黒柴スポーツ新聞

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考えることは悪くない~ソフトバンク上林、本多コーチに「笑顔になれ」と言われた日

試合前、上林誠知が本多雄一コーチにこんなことを言われていたという。出典はRKBエキサイトホークス。

「誠知、考えすぎるな。もっと笑顔でプレーしろ」

確かに、上林がニコニコしているシーンをほとんど見ない。それも仕方ない。今年の上林はようやく打率が2割になったところなのだ。

 

上林とすれば白い歯を見せている場合ではない。だが考え過ぎて凝り固まってしまうのも考えものだよ。本多コーチが言わんとするのはその辺りではなかろうか。笑顔になることで多少肩の力を抜くことができるかもしれない。

 

「考えることはいいです」

ラジオ解説の多村仁はそう話していた。

「引き出しが増えることですから」

「乗り越えたらさらなる結果が出る。成長できますから」

 

多村さんは不調の時、どうしてましたか?と聞かれると「逆にバットを振らない、練習しない。悪いものは捨てる」とまさかの回答。なるほど、そういう手もあったか。そんな多村仁も晩年はバットを振ったという。筋力を落とさないためでもあったが、感覚は体で、頭で覚えるからだそうだ。

 

上林は感覚をリセットするために敢えてバットを持たないのか、練習することで効果的な打撃を体に覚え込ませるのか。どちらをやるにしても、上林にはもっと打ってもらわないと困る。前田智徳みたいにストイックになる、近寄りがたいイメージになる。それでも構わないが、まだまだ若いし、弾けちゃってもいいんじゃないか、と思っている。

 

この日はようやく8回に松田宣浩がタイムリ二塁打を放って同点に追い付いた。レフトスタンドが盛り上がったのも束の間、上林が倒れてチェンジになってしまった。見逃し三振。外角いっぱいの判定だったが、上林は「外れてるよ!」と不満そうにアピールした。それはいかにも、本多コーチが望んでいる笑顔の真逆の表情だった。

 

結果が伴わなければ笑顔も何もない。上林はきっと真面目すぎるのだろう。しかし真面目な人ほど力を抜くのは難しい。考えすぎるなと言われても考えてしまうのだ。それでも、多村仁が言うように、考えること自体は意味はある。そして本多コーチが言うように、自分で乗り越えるしかない。その先にはきっと新しい上林がいるはずだ。笑顔でプレーする上林を、1日も早く見てみたい。


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