山の黒川、星稜エース奥川に熱中症対策アシスト
甲子園の歴史に残る名勝負がまた一つ生まれた。智弁和歌山対星稜。名門同士のぶつかり合いにふさわしく、いつ終わるとも分からない展開。得点が入りやすくなっているはずのタイブレークも意味をなさないほどの奥川恭伸の豪速球、そして智弁和歌山の鍛えられた守備力。どこまで続くかと思った矢先、星稜・福本の劇的なサヨナラホームランが飛び出した。
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ホーム付近に整列した時、奥川は泣いていた。校歌を歌う時も涙をこらえきれなかった。大会ナンバーワン投手の涙。松坂大輔を思い出した。松坂もまた、あのPL学園との延長戦でチームメイトの常磐が決勝ホームランを放った時に涙を流していた。
奥川はなぜ泣いていたのか。松坂大輔のように、チームメイトへの思いもあったと思う。だが、智弁和歌山への思いもあったと、デイリー記事、智弁和歌山が友情の手助け 黒川が星稜奥川に熱中症対策の錠剤を渡す「素晴らしい投手」を読んで知った。
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あの名勝負の最中、敵のことを考えていたなんて。さすが黒川史陽。名門智弁和歌山のキャプテンはかくも素晴らしいものなのか。もちろん奥川が延長11回にふくらはぎをつったのは試合を見ていた人なら皆知っている。だが、まさか敵の黒川が奥川に手をさしのべていたとは……。
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同世代の日本代表というつながりはある。しかし舞台は甲子園。何がなんでも勝ちたいと思うのが当たり前だし、それがモチベーションになるから信じられないプレーやドラマが生まれる。しかし勝負を超えた清々しさを感じる黒川のファインプレーだった。
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「どちらも日本一を目指している。自分も本気だから、奥川にも一番良い状態で、本気で来てほしかった」(朝日新聞記事「こういうところが強さ」星稜・奥川が智和歌に感謝の訳 より)
足を引っ張り合う、我田引水、自分勝手な人が多い世の中に対するツーレツな一言である。久しぶりに正々堂々という言葉が浮かんだ。
日本一を目指す熱い思いを託された奥川はあす8月18日、準々決勝第3試合の仙台育英戦に先発するのだろうか。智弁和歌山戦で14回165球を投げ、被安打3、奪三振23。登板はするにしても先発はないとみた。昔ならいざ知らず今は投手の酷使に敏感だ。いや、そんな空気を読んでの温存ではなく、奥川のコンディション第一に起用法を考えてもらいたい。もう黒川は甲子園にいない。優勝までの逆算と、一発勝負が続くトーナメント。星稜はおろか石川県勢初の甲子園制覇もかかっているだけに、奥川の起用法は大注目だ。