黒柴スポーツ新聞

ニュース編集者が野球を中心に、心に残るシーンやプレーヤーから生きるヒントを探ります。

回り道に意味はあるのか~日本ハム上沢直之、膝に打球直撃で今季絶望的

人生に無意味なことはない。そう言うのは簡単だ。決して無駄なことはない。そう言い切れるのは勝者のみである。苦しいことに意味を見いだせることができる人は強い人だ、と私は思う。では上沢直之はどうだろうか。今季日本ハム開幕投手を務め、ここまで5勝を挙げながら、先日のDeNA戦で膝に打球が直撃。全治5カ月の重傷を負ってしまった。

 

日本ハム栗山英樹監督も沈痛。「何かメッセージがあると思っているけど、ナオに野球の神様は何を求めているのか……。ナオも苦しいし悔しいと思う。大きなメッセージがあると思ってやるしかない」(full-count記事より)というのは偽らざる気持ちだろう。

 

野球が教えてくれたこと

野球が教えてくれたこと

 

 

 

野球の神様は時に残酷なことをなさる。コツコツ頑張っている人にスポットライトを当てる役回りでもいいのに、わざわざ悲劇を演出したりする。野球の神様は相当のドラマ好きである。プロ野球ファンは野球の神様のさじ加減一つで右往左往する、哀れな生き物である。もちろん神様のおかげで死ぬほどハッピーになれたりもするが。

 

野球の神様がくれたもの

野球の神様がくれたもの

 

 

 

上沢直之に打球が直撃したことはペナントレースに影響必至だ。楽天ソフトバンク日本ハムが上位を争う展開で、楽天ソフトバンクは上沢とやるかやらないかでは全くハードルの高さが違ってくる。私はソフトバンクファンだから上沢が今季絶望的になったことは客観的に追い風なのだが、そういう悲劇で日本ハムを上回ったとしてもうれしくない。日本ハムファンだって柳田悠岐やグラシアル、中村晃が離脱したことでペナントを奪回してももろ手をあげては喜ばないだろう。もちろん優勝は喜ぶとしても。

 

日本ハムは有原航平がすでに8勝と絶好調。エース級の働きだが、上沢がけがしなければ有原と上沢がエースの座を争うシーズンになっていた。その意味でも上沢のけがの意味はとてつもなく大きい。栗山監督が野球の神様にけがの意味を問いたくなる気持ちはすごく分かる。上沢にこの試練をどう意味付けさせたいのか。

 

起きたことすべてに意味付けをする考えを、私は鬱陶しく思ったりもする。それは何らかの意味があるんだよ、と第三者に言われても素直に受け止められない。実際、上沢にしてみれば着実に力をつけてきて開幕投手の座をゲット。2019年に結果を残せばエースの称号を得られたかもしれない。それが今季絶望的。悔しくないはずがない。

 

長期離脱に意味を見いだせなんて、簡単に言えることだろうか。病と闘う水泳の池江璃花子、けがで代表から離れた体操の村上茉愛もそう。アスリートにとって時間は有限だから、追い込まれているのは間違いない。長期離脱をしなければ才能はますます花開いたはずだ。故障や心身の不調に意義付けをするのはさも優等生的な回答に思える。池江璃花子が耐えられているのは彼女に芯があり、周りが彼女を思いながら支えているからではなかろうか。誰もがアクシデントを受容できるわけではない。

 

結局、起きたことに意味があったか、なかったかを決めるのはその後の自分。傍目には不幸に見えても本人が納得できていれば周りがとやかく言う話でもない。上沢が将来、あの重傷に意味があったと思うかどうかは、けがからの回復具合や復帰後の成績、さらには引退後の環境にもよると思う。

 

さんざん悲観的なことを書いたが、もちろんリハビリがうまくいって、けがを糧にしてもらいたいに決まっている。無事復帰したあかつきにはソフトバンクとガチンコの勝負して、もちろんソフトバンク打線に上沢をノックアウトしてもらいたい。幸い、上沢の膝の手術はうまくいったようだ。上沢にはこの試練をどうにか乗り越えてもらいたい。きっと、この苦境に意味を見いだせるだけの力があるはずだから。


福岡ソフトバンクホークスランキング