黒柴スポーツ新聞

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ミスを意味のあるものにする~ソフトバンク千賀がソトに満塁ホームラン喫する

150キロを超すストレート。そしてお化けフォーク。千賀滉大はもはや完成されたピッチャーだと思っていた。が、6月14日のDeNA戦でソトに打たれた満塁ホームランを見て、彼自身思っただろう。まだまだだ、と。チームにとっても大きな被弾であったが、千賀にとっても忘れられない一発になったに違いない。

 

ホームランがピッチャーを育てる、ということもある。1971年日本シリーズ王貞治山田久志に浴びせた起死回生の逆転3ランは有名だ。このシーズン22勝。飛ぶ鳥落とす勢いの山田久志に多くの学びを与えたことが通算284勝につながった、というのはいささかざっくりしすぎだが、示唆に富む一発だったことは間違いない。

山田久志投げる (小学館文庫―野球花伝書)

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千賀もこの日の被弾を意味のあるものにしなければならない。いや、すでに多くを一瞬で悟ったからこそしばらくマウンドで膝に手をやっていたのだろう。あの一球はボール要求だったという(日刊スポーツ記事より)。しかもボール要求を見落とした。これはミスだ。外すつもりでなかったとしたらストライクを取りにいったのか。球速は十分出ていたが中途半端な1球に見え、非常に悔やまれる。結果論だが変化球で空振り狙いでもよかった。エースだから真っ向勝負は当然かもしれないが、ゴロでもフライでも、とにかくアウトに仕留めたかった。千賀はきれいに勝負しすぎた。それが千賀の魅力でもあるのだけれど。

 

球速と伝家の宝刀の威力は十分。であるから今回のソトのホームランは、千賀の課題がここ一番での制球力であることを浮き彫りにした。コントロールを高めることはすべての投手に共通するから千賀だけの課題ではないが、結果を出すのは狙った所に投げ込めた人。DeNAは8回二死からパットンが内角のストレートでグラシアルを空振り三振に仕留めたし、9回は二塁にランナーを背負いながら山崎康晃が甲斐拓也を見逃し三振に封じた。最後の外角いっぱいのストレートはこれぞプロという1球。救援で億単位の年俸をもらうだけのことはある。

 

先発と抑えは求められるものは違うが、ここ一番での制球力が問われるのは同じだ。2019年の千賀は前半戦途中ですでに3桁の奪三振であり、決してコントロールに難があるわけではない。しかし2018年、西武との天王山初戦で浅村にホームランを浴びて結果的にチームが3連敗しペナントを逃したことからも、ここ一番で被弾しないようにすることは依然として課題のはずだ。打たれたホームランをなしにはできないのだから、大事なのはこれから。終盤にランナーを貯めて苦しんだり、手痛い一発を浴びたりしないよう、ソトの満塁ホームランをよい教訓にしてほしい。今回の被弾は千賀がますますレベルアップするきっかけには十分なりうる。


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