黒柴スポーツ新聞

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求められる人でいたい~高橋由伸、松井秀喜とニューヨークで対談

「求められる人でいたい」

高橋由伸が巨人の先輩の松井秀喜とニューヨークで対談した。その中のこのフレーズがいいなと思った。巨人の監督についてのくだりでの発言。松井秀喜はやるのか、高橋由伸の再登板はあるのか、ということは巨人ファンならずとも関心が高そうなものだが、高橋由伸はもう一度やりたいと直接的な表現はせず、求められる人でいたい、という内面を語った。これがいいなと思ったのだった。

 

「大変だと思ってたでしょ」

「大変そうだなと思ってた」

高橋由伸「監督」をどう見ていたか聞かれた松井秀喜が、大変そうだなと思っていたとそのまま打ち返したので二人は思わず笑っていたのだが、これはリアルな思いのはずだ。松井秀喜高橋由伸が本人の意思に関わらず引退即監督就任を余儀なくされ、かつその時期が巨人の主力が衰えてまだ次世代が育ちきらない中だったことに同情していた。同情という表現は違うのかもしれないが、大変さは理解していた。だからこそ大変そうだなと思って見ていたのだ。

 

 

 

松井秀喜監督待望論も、高橋由伸監督再登板待望論もあるだろう。高橋由伸は3年間で2位、4位、3位とものすごく悪いわけではない。しかし巨人にあって何年も優勝から遠ざかることは許されないということだろう。自分の意思で引退できなかった高橋由伸が自分のタイミングで監督を引けたのは、まだまだ由伸監督が見たかったので残念ながらも何かホッとした。長嶋茂雄王貞治原辰徳、そして高橋由伸。巨人の歴代のスターたちも読売グループの中にあっては見えない力に支配されてしまうのだなと毎回思う。

 

それでも長嶋茂雄は日本一に返り咲いたし、王貞治はホークスで苦労しながらも結果を出した。原辰徳は監督辞任時に「読売グループ内の人事異動」とまで言われる屈辱を味わいながらも再起を果たした。だからヨシノブもきっと……とファンは思っている。だから高橋由伸が直接的ではないにしろ「求められる人でいたい」と言ったことを喜ぶ人は多いと思う。

 

原点―勝ち続ける組織作り

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巨人の監督はいまだに読売グループ内の人事異動なのかもしれないが、だとしてもあなたに託したい、と思われるかが大事だ。一般人とて、仕事を頼まれるなら「じゃあ、おまえ」と言われるか「ぜひ、あなたに」と言われるかで全く受け止め方が違ってくる。

 

もちろん回りに対して要求する前に、そう思ってもらわねばならない。そのために必要なのは誠実さではなかろうか。実力もさることながら、この人に任せたらきちんと最後までやってくれると思われたい。。その期待には応えたいし、応えなければならないし、応えていくことで期待が信頼に変わっていく。一つ一つの仕事を誠実にやっていくことが、求められる人になる近道だと思う。

 

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となると高橋由伸にとっては充電期間をどのように過ごすかが非常に大事になってくる。ぜひいろんな現場に足を運んでほしいし、いろんな選手や指導者と交わってほしい。巨人一筋だったから、他チームのやり方を知るのも勉強になるはずだし、外から巨人がどう見られているのか知ることも意味があると思う。1カ所に長くいることを否定はしないが、どうしても世界が狭くなりがちだ。異文化を知る過程では摩擦も生じるからエネルギーは予想以上に奪われるのだが、その摩擦熱で火を起こすくらいの要領のよさは持ちたいものだ。

 

 

 

高橋由伸は監督再登板を期待されているが、なったらなったで次は結果が確実に求められるから、道のりは決して緩やかではない。だが歴代のスターたちが屈辱を晴らしてきたように、高橋由伸にもぜひ臥薪嘗胆の精神で結果を残してもらいたい。いつ、どのタイミングかは分からないが高橋由伸が求められることは必ずある。その時を楽しみに待っておこう。


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