黒柴スポーツ新聞

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才能ある人が結果を出せない不思議~ソフトバンク甲斐野が4四死球で決勝点献上

不思議だな、と思う。甲斐野が1イニング4四死球(申告敬遠含む)の乱調で日本ハムに決勝点を与え、敗戦投手になってしまった。負けること自体は、まだ若干の不安要素がある甲斐野だからあり得ないことでもない。だが、不思議だと思ったのは157キロを投げられる人でも思い切って投げられないことがある、という事実にだった。

 

たぐいまれな才能がある人をうらやましく思う。なぜいとも簡単に、そして、どうしたらいつも結果が出せるのか。ずっと前から、そして今なおジェラシーの塊である。だから才能がある人の気持ちは分からない。いつもうまくいっている人だからこそのプレッシャーはあるかもしれないし、実は見えないところでかなりの努力をしているのかもしれないのだが。決して天狗には見えないのだが、ルーキーながら抑えに起用されている甲斐野に対しても、エリートである印象を持っている。

 

だからこそ不思議だった。四球、死球送りバント、申告敬遠。三振一つは奪ったものの押し出しと、自慢のストレートやフォークで打者をねじ伏せてきた甲斐野のピッチングは影を潜めていたのだ。球速は150キロ台を出せていたから開き直っていなかったわけでもなさそうだ。しかしわずかに低めだったり、わずかに内角すぎたりと、いまいち攻めきれてない印象だった。

 

工藤監督は、「投手はこういうときもある。悔しさを乗り越えて前を向いて切り替えてやってほしい」(スポニチ記事より)と甲斐野をかばったが、あれだけのストレートやフォークがありながら攻めきれないというところがピッチングの奥深さ、ピッチャーの繊細さなのかもしれない。球速が出るだけで抑えられたらみんなそういう練習、トレーニングをするはずだ。

ピッチャー視点で“観戦力

ピッチャー視点で“観戦力"を高める 工藤公康のピッチングノート

 

 

 

甲斐野はデビューから無失点記録を作った後、手痛い被弾も経験している。守護神の森唯斗が離脱してからは9回を任せられる機会が増えたが、代役となった交流戦のヤクルト戦では3点差だったのに3四死球でツーアウトしか奪えず、嘉弥真に救援を仰いだことも。崩れる時は止まらないことがあるようだ。

 

それは抑えにはあってはならない。せめて、勝負しないといけない。日本ハム戦ではラジオ解説の岸川勝也が言っていた。「(こういう場面は)抑えるか打たれるかですよ」と。前日打ち込まれた大竹耕太郎もそうだ。何か、かわす気持ちがどこかにあったのではないか。大竹の場合は最近4試合がすべて4失点以上と結果が出ていなかった。それで腕が振れていなかったのなら、結果を気にしすぎだ。

 

かくいう私も切り替えの下手さは超一流だから人のことをどうこう言えないのだが、大竹も甲斐野も素晴らしい才能があるのだから、もっと思い切ってやればいいのになあ、と思ってしまうのだ。最初は無我夢中でやって結果が出ていたのが、ぼちぼち考える余裕が出てきたために、逆に考えすぎてはいないか。だとしたら守りに入るのはまだまだ早い。

 

幸いソフトバンクはまだ首位だ。日本ハムに連敗して5ゲーム差に縮まったが、この連敗くらいまでは吸収できる。ただし3連敗したら危ない。何せ栗山日本ハムはかつてソフトバンクに対して11.5ゲーム差をひっくり返した実績があるのだから。ソフトバンクはまもなくグラシアルとモイネロがキューバ代表活動のため離脱する。二人がいない間は最低でも首位をキープしておきたい。

 

そのためには大竹にも甲斐野にも結果を残してもらわないといけない。打たれる怖さはまだまだあるだろうけれど、工藤監督が言うようにそれを糧に成長するしかない。どうせうまくいかないにしても、せめて納得いくパフォーマンスはしたいものだ。大竹と甲斐野には自分の持ち味を発揮し、次回登板で取り返してもらいたい。


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