黒柴スポーツ新聞

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険しい山を登るから鍛えられる~ソフトバンクの早めの継投に一石を投じる

2018年シーズン、ソフトバンクの投手陣は規定投球回数到達者ゼロだった。2019年もリリーフ陣は連日の出番をこなしている。このままでは登板過多にならないか、心配になってきた。そしてきょう5月12日は継投が裏目に出てロッテに逆転負けしたからなおのこと、不安が頭をもたげてきた。このままでは骨太のピッチャーがいなくなってしまうのではないか、と。

 

かつてサファテが先発陣の降板が早い状況に注文を付けたことがあった。先発陣も「あとはよろしく」なんて思ってはいないだろうが、実情は「あとはよろしく」である。リリーフ陣は登板することで評価されるから決して損ではない。だが得とか損とかではなく、スタミナが切れそうになったりピンチを向かえた所でいつもいつも降板していては、先発ピッチャーとしての足腰は鍛えられないのではないか。

 

例えが極端なのは承知しているが、あるピッチャーのことを思い出した。元巨人の槙原寛己。初先発初完封という最高の結果を残したのだが、何と延長10回を投げきった。しかも1-0。しかも甲子園での阪神戦。しかも雨が降った。しかも槙原はまだプロ2年目だった。現代野球ではここまで引っ張らない。もし負けた場合は相当批判されることだろう。

 

ちなみに当時の監督は藤田元司。別に藤田でなくとも時代がそれをよしとしていた。ピッチャーは完投してこそだという考え方は今や少数派。酷使にもつながりかねないから私も投手分業制はよいと思う。このあたりはもう行間を読んでくださいレベルなのだが、やはり険しい山を登っていくことでこそ鍛えられる足腰はあると思う。そう、特に精神面で。

 

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槙原は通算159勝。その礎になったのはあの初先発初完封した甲子園での阪神戦ではないかと思う。延長10回、ツーアウトから迎えたのは4番の掛布雅之。藤田監督はひょっとしたら、仮に掛布にホームランを打たれたとしても槙原が勝負を挑んだ結果だとしたら、それで納得できたのかもしれない。目先の1勝は失うが、槙原がプロでやっていくために必要なものを手に入れられるならばそれでもいい、と。

 

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ソフトバンクに当てはめると、高橋礼やミランダはまだ一人立ちした感はない。バタつく前に降板させられている印象だ。きょう5月12日のミランダは5回を終えて降板したがまだ2点差で勝っていた。もちろん一番近くで見ている監督、コーチが起用法を考えているのだから、理にかなっているとは思う。そして楽天戦といい、ロッテ戦といい、リリーフ陣が崩れたから注文を付けたくなっていることも自覚している。あと1イニングでいい。その1イニングを若いピッチャーに任せてもらえないだろうか。

 

回りにデキる先輩や同僚がいると助かるのは間違いない。私自身数々の恩恵に預かってきた。一方でその代償にも気付いている。心のどこかで彼らに頼りたくなる癖が付いてしまっているのだ。もちろんそれに気付いてからは意識して何事も「完投」するようにしているのだが。

 

時代が違うし、高橋礼やミランダがすぐに完投完封をバンバンできるようになるとも思っていない。だがせめて7回は最低ライン、できれば8回もい行くくらいにはなってもらいたい。自分で何とかする。千賀滉大とほかのピッチャーとの一番の違いはそこだと思う。

 

泉、加治屋、甲斐野とそろっていつものパフォーマンスができなければ、そりゃ負ける。うまく行くかどうかは時の運だとも承知しているが、早め早めの継投は必ずしも先発投手のためになる訳ではない、と思って書いてみた。リリーフ陣を休ませる意味でも、先発陣を育てる意味でも、もう少し「任せる」起用法が見てみたい。


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