黒柴スポーツ新聞

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求められた役割を果たす~ソフトバンクの左キラー川島慶三と長距離砲デスパイネ

8月12日の日本ハム戦は目の覚めるような速攻だった。左キラー川島慶三が1番に入った。レフト前にしぶとく安打を放つと、今宮健太送りバントで二塁へ。内川聖一のタイムリーで一気にホームに帰ってきた。

川島慶三については解説の若菜嘉晴が誉めていた。

「やるべきことが分かっている」
「四球(を選ぶ)、セーフティーバントと、相手の嫌がることをやる」
これはそのまま川島慶三の存在価値を表している。

 

工藤公康監督も川島慶三の存在感を評価していた(8月11日のfull-count記事 鷹、Vへ鍵握るベテラン川島の復帰 工藤監督も全幅の信頼「戻ってきたことで…」より)。声がけが具体的だし、タイミングもよいのだろう。そんな評価を聞くと、ぜひ川島慶三には将来的にコーチとして入閣してもらいたいなと思ってしまった。もちろん川島慶三フリークとしては1年でも長く現役でいてもらいたいに決まっているが。

 

私が注目したのは、冒頭紹介した速攻で川島慶三がホームイン後に見せたガッツポーズ。両手を突き上げてジャンプしているのだ。これには二つの意味がある。まずは川島慶三がこの得点シーンをイメージしていた可能性が高いこと。自分が出て今宮健太だから送りバントで進塁できるはず。3番は内川聖一だからヒットが見込め、外野まで抜けたら先制のホームインだ……そんなイメージを作っていたら本当にそうできた。だからあんなに喜んだのではないか。

 

そして二つ目はこの試合における先制点の重要性を川島慶三が意識していたことだ。もう日本ハムが3位に後退しているがこの3連戦は直接対決で、ソフトバンクにしてみたら一気にゲーム差を付けられるチャンスだ。日本ハムにしてみたら一つでもゲーム差を縮めたかったが2連敗。何とか一つでも勝ちたいと3戦目は思っていたはずだ。そこでソフトバンクが先制点を奪う。心理的にも日本ハムに3連敗をちらつかせる効果はあった。1点でも効果的だったのだがさらにデスパイネが2ランを放ち初回に3点を奪ってしまった。終盤少し追い上げられたが試合の流れは初回に形成されたと言っていい。先制点の重要性を誰よりも理解している。だからこそあんなに喜んだのだと思う。

 

日付を越えた翌8月13日の楽天戦も初回に川島慶三が四球で出塁。相手はまたまた左腕の弓削だった。川島慶三は本当に自分の役割をわきまえている。この回ソフトバンクにタイムリーは出なかったが、川島慶三は内野ゴロの間に先制のホームを踏んだ。ヒットを打たなくてもチームに貢献する方法はある、と川島慶三は教えてくれている。

 

この2日間でもう一人、自分らしさを発揮したのがデスパイネ。12日に2本のホームランで5打点の大暴れ。特に8回の3ランは日本ハムにとどめを刺す一撃だった。そして13日の楽天戦でも8回に貴重な追加点となるソロホームラン。これで30号となった。8月のデスパイネは本当にいいところで一発が出る。

 

川島慶三デスパイネみたいな打球は飛ばせない。そしてデスパイネには川島慶三みたいな小技はできない。そして二人とも、そんなことはやらなくていい。おのおのが求められた役割を果たせばよいのだ。それができたからきのうもきょうも勝てている。

 

役割を果たすためにもまずは自分がどんな役割を求められているかは把握しておきたいものだ。私はかけ出しの記者のころ先輩に「頑張るベクトルが違う」と言われてへこんだことがある。頼まれていないことでも頑張って結果を出せればまだよいが、頼まれていないことで失敗するのはみじめなものだ。効率主義という意味ではなくて、やはり貢献するためには今自分が何をすべきかはきちんと理解しておきたい。

新聞記者 (角川新書)

新聞記者 (角川新書)

 

 

 

川島慶三デスパイネ。似ても似つかぬ二人だが、求められた役割を果たしているのは全く同じ。他にも中・長距離砲のグラシアル、守備の要の今宮健太、背中で語れる千賀滉大、元気印の松田宣浩、強肩の甲斐拓也、俊足の周東佑京などなどソフトバンクは個性や特性を上手に組み合わせている。だからこそ見ていて楽しい。長所を生かした野球をするソフトバンクにこれからも注目していこう。


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