黒柴スポーツ新聞

ニュース編集者が野球を中心に、心に残るシーンやプレーヤーから生きるヒントを探ります。

任された仕事は評価のバロメーター~ソフトバンク新人の泉圭輔が9回初締め

どんな仕事を任されるかでその人の評価がはかれる。回りを見ていてそんな気がする。仕事ができる人は常に何らかのプロジェクトに噛んでいる。だから暇にはならない。困った時にはすぐに名前が挙がる。顔が浮かぶ。本当に素晴らしい。

 

その意味ではソフトバンクが9回を任せるのは守護神の森唯斗と相場が決まっているのだが、27日の日本ハム戦の最終回はルーキーの泉圭輔が登板した。

 

きょうから大型連休がスタートし、各球団は連日試合がある。投手のやりくりという面で、「甲斐野や森を休める意味がある」とNHK中継の解説、大野豊が言っていた。確かに甲斐野も森もしょっちゅう見る。本当に頭が下がる。

 

大野豊はこんなことも言っていた。「泉に任せられるということです」と。確かに初登板からキラリと光るものがあった。それはソフトバンクファンならずとも、長年プロ野球を見てきた人は感じたのではないだろうか。長身から投げ下ろし、威力のある球を投げ込む。見ていて気持ちがいい。

 

ピッチングフォームが武田翔太に似ていると言われている泉圭輔。似ているもなにも、武田のまねをしたのだとか。それは進学先の金沢星稜大には専門のコーチがいないからだった(ネタ元は西日本新聞記事)。金沢西高校出身の泉は経済的理由から石川県外の強豪大学には行けなかったという。それでも北陸リーグで23勝。青山学院大学とのオープン戦で好投して評価を固めたようだ。

 

泉圭輔を指名したソフトバンクの担当は山本省吾スカウト。星稜のエースとして甲子園準優勝した人だ。慶応大学を経て近鉄に入団。分配ドラフトオリックスに行き、トレードで横浜へ。さらにトレードでソフトバンクに来て、引退後にスカウトになった。山本省吾にとっても、地元石川出身の有望な選手を入団させられてうれしかったことだろう。さらに泉の評価は高まってきている。まさにスカウト冥利に尽きるだろう。

 

泉圭輔は学生時代、すき家でアルバイトしていたという。まだまだ見た目も優しい感じだから、アルバイトしていた姿が何となくイメージできる。すき家でアルバイトしていたお兄さんが今やプロ野球のマウンドに立っている。それだけでも夢があるのだが、守護神の代わりに9回のマウンドに上がって三者凡退で締めくくった。

 

今回はセーブが付く場面でもなく、1点差などの厳しい最終回ではなかったので完全な代役とは違うのだが、それでも締めくくりに泉圭輔が指名されたのは大野豊が言ったように泉圭輔に任せられる実力や信頼があるということだ。森の年俸は2億8000万円。泉圭輔は800万円。年俸35倍の先輩がやっているのと同様の仕事ができてしまうのは、素晴らしい。もちろんプロ野球選手だからマウンドに立ったら1年目もベテランも関係ないのだが。

 

多少荷が重いかな、という任務を課せられることは誰しも起こること。不意を突かれる場合もあるが、できればそれは実力や信頼があるからこそ頼まれた仕事だと受け止めたい。同じことに取り組むにしても、人間、意気に感じてやりたいものだ。モチベーションが高いほど成果も上がるはず。結果が出たらさらに難易度の高い仕事が回ってくるが、それに応えたら自分自身がレベルアップできる。泉はまさにその途上にある。時には打たれることもあろうが、さまざまな局面を経験して一回りもふた回りも大きくなってもらいたい。


福岡ソフトバンクホークスランキング