打たれるたびに、強くなれる~ソフトバンク奥村政稔に伝えたいマリアノ・リベラの至言とは
ソフトバンク期待の新人、奥村政稔がロッテの角中に痛恨の一発を浴びた。この3ランが決め手となり、4月5日の試合は7-3でロッテが勝利。ソフトバンクは開幕6戦目にして初黒星を喫した。
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奥村政稔に頑張ってほしい理由。それはことし27歳になるという年齢である。もちろん年齢にとらわれず選手生活を過ごしてもらいたいが、このケツカッチン感がたまらない。ピッチャーの肩は消耗品であり、40歳まで第一線でできる人は少ない。そう考えると奥村政稔はルーキーながら人よりも早くカウントダウンが始まる。いや、すでに始まっていると言っていい。だから頑張ってほしいのだ。
西武との開幕戦、初登板の奥村は早くもホールドを記録。4月5日時点でホールドは3になった。その矢先のロッテ戦でつまずいてしまった。四球と安打を許し、そして3ランを献上。奥村が思わず顔をしかめたのが見えた。
奥村はもう気持ちを切り替えられているだろうか。かくいう私は気持ちを切り替えるのがものすごく下手。奥村も引きずらなければいいのだが…。こういう時は失敗を、よいイメージで上書きできたらよいのだが、4月6日のロッテ戦は序盤からソフトバンクが劣勢に立たされ、奥村に出番は回ってこなかった。
そういえば年明けから読んだ元ヤンキースのマリアノ・リベラの自伝「クローザー」には抑えの心構えについて何と書いてあったかな、と思い読み返してみた。そのくだりはリベラが他チームのクローザーの相談に答える場面で出てきた。
「クローザーとしてマウンドに上がるとき、私が何を考えているかわかるか? 三人を打ちとることだ。それも、できるだけさっさと片づけて、マウンドを下りることしか考えない」
とてもシンプルである。
そしてこんな話も。
「打たれない投手なんていやしない。メジャーの打者を相手にしてるんだ。そりゃ、打たれるよ。だが、大事なのは、さっさと忘れることだ。昨日のことを、今日のマウンドに持ちこんじゃいけない。そんなことをしていたら、いい球は投げられないからな」
的を射た話である。確かに引きずっていたら能力を100%発揮することはできない。
そして次のくだりがもっとも心に残った。
「打たれるたびに、強くなれるんだ。打たれるたびに。もちろん、打たれたときは悔しいけれど、これでまた強くなれると思えば気分がいい」
前向きに考えればいい、後ろ向きなことは考えるな。そうリベラは説いていた。
最初に説明したように、奥村はほかの選手よりも早く結果を出さねばならない。そのあたりがあのゆがんだ表情に出たのだろうか。単純に悔しかったのだろうか。しかし奥村がやるべきことはリベラが言う通り、これを糧にまたよい投球をすることだ。
中継ぎも抑えも、無得点に封じて当たり前と思われる。だから打たれるとすごく目立つ。その傾向は近年特に強まっているように思う。だが見方を変えればそれだけ中継ぎや抑えに注目が集まっているということだ。ソフトバンクでは岩嵜翔、加治屋蓮、森唯斗らが次々に結果を出し、高い評価を得た。奥村にもぜひ続いてほしい。
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ホークスのオールドルーキーと言えば初登板が奥村と同じく26歳で、のちにエースになる攝津正が有名だが、私は28歳で初登板を果たした三瀬幸司を思い出した。三瀬はルーキーシーズンの2004年、4勝28セーブを記録し横山道哉と並んで最優秀救援投手に輝いた。三瀬の奮闘ぶりは、夢を追いかけるには遅すぎることはないと思わせてくれる。
三瀬は12シーズンをプロで過ごした。奥村は何シーズンいけるだろうか。開幕カードから起用されるのを見ると、すでに高い評価を得ているのだろう。工藤公康監督は投手出身であるし、奥村のことを上手に導いてほしいと思う。私はリベラが言うように「打たれるたびに強くなれる」とは思ってこなかった。ひょっとしたらこのあたりが伸び悩みの原因のような気がする。打たれて開き直るばかりでもいけないが、前向きに、打たれるたびに強くなれると思うようにしよう。奥村にもぜひ次の登板では思いっきり腕を振ってもらいたい。