黒柴スポーツ新聞

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地位は与えられるより奪う~阪神・大山が6番降格の日にサヨナラホームラン

スポーツニュースを見ていたら、広島が勝つんだなという構成だったがスコアが出てびっくり。8月10日は阪神がサヨナラ勝ちした。大山悠輔がサヨナラ3ランを放ったという。さすが4番だな、と思ってDAZNを見返してみて気が付いた。大山は6番に降格されていた。

「ランナーを返すことを考えた」と大山は振り返ったが、どうだろう。おれが決めてやる。そんな野心はいくらか芽生えなかったか。別に偉ぶれという意味ではない。4番を張る選手にはそのくらいの強烈な自負がほしい、そういう意味で、だ。

 

自分で自分の進路を決められる人は自分で責任を負う代わりに自由を手にできる。しかし誰もが自分で自分の進路を決められるわけではない。大山とて4番を任してもらいたいと思っても、頼りないと思われたら4番では使われない。結果を出し続けねばならないのだ。

 

新聞記事には大山の4番は与えられたものなんて書かれていた。将来性を見込んでの先行投資という意味合いもあるのだろう。だとしても誰もが4番を張れるわけではない。大山には大山の、4番としての自負はあるはずだ。それが6番に降格となった。

 

言い渡された時はどんな気持ちだっただろう。悔しかっただろうか。やり返したいと思っただろうか。ヒーローインタビューでは、6番で使われたらそこでやれることをやるというようなことを殊勝に話していた。アナウンサーに、4番サード大山が待たれていると水を向けられても、頑張ります、と短く答えた。そう、大山が正しい。何かを語るよりも大山はバットで答えればいいのだ。

 

矢野監督とて6番での起用については迷いを匂わせた。しかし4番を取ってほしいとも語っていた。そうだ。大山がこれから4番に座るとしたらそれは、実力で手にした座でなくてはならない。

 

若き4番である巨人の岡本和真にも同じことが言える。右の長距離砲としての期待から高橋由伸前監督が種を植えた岡本だったが、昨年大ブレイクしたものの2019年は思うような結果が出ているとも言えない。4番を外れた日もあった。だがヤクルトから13年ぶりに7点差をひっくり返した試合でのホームラン2発など勝負強さを発揮しだした。結果を出し続ければもう与えられた4番とは言われない。

 

人生初のサヨナラホームランが6番降格の日に出た。矢野監督は「何かある」と話していたが、何かあるに決まっている。くそったれ。別に降格を嫌がるとかそんなに小さな理由ではない。結果が出ない自分のふがいなさに対する怒りもあろう。それはバットを力強く振り抜くことでしか打ち破れない。

阪神タイガース 選手フォトタオル (3大山)

阪神タイガース 選手フォトタオル (3大山)

 

 

 

ここでホームランがでればサヨナラだ、打ってみろよ。野球の神様が大山を試したようにも思える。それに大山は一発回答した。チャンスで打席が回ってくる、というのもスター選手に求められる要素だ。打てれば誉められ、打てなければこき下ろされる。特にタイガースファンは厳しいだろう。だが大山はそこへの挑戦権を持つ、数少ないバッターである。きょう早速4番に戻るのか、少し様子が見られるのかは分からないが、大山の4番復帰を楽しみに待ちたいと思う。


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